Story Reader / 本編シナリオ / 41 遺志継ぐ帰航 / Story

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41-15 開校演習

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新学期の最初の1週間で、ファウンス1期生たちは、早くも軍事士官学校生活の厳しさを身をもって思い知らされた

朝6時の起床ラッパ、5kmの朝ラン、規格化された内務評価、秒単位の生活リズム。初日の夜には泣き出す者が、3日目には教官に反抗して雨の中で1日中立たされる者が出た

7日目になる頃、420人の訓練生の中で互いに顔馴染みになる者もいれば、相変わらずひとりきりで行動する者もいた

その日の早朝、教官は訓練場で初のホログラム演習のチーム分けを発表した

3人1組、くじ引きで決める。隊長はチーム内の総合評価が最も高い者が務める。ルールは単純、フラッグ戦だ。先に敵の旗を奪うか、敵を全滅させれば勝利だ

ホログラム弾が命中すれば戦死と判定され、データが記録され強制退場となる。各自に標準訓練用ライフル1丁、弾倉3つ、閃光弾と手榴弾をそれぞれ1個ずつ支給する

戦死判定された訓練生への故意の攻撃は禁止、支給外装備の使用は禁止、演習エリア外への離脱も禁止だ。体術での格闘は許可するが、実際の負傷に繋がる行為は禁止する

違反が発覚した場合は厳罰だ。理解したか?

イエッサー!

赤チーム――アデレーネ、ニヤ、ルシア。隊長はルシア

青チーム――ジョアン、オフェリア、[player name]。隊長は[player name]

ルシアは聞き慣れない名前を耳にし、その声のする方へ目を向けた

見覚えのある顔だった。あの日、観覧台で彼女にイヤホンを手渡してくれた人物だ

[player name]

その人の視線も人混みを越え、ちょうどルシアと目が合い、軽く頷いた

本当に奇遇、そう彼女は思った

その人その人はジョアンに話しかけ、ジョアンはせわしなくコクコク頷いている。オフェリアは腰に手を当て、フィールドにいるアデレーネを睨み据えていた

フン

……

あの……隊長?何か指示はある?

ふたりとも、射撃の成績は?

全科目満点よ

……及第点

了解。これからは指示に従って、私から離れないで

敵の編成も似たようなものだわ。勝敗の鍵は、勇気と実行力よ

彼女は弾倉の点検を終えると、自信に満ちた笑みを浮かべ、ふたりのチームメイトを見た

だから、私は必ず勝つ

模擬訓練場は、起動すると空間全体に仮想の都市廃墟が生成される。崩れたビル、倒れた街灯、積み上げられたコンクリートの遮蔽物。視界は複雑で路地が入り組んでいる

赤と青の軍旗が、それぞれフィールドの両端に立てられていた

アデレーネは2階の窓へ、正面の通り2本をカバーして。ニヤは私と左側の路地を行く

了解

ルシアの判断は速かった。彼女は真っ先に敵の進行ルートを狭めることを選び、無理に前進しようとしなかった

一方、その向こう側の[player name]の配置も、ほぼルシアの配置と鏡映しだった

わ、わかった……もし見つかったらどうすればいい?

うぅ……何だか体力仕事を押しつけられたような……できれば頭脳で解決したいんだけど……

何よ?

……だから何?

で、何が言いたいわけ?

旗を奪えってこと?

オフェリアは眉をぴくりと動かし、愉快そうな笑みを浮かべた

いいわね、あなた、なかなか賢いじゃない

最初の数分は、赤と青の両チームは互いに様子を探り合い、路地にはまばらな銃声だけが響いていた

ルシアは素早く移動し、どの遮蔽物の後ろにも5秒以上は留まらなかった。路地を縫うように進み、短い射撃で相手の前進ルートを押さえ込んでいた

ニヤはその後ろをついていき、必死にペースを保とうとするが、すでに呼吸が乱れ始めていた

隊長、右に何か――

伏せて

ルシアはニヤの肩を押さえつけた。弾丸が彼女の頭上を掠め、背後の壁のホログラムのレンガを砕く

誘いよ

さ、誘い?

相手側の遮蔽物が少なすぎる。わざとそうすることで、私たちに食いつかせようとしてる……アデレーネ、東側に動きは?

