彼女は武器を構え、己と相容れぬ全て――今や屍も同然の「参加者」たちへと向けた
この宴の主は、明らかにこの展開を予期していなかった。不協和の響きによって宴が断ち切られることを、望んではいなかったのだ
この街の保安官として、彼らを守るつもりはないのか……!?
毎日霧の中を巡回していたのは、怪物から彼らを守るためだったはず
そして彼らもまた全ての希望をあなたに託し、日々祈り続けてきた。妖鳥の降臨を望み、庇護を願っている
今や、その妖鳥の力を得たあなたが、彼らに刃を向けるというのか……!?
「ロコ」の声に応じるように、生ける屍のような「参加者」たちが一斉に振り向いた
無数の灰白の瞳がヴェロニカをじっと見据える
パン屋の店主、花屋の少女、酒場のバーテンダー……
誰もが彼女にとって馴染み深い顔だった。霧の中でずっと守りたかった人々だ
だが今、かつて見慣れたはずの顔は、生気のない石膏の仮面と化している
妖鳥……ついに……降臨した……
我らの……守護者が……ようやく……
腐りかけた喉から絞り出される声は掠れ、今にも途切れそうだった
それはもはや生者の祈りではない。地獄から這い出た亡霊の囁きだ
私たちの……こと……
もう……守って……くれないのか……
ヴェロニカは目を閉じ、亡霊たちの嘆願に答えなかった
……
お前たちは、もうここにはいない
私が守りたかったのは、この街で暮らす者だ。こんな……生ける屍ではない
保安官……妖鳥……
はは……ハハハ……
理性を失った住民たちが狂ったように笑い始めた。まるで壊れたゼンマイ仕掛けの機械のように
狂気の笑い声とともに、ヴェロニカを嘲るかのように、先頭の者の首が激しく揺れ動いた
脆い頭部がぐらぐらと揺れ、突然横にかくんと傾く。腐った果実が枝から落ちるように、血の気のない肉が露わになった
石膏のように蒼白く朽ちた皮と肉の中から、大量のネズミが這い出てくる
ここにはもはや、生きた人間はいない。薄汚れたネズミに操られる、朽ちゆく肉体が残っているだけだった
お前たちの体が、こんな穢らわしいものに支配されたままでいいはずがない
私が楽にしてやる
……安らかに眠れ
彼女はランスを振るい、生ける屍と化した者たちを薙ぎ払った
命なき体は砕け散り、抜け殻から無数のネズミが溢れ出す
同時に、濃密な影が四方へと滲み出した
宿る器を失った無数の影が悍ましく渦巻き、新たな宿主を求めて「ロコ」のもとへと集束していく
この瞬間、ヴェロニカの目にためらいなど微塵もなかった
……かつての「友」に手をかけるつもりですか?
穢らわしい「ネズミ」の分際で、私に話しかけるな!
「ロコ」は手の中の影を操り、ヴェロニカを攻撃しようとした。しかし、その動きは突如鈍り、見えざる力に阻まれたかのように止まった
彼の手から影が消え去り、力を振るっていた傲慢な姿は、ただの「凡人」へと戻る
彼は狼狽し、見えぬ何かに縋るように、怯えた目で周囲を見回した
いやだ……やめてくれ、力を失いたくない……
お仕えします、だからどうか……
あの方のために、もっと多くの実験体を見つけてまいりますから……
だが、その懇願に応える者はいなかった
さあ、次はお前の番だ!
ランスの鋭光は一切のためらいなく、操られ、堕ちたその肉体を断ち裂いた
もはや人の形を留めぬ干からびた殻から、更に多くの影が溢れ出す。狭き空間を満たしながら、絶望と怨嗟を孕んで渦巻いていく
やがて行き場を失った影は新たな標的を見つけ出し、一斉に人間に向かって襲いかかった
その衝撃で地面が崩れ、人間の体は奈落へと落ちていく
必死に何かを掴み、落下を食い止めようとする。だが更なる影が押し寄せ、人間を深淵へ引きずり込もうとする
ひとつひとつの影の中から、狂乱の叫びが聞こえてくる
住民たちの声は弱まり、やがてひとつの絶対的な力を持つ声が、全てを支配した
抗う意志が、実験の変数であってはならない
消えるがいい――不要な「変数」よ
邪悪な声が理性を呑み込み、影が視界を覆い尽くす。人間の視界はゆっくりと闇へ沈んでいった
力が尽きかけたその時、人間は聞き覚えのある声を聞いた
[player name]!
