終点にはまだ至らない
霧は依然として街を漂っている。かつての賑わいはもうなく、ただ闇の中を這い回るネズミのざわめきだけが残っていた
探偵、助手、そしてかつての依頼人。3人は新たな立場で並び立ち、果てしない霧に向き合った
互いの目的と心を通わせた「仲間」として
霧の中で「妖鳥」は最後に1度だけ振り返り、死の静寂に包まれたこの街に無言で別れを告げた
たとえ背後に見紛うことなき翼を広げていようと、彼女の瞳に宿った決意は少しも揺らぐことはなかった
まさか、この「依頼」がこんな形で終わっちゃうなんて
……行くぞ
その時、エリーナが不意に顔を歪め、頭を押さえた
どうした?大丈夫か?
平気。ちょっと頭が痛いだけです……
多分、忘れていたことを思い出しかけてるんだと思います
少女は仲間に心配をかけまいと、すぐに苦しげな表情を引っ込め、いつもの明るい顔に戻った
彼女はいつもこうだ。常に前向きで誠実で、頼れる「助手」の姿を崩さない
大丈夫、本当に心配いりませんって!
な~んでもできちゃう「助手」は、こんなことで弱ったりしませんから!
それじゃあ、霧に向かってしゅっぱーつ!
エリーナは軽やかな足取りで、真っ先に霧の中へと踏み出した
3人の背後で、霧はますます濃くなっていく
黒髪に金の瞳を持つ男が霧の中から現れ、遠ざかる3人の背中を静かに見つめていた
やがて彼は、翼を広げた「血飢の妖鳥」に視線を定める。成功した「実験体」を鑑賞するかのように、その姿が霧の中に完全に消えるまで、微笑を浮かべて見つめていた
全ての始まりが、男の脳裏に蘇る
霧の中で、臆病で強欲な書記官ロコは懇願した。「邪神の眷属」から、人ならざる力を授かりたいと
卑屈で、怯え、それでいて貪欲――
パン屑を渇望する、滑稽なネズミそのものだった
お願いです……どうか……
この霧の中で死にたくありません……でも、あの規律に縛られた保安官の下で働くのも嫌なんです……
願いを叶えてくださるなら……何でもします
神は、汝の訴えをお聞きになった……ふさわしき力を授けてくださるだろう
神を満足させし者のみが神殿へと至り、真の従属となれる
あ……ありがとうございます!
ただし、その代償として……この街にて、ある計画を遂行してもらおう
神の盤上には「血飢の妖鳥」の降臨が必要なのだ
それ以来、巨大な盤上で数多の駒が続々と動き出した
無数の変数が増減し、変化する。全ては「神」の実験結果を導くために
白い霧の中で、無数の罪なき命が使い捨ての駒のように消えていく
それは自らの「忠誠」を差し出し、取引を試みたロコも例外ではなかった
だが、神は決して取引などしない
微かな物音がして、男はようやく思索の世界から戻り、手中にある迷宮の檻へと視線を落とした
「スキナー箱」と呼ばれる装置の中で、実験体のネズミが絶えず試行を繰り返している
ネズミは「迷宮」のゴールから漂うチーズの香りに誘われ、踏み板を爪で押し込みながら道を切り開こうとしていた
飢えに突き動かされ、試行は加速し、ゴールのチーズへと近付いていく
そこへ至るには、汝自身の力が必要だ
続けるがいい
やがてネズミは香ばしいチーズにたどり着き、貪るように食らいついた
男は顔を上げ、あの双翼を広げて人間と肩を並べる「血飢の妖鳥」を見据えた。その瞳には確信が宿っていた――全てが計画通りであるかのように
ついに現れたか、「血飢の妖鳥」よ
この街の者は、汝を導くという使命を果たし終えたようだ
歓迎しよう、[player name]。そして、更なる「異種」の仲間よ
見せてみよ。この世界に潜む、より多くの変数を
汝が無事に霧を抜け、あの方のいる「終着点」へたどり着けることを願っている