今のところなし。あなたたちの正面、メインストリートの奥の遮蔽物にひとり隠れてる。継続的な攻撃はしていないから、監視役の可能性が高いわ

無視していい。左右と後方に注意を。向こうの隊長は相当デキる、正面だけ見ているはずがないわ

わかった

路地の反対側で、ジョアンは遮蔽物の陰に身を縮めていた。銃を握る手の平は汗でびっしょりだ

先ほどの1発は[player name]が彼女に撃たせたものだった――「適当にその方向へ1発撃てばいい。当たるかどうかはどうでもいいから」

彼女は命中させられなかったが、確かに相手は足を止めた

敵が追ってくるんじゃない?

その一方で、ルシアはニヤを連れて側面から回り込み、ジョアンを挟み撃ちしようとしていた。足音は極めて軽く、ほとんど廃墟の影に溶け込んでいる

だが角を曲がった瞬間、彼女の銃口と別の銃口が、ほぼ同時に互いに突き合わされた

――!

[player name]だ

ふたりの間の距離は10mにも満たず、その間には横転したホログラム車両が1台あるだけだ。しかし、どちらも先に引き金を引こうとはしない

ルシアは僅かに目を細めた。この距離では、相手の反応速度は自分とほぼ同等。先に撃った方が勝つとは限らない。相手にも回避するだけの時間がある

[player name]も動かない。ふたりは壊れた車を挟んで、銃を構えたまま数秒間睨み合った

突然、[player name]が予想外の行動に出た。大きく1歩後退し、そのまま体をひねって側の路地へと転がり込んだ

――!

彼女はすぐに追いかけたが、路地の先はもぬけの殻だった

その瞬間、理解した。[player name]は最初からここで彼女を足止めするつもりはなかった。相手の狙いは最初から――

ニヤ、現在位置は?

さ、さっきの角のところ――

あっ!!

バンッ――

ルシアが振り返ると、ニヤのいた方向に淡い青い光が広がっていた。彼女の体はデータの粒子に包まれている。システムによる撃破判定の信号だ

遠くの高所で、ひとりの人影が銃口を下ろした

ひとり仕留めた

彼女は足を止めなかった。そのまま向きを変え、東側の廃墟に沿って北へと進んだ――そこにはルシアチームの旗がある

アデレーネ、オフェリアがそっちの後方へ向かってる。旗が危ない

確認したわ、すぐに移動する

彼女を止めて。旗に触れさせないで

……わかった

アデレーネは2階の窓から飛び降りた。視界の端に、旗へと素早く接近するオフェリアの姿が見える。それは巧みなルートで、彼女がこれまでに張っていた射界を全て回避している

駆けるアデレーネの足が更に速まった

同時に、ルシアは単身で敵陣へ突っ込んでいった。青チームの旗を奪いさえすれば、全て終わる

だが、あの見覚えのある影が依然として進路を塞いでいた

銃声が路地に響き渡る。ふたりは遮蔽物越しに交互に射撃し、位置を変えた。まるで互いを探り合うふた振りの刃が、唸りを上げて鞘から抜かれ、鋭く打ち合うかのように

ルシアが突破を試みる度に、[player name]はルシアが必ず通る道を狙って現れ、[player name]が制圧を試みる度に、ルシアは瞬時に新たな射角で押し返す

ルシアは微かな喜びを感じていた。相手が確かに、自分のリズムに追いついてきているからだ

一方で、オフェリアはすでに赤チームの軍旗付近へ到達していた

旗は開けた場所の中央に立てられ、周囲には遮蔽物がなく、視界は完全に開けている。これはルシアがあえて選んだ配置で、近付く者は誰であれ射界に晒されることになる

だが、ルシアはいない。高所にアデレーネの姿もない

嘘でしょ?こんなに簡単なの?

足早に旗へ向かい、指先が旗竿に触れようとした瞬間――

足音がした

ハァッ!

アデレーネが側面の廃墟の角から飛び出してきた。その速さは、オフェリアの目で追えないほどだった

オフェリアは反射的に銃を構え、アデレーネも同時に銃口を上げる。ふたりはほぼ同時に引き金を引いた

2発の弾丸が空中で交錯する

オフェリアの弾はアデレーネの肩を掠め、命中しなかった。アデレーネの弾はオフェリアの銃床に当たり、彼女の手からライフルを弾き飛ばした

――!

彼女は銃を失った。だが旗は、あと1歩の距離にある

彼女は振り返って手を伸ばした――

させないわ――!

アデレーネは銃を投げ捨て、砲弾のような勢いでオフェリアに体当たりした。ふたりは同時に地面にもつれ込み、半回転ほど転がった。オフェリアの指先は旗竿まであと3cmだ

くっ!!離して!離しなさいよ!