力を失った体が、温かい両手に支えられるのを感じた
周囲はなお闇に包まれているが、耳には鋭く風を切る音が響く
心配いらない。もう大丈夫だ
人間は、すぐ間近にある見慣れた顔をはっきりと捉えた
その背には大きな翼が広がり、人間の体を抱えながら、瓦礫と化した地の上空を飛んでいた
目が覚めたか、よかった……
妖鳥は懐の中の人間を強く抱きしめた。影から成る双翼を大きく広げると、激しい気流を起こしながら、全てを呑み込む闇から離脱した
無数の罪と悲鳴は、底知れぬ闇へと葬られていく
煙が晴れた。それはもはや埋葬の墓標ではなく、安らげぬ魂に捧げる鎮魂歌だった
ヴェロニカは、初めて見る視点で街を見下ろしていた
かつて幾度となく歩いた街並みが、今は迷宮のように眼下に広がっている
街路も路地も全て知り尽くしている。しかし今、ここにはもう誰もおらず、ただ白い霧が漂っているだけだった
ヴェロニカは再び翼をはためかせ、空を駆ける
人間は、風に紛れて消えゆく彼女の微かな嘆息を聞いた
彼女の強さと冷徹さの奥に、幾重もの堅い鎧の下に包まれた、彼女の本当の心を人間はようやく感じ取った
お前は言ったな、宿命に負けるなと
私は今、「宿命」について……少し違う考えを持っている
夢の中で聞いていたあの声は、私を弱らせ、堕とし……全てを捨てさせ、邪悪な妖鳥に変えようとした
だが、もう逃げたりしない
悪でも、宿命でも――私は「闇」として、それを引き受けよう
そして、お前は私が従う「光」だ
どういうことだ?
ヴェロニカは疑問の表情を浮かべながら、腕の中の人間を見た
……
ヴェロニカはただ黙っていた。だがその腕に込められた力が、何よりも雄弁に答えていた
長い夜の最後の闇が去り、雲の切れ間から最初の曙光が射し込む
朝の光はふたりを優しく包み、ほのかな温もりとともに、霧の下の景色を照らし出した
やがて彼女は人間を抱いたまま、静かにこの見慣れた街へと降り立った
霧の中を幾度となく巡回してきた街に、別れの時が訪れていた。全ては終わり、守るべき人はもういない
ヴェロニカと人間は並び立ち、静まり返った墓標なき墓地を見つめた。ここに眠る者たちは、墓すら持たない
花も葬儀もない。あるのはただ、沈黙の別れだけ
アレクセイ、そしてこの街の者は……あんな形で逝くべきではなかった
……守りきれなかった
かつて保安官だった私も、今「血飢の妖鳥」となった私も……
私はずっと、「真相」を探し求めていた
霧の中でずっと探していた。連続殺人事件の犯人は誰なのか、アレクセイの命を奪ったのは何なのか、ずっと知りたかった
霧の中に本当に「血飢の妖鳥」が存在するのか、夢で繰り返し見たあの光景が、本当に現実になるのか……
だが、この「真相」がこれほど皮肉なものだったとは……
「犯人」など、最初からいなかった
全ては「宿命」を口実にした堕落への罠……私を「血飢の妖鳥」にするためのものだった
彼女はゆっくりと振り返り、自らの背に広がる双翼を見つめた
[player name]……今の私を、どう思う?
……
彼女は答えず、ただ静かに墓地を見つめていた。白い霧がふたりの間を流れ、その表情はほとんど見えない
揺れる感情を押し隠すように、長い沈黙の後、彼女は人間へと向き直り、少し場違いな問いを投げかけた
教えてくれないか、[player name]。霧の中には何がある?
これら全ての忌まわしい罠を仕掛け、私を狂わせようとした「神」か?それとも、私には理解できない何かか?
ずいぶん率直な答えだな
お返しに、私も率直に言おう
お前がどこへ行こうと、どんな邪悪と戦おうと……私は、お前とともに立つ
彼女は晴れやかに笑い、顔を上げて微かな朝の光を浴びた
ああ、もう依頼人ではない
これからは、霧の真相をともに追う「仲間」だ
ヴェロニカは一切の迷いなく手を差し出し、その答えを待った
言葉などいらない。彼女の瞳に宿る決意が全てを語っていた
人間は手を伸ばし、新たな「仲間」に応えた