アデレーネは何も言わない。彼女は体でオフェリアを押さえつけ、右手で腰のホログラム手榴弾のピンを引き抜いた

えっ……あなた、正気!?

「演習規定」第3条――手榴弾の爆発半径内にいる全てのユニットは戦死扱いとする

こんな時まで規定の話してんじゃないわよ!!

青白い光がふたりを同時に呑み込んだ。地面に倒れ込んで掴み合った姿勢のまま、データの流れが唸りを上げて彼女たちの体を通り抜けていく

あ、あなたねぇ!!

いつまで上に乗ってんの!?どきなさいってば!

次は!次こそは絶対、真っ先にあなたを倒してやるから!

アデレーネはスカートについた埃を軽く払い、無表情のまま顔を上げた。その様子はまるで冷たい機械のようだった

……次が楽しみよ

フィールドに残っている「生存者」は、ルシア、[player name]、ジョアンの3人だけとなった

ルシアは状況をはっきりと見極めていた。[player name]が自分の注意を完全に引きつけている。残るはジョアンだけ

彼女はフェイントで1発撃ち、遮蔽物の隙間を利用して[player name]との交戦から離脱し、青チームの旗の方向へ素早く回り込んだ

ジョアンは旗の前方の遮蔽物の陰で身を縮めていた。足音が聞こえ、だんだん近付いてくる

[player name]は……もし相手が攻めてきたら、逃げろって……

でも、旗はすぐそこにある……

彼女は唇を噛み、銃を握りしめた

……

角を曲がった瞬間、ルシアが現れた。ジョアンはほぼ同時に発砲したが、弾は彼女の足下から僅か50cm先の地面に当たっただけだった

ルシアは速度を落とさない。体をひねって2発目を躱し、片手でライフルを持ち上げ、銃口をジョアンへと向ける

ジョアンはギュッと目を閉じた

…………

あーあ、やっぱりこういうの苦手なのよね……

フィールドに残るのはふたりだけとなった

青チームの軍旗はルシアの背後、10数mのところにあったが、彼女はそれを取りに行こうとはしなかった

なぜなら、[player name]が彼女の目の前に立っているからだ

……

両者が再び銃を構えて対峙した。今回は間に壊れた車もなければ、身を躱すための路地もない

ふたりは同時に引き金を引いた――

ふたりは同時に身を躱し、弾丸は互いの服の端を掠めた。続けざまに2発、3発……リズムを刻むような交互射撃が、開けた場所に火花を連ねていく

ルシアが間合いを詰め、コンクリートブロックを飛び越えた瞬間、[player name]も反対側から飛び出し、ふたりはほとんどぶつかりそうになった

至近距離で、同時に引き金を引く――

カチッ――

両者どちらも最後の1発を撃ち尽くしていた

――!

ルシアは武器を地面に投げ捨て、左脚で高い蹴りを繰り出した

[player name]は頭を傾けてそれを躱し、そのまま肘打ちを返す。ルシアはそれを受け流し、手を返して相手の前腕を掴み、近距離での投げを狙う――

[player name]は勢いに任せて重心を落とすと、逆に手首を返して力をいなし、組み合っていたふたりはそれぞれ飛び退いた

ルシアの口元が僅かに動いた。それが笑みなのか、歯を食いしばっているのかはわからない

彼女はもう1度飛びかかった

ルシアの攻撃は獰猛で鋭く、一切迷いのない獣のようだ。[player name]の防御と反撃は精確で無駄がなく、どの攻撃も、力が伝わる直前でタイミングよくいなしている

やるわね!

ルシアが前蹴りを放つと、[player name]に足首を掴まれた。彼女はその勢いのまま片足で飛び上がり、相手の頭部めがけて足を振り抜いた――

[player name]は手を離して仰け反り、寸前で回避する。だが、ルシアは着地の反動を活かしてそのまま回転しながら足を払い、相手を地面に叩き倒した

しかし[player name]は起き上がらず、そのまま横に転がり、伸びてきたルシアの手首を捻り上げ、突っ込んできた勢いを利用して引っ張り倒した

ルシアの重心は一瞬で崩れ、彼女は背中から地面に叩きつけられた

くっ――!

彼女は目の前にあるその顔を見上げた。汗で濡れた前髪、僅かに荒い息、そして普段よりもずっと鋭く輝く瞳

ルシアはほんの一瞬固まったが、口元に薄く笑みを浮かべた

甘いわね

彼女は腹筋に力を込め、魚のように体を捻った

捕まれた手で逆に[player name]の手首を掴み返し、脚を絡めてグルリと回転した。瞬時にふたりの体が入れ替わる

上に乗ったルシアは、[player name]の両肩を押さえつけた。荒く息を切らしながら相手相手の顔を見下ろした。乱れた髪が両頬に垂れている

どう?

その時、いつの間にかルシアはどこからか銃を引っ張り出していた。奇しくも[player name]も、地面の廃材の中から鉄の棒を引き抜いていた

ハッ――!

金属がぶつかる音が廃墟に鋭く響き渡る――ルシアは銃床で受け、薙ぎ払う。[player name]は鉄の棒で防ぎ、突きを繰り出す。即席の武器がぶつかり合い、火花を散らせた

銃床はへこみ、鉄棒は曲がった。ふたりはほぼ同時に武器を投げ捨て、今度は素手で取っ組み合った

ルシアの右拳は[player name]に両手で阻まれ、彼女はすぐに左手で相手の肩を掴む。[player name]は身を屈め、逆手で彼女の腰の後ろを掴み、膠着状態となった

……まだ降参しないの?

ふたりとも、震えるほど力を込めていた。遠くの観戦エリアには、すでに退場した新入生たちが集まり、手すりから首を伸ばしてその様子を見ていた

……あのふたり、まだ戦ってるの?

すごい……ふたりとも、なんて言うか、すごく――

すごく……何よ

ジョアンはしばらく考え込み、ようやくある言葉を思いついた

すごく……お似合い?

……ハァ?

フィールド中央で、ルシアは後ろ蹴りを放ち、その勢いのまま[player name]とともに激しく地面に倒れ込んだ。ふたりは転がり、更にもう1回転してから、同時に止まった

ルシアが上になり、片手で相手の胸を押さえつけている。だが、相手の手も彼女の手首を掴んでいて、いつでも引きずり下ろせる状態だ

その時、安全プロトコルの警告表示はすでに赤色に変わっていた

重い足音がふたりの側で響く

やめ!

ふたりは同時に顔を向けた。3mほど離れた場所に腕を組んだ教官が立っており、その顔は鉄のように冷たい

彼の目はふたりふたりではなく、地面に向けられていた。散乱した銃身の部品、折れた銃床、曲がった金属片、そしてふたりの肘や顔に残る、生々しい擦り傷

ホログラム演習で支給された装備は何だ?

……

訓練用ライフル1丁、弾倉3つ、閃光弾1個、手榴弾1個

他にあったか?

ふたりは同時に黙り込んだ。まるで息遣いさえも意図的に押し殺しているようだった

じゃあ、この地面に転がっている、分解された銃身や銃床は何だ?

教官はフィールド端の監視端末の前に行き、リプレイ記録を呼び出した。その声はニュースでも読み上げているかのように平静だった

青チーム、オフェリア――演習中、通信チャンネルで3度にわたり無許可の挑発的発言!

退場して遠くの観戦エリアにいたオフェリアは、急に驚かされた猫のようにギクリと体を強張らせた

赤チーム、ニヤ――目標の身元を確認しないまま、非交戦区域の疑いがある方向へ無照準の射撃1回!

赤チーム、アデレーネ――手榴弾の起爆前に規定の3秒遅延警告不履行、かつ起爆距離の安全半径を逸脱!

観戦エリアにいるアデレーネは、背筋を伸ばしたまま、顔の筋肉をピクリと引きつらせた

青チーム、ジョアン――交戦中に指定された遮蔽物エリアを離れ、立ち入り制限のあるC号建造物群へ進入!

……それは、もっといい隠れ場所はないかと思って……

サッと教官の視線が向けられ、ジョアンの声は即座にしぼんだ

最後に、教官はフィールドの中央でまだ倒れているふたりへ目を向けた

赤チーム、ルシア。青チーム、[player name]――

支給装備を分解し、非認可武器へ改造。安全プロトコルの警告後も交戦を継続……

総員、集合せよ

教官は一瞬言い淀んだが、その口調は揺るがなかった

すでに退場し、観戦エリアにいた4人も含め――6人全員がフィールド中央に呼び集められた

腕立て伏せ500回だ。ひとりでもできなければ、全員最初からやり直し

ご……ご、500……?

今すぐ始めろ

1……

6人の手の平が一斉に訓練場の地面に張りついた

ジョアンは8回目に差しかかったあたりで、もう腕が震え始めていた。唇を噛みしめ、眼鏡は汗でずり滑り落ちている

オフェリアの姿勢は綺麗だが、額には細かい汗が滲んでいる。彼女は隣のアデレーネを睨んだ。アデレーネは無表情のまま、機械のような一定のリズムで上下動を繰り返している

ねえ、あなた……疲れないの?

身体訓練中に、会話で無駄な体力を使うべきじゃない

うわ……もう1発殴りたくなってきた

51

その瞬間、ジョアンの腕が完全に脱力し、ずれた眼鏡のまま地面に崩れ落ちた

脱落者が出た。全員、やり直し

はぁ!?冗談でしょ!!

ご……ごめんなさい!

3周目、全員が150回を超えた。しかし、183回目でオフェリアは片腕の力がガクンと抜け、地面に膝を打ちつけた

くっ!

止まったな。やり直し

オフェリアは拳で地面を殴りつけた。爪の間には砂がびっしり詰まっている

もう何周目なのかわからなくなっていた。地面には汗が点々と落ち、6人の呼吸が重なり合って、まるでふいごのように荒々しく響いていた

ジョアンの眼鏡はずり落ち、地面もはっきり見えない。彼女はただ感覚だけで、1回1回を必死に耐えていた。涙と汗が混ざって手の甲に落ちたが、どれが汗か涙かもわからない

オフェリアはもう口を開かない。残る力を全て姿勢の維持に注ぎ込み、力んでいるせいで表情は僅かに歪んでいた。汗が滴り、地面に小さく濃い点をいくつも描いた

アデレーネは依然として力強く動作をこなしていた。速度はだいぶ落ちたが、1回1回が完璧で、フォームは崩れない

450

ハァハァ……もう……ダメ……

歯を食いしばって――腕を張って、絶対に緩めないで

うぅ――!

全員全員が歯を食いしばってこらえていた。ここで倒れてしまえば、全員の努力が全て無に帰すとわかっていたからだ

490

頭上のライトに照らされ、6人の影が長く引き伸ばされる。訓練場の地面に落ちた影は、今にも崩れそうな6本の柱のようだった

499

500

その声と同時に、ニヤが最初に崩れ落ちた

ジョアンも崩れ落ちた。いつの間にか眼鏡は転がっていたが、彼女は拾いもせず、横に向けて地面に横たわり、打ち上げられた魚のように大きく息を吐いていた

同時に倒れるのが嫌だったのか、オフェリアは数秒ほど持ちこたえた。廃墟の壁にもたれて空を仰ぎ、胸を激しく上下させている。汗で濡れた髪が顔に張りつき、無残な様子だ

最後に動きを止めたのはアデレーネだった。腕立て伏せの姿勢からゆっくりと膝立ちになり、頭を垂れた。数秒後、彼女は掠れてほとんど聞き取れないほどの声で口を開いた

……報告します。全員、完遂しました

教官は答えず、視線はフィールド中央に向けられていた――6人のうち4人が倒れ込んでおり、残りの2人もやはり動かない

……

ルシアの腕は震えていた。流れる汗は筋になり、頬から顎、そして手の甲へと滴り落ちた

彼女は腕立ての姿勢から膝立ちとなり、片足を踏み出したままじっとしていたが、やがて、体を揺らしながらも、地面から自分を引き剥がした

周囲の驚く視線の中で、彼女は立ち上がった。両脚は熱で柔らかくなった鉄の棒のようになり、膝は小さく震えていた

彼女は荒い息をつきながら、手の甲で顔の汗を拭い、顔を上げた

そのすぐ隣で、[player name]もゆっくり立ち上がろうとしていた

ルシアとほとんど同じ動きで、膝をつき、片膝で支え、もう片方の足でしっかり踏み込み、ふらつきながら重心を持ち上げていく

ルシアは目の前のその人を見つめた。汗びっしょりの髪、切れた唇の端、震える脚。自分とほとんど変わらない、みっともない姿だ

[player name]

彼女はもう1度、その名前を口にした。声はほとんど聞き取れないほど小さかった

次は、私が勝つ

彼女はふいにそう言った。相手は一瞬反応が遅れたが、ニッコリと微笑んだ

ルシアは言葉を返さなかった。消えていくホログラムの光の中、彼女は隣に立つ同じ歳の同級生を改めて見つめ、口元に僅かな笑みを浮かべた

ふふ

長い間先頭を走っていた時に、突然自分の側に人影が現れたかのようだ――こんなに楽しいと思ったのは久しぶりな気がした