Story Reader / 本編シナリオ / 41 遺志継ぐ帰航 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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41-4 行き止まり

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ファウンス宇宙船

霧域

……この方向だ

バネッサは、浄化塔の防護が及ぶ安全区域の境界に立っていた。銃のグリップに手をかけ、目を細めてふたつの緑色の信号が現れるであろう位置を見据えていた

識別コードの信号を何度も照合しましたが、異常は一切ありません……バネッサ指揮官、あれは……

本当に……グレイレイヴン指揮官とルシアなのでしょうか

私は信じない

バネッサは無表情で銃のグリップをなぞった。込めた弾丸で、ふたつの「緑色の信号」を安全区域の外へ吹き飛ばせるかを測っているかのようだった

こんなロクでもない場所で「たまたま」旧友に再会し、昔話に花を咲かせる?そんなご都合主義な筋書きは、空中庭園史上最悪の評判だったネット小説でさえ採用してない

しかし、万が一、グレイレイヴンだったらどうしますか?本当にグレイレイヴンが現れたなら、私たちは……

救助を期待するというのか?違うな、万が一などない

バネッサは振り返りもせず、僅かに目を細めた。その瞳には立ちこめる灰色の霧が映り込んでいる

ふたりの身元の真偽は私が何とかして確認する。だが、私が「撃て」と命じた時にお前が1秒でもためらえば、その時はまずお前の頭を吹き飛ばす

……わ、わかりました

兵士は先ほどの話題を続ける勇気をなくし、口をつぐんだ

灰色の霧が立ち込める中、バネッサは冷静に安全区域の境界を見据え、すでに予想している「答え」がやってくるのを待っていた

地面を穿つような重い足音と振動がふたりの鼓膜に響く。バネッサは息遣いも聞こえないほど静かに銃口を音の発生源に向け、狙いを定めた

違う

バネッサは突然、眉根を強く寄せた

足音は……ひとりだけだ

彼女が考えを巡らせる間もなく、凄惨な咆哮が静寂を切り裂き、濃霧の奥から鋭い刃の音が炸裂した

刀を使う構造体――まさか、本当にルシア隊長――!?

ガアァ――!

生物の肢体が荒々しく切断される粘つくような音が響いた。真っぷたつにされ、黒焦げになった侵蝕体の残肢が弧を描いて飛び、宇宙船のデッキに激しく叩きつけられる

ルシアではないようだ……下がれ!

バネッサは鋭く一喝し、兵士に銃を構えろと合図した。彼女の体は僅かに前傾し、極限まで引き絞ったクロスボウのように、指先を引き金にかけていた――

濃霧が刀で一閃された。霧の背後に、ひとりの構造体の影がぼんやりと見えた

それほど大柄ではない体格、深淵のように静まり返った瞳、黒と赤が入り混じった機体が灰色の霧の中でひときわ目を引いた

何者だ!?

どこか見覚えのある構造体だと感じながらも、バネッサはしっかりと銃を構え、狙いを定めたままにしていた

……

答えろ。さもなくば、立ち去れ

この灰白色の霧に、偶然「巻き込まれた」構造体だろうか?しかし、なぜ彼女はこんな空間で、これほどの時間をひとりで生き延びることができたのだろう?

21日間――決して長い時間ではないが、この地獄に囚われた宇宙船にとっては、決して短いとはいえない

この空間で生き延びられるのは、怪物か、あるいは怪物以上に危険な何かだ。今のファウンスには、新たな不測の事態に耐える余力はない

……

相手がなおも黙っているのを見たバネッサの目つきが険しくなり、そのまま迷いなく発砲した。弾丸がαの耳元を掠めるように通りすぎる

……

αは目を細め、刀の柄にそっと手をかけた

これが最後の警告だ。2度目はない――

バ、バネッサ教官……

反対側からニヤが素早く駆け寄ったことで、両者の膠着は一時的に緩んだ

……来い

バネッサは顔を曇らせ、僅かに1歩前へ出ると、相手に気付かれないよう、ニヤを自分の背後に庇った

私の命令なしに、誰も安全区域を離れるなと言っただろう――なぜ来た!?

レイナ教官の指示で来たんです。あの、教官が……

防護服を着たまま走ってきたため、ニヤは激しく息を喘がせ、レイナの言葉を正確に伝えようと、別の方向を指差した

ホログラムマップのふたつの「緑色の信号」が、突然進路を変えたそうです。どうやら、あちら側から安全区域に入ろうとしているようだと……

……

バネッサは動じない様子で、構造体兵士にαへ銃口を向けたままにしろと合図し、ニヤが指差した方向を勢いよく振り返った――

灰色の霧の中から、ふたつの人影がひっそりと姿を現した

そこにいるのは誰だ――!

ふたつの声が、ほぼ同時に響いた

……出てこい!

あなたたちと同じ方法で来ただけよ

……いつまでコソコソしている!

濃霧の中からゆっくりと現れたふたりは、まさしくグレイレイヴン指揮官と隊長のルシアだった

……

バネッサは手にした銃を下ろそうとはせず、安全区域への道の前に立ちふさがっている

グレイレイヴン指揮官の[player name]だと……誰が証明できる?

私はグレイレイヴン小隊隊長ルシアです。機種番号BPL-01、機体型番誓焔。私が証明できます

それは機密情報でもなんでもない。空中庭園の者なら誰でも知っている

あとは……

……ハッ、名高いグレイレイヴン指揮官がファウンスの首席だなんてことは、誰だろうが知っている

その情報も、全て調べればわかるものだ。もっと確かな情報を出せないなら、ここから立ち去れ

バネッサは銃を構えたまま、冷ややかにこちらを見ている

それなら……

……もういい

バネッサは依然として気を緩めず、素早く身を翻すと、銃の照準をもう一方のαへしっかりと合わせた

ということで、残る厄介事はお前だけだ

お構いなく。私もあなたたちと一緒にいるつもりはないから

αは長居する気はないようで、背を向けて立ち去ろうとした

何だ、知り合いか?

とっさにαの身分を適当にでっち上げた。バネッサは半信半疑の様子だ。αは僅かに眉を吊り上げ、人々の肩越しにこちらをじっと見ている

ここから離れてほしくないようね

霧域の状況は複雑に錯綜している。地上ではαと敵対関係にあるが、ここでは皆、同じ敵と同じ目的を共有している

それに……

どうしてそれを……

傍らにいるルシアに目を走らせたαは黙り込み、こちらの言葉を遮ることをやめた

バネッサの方に向き直り、よりもっともらしい理由を付け加えてみた

……彼女の身分に問題はないことを、どう保証するつもりだ?

……

君がその名誉とやらを持っているか否かは、ひとまず置いておいてやる

もし彼女が下手な真似をすれば、君もまとめて始末する

バネッサは銃を収め、くるりと踵を返すと安全区域へと戻っていった

ここはもともと宇宙船の中枢にある小さな広場だ。小型浄化塔に隣接して十分な空間があるため、一時的な「安全区域」に転用されている

霧域から回収した物資が無秩序に積み上げられ、即席で築かれた金属製バリケードが不穏な影を落としていた

ファウンス宇宙船が霧域に囚われてから、すでに21日が経過していた

食料や医薬品、血清は急速に減り、補給はない。腐敗臭が漂う船内のあちこちで、座ったり立ったままの負傷者や学生、教官は、数人が入ってきた方へ無言で目を向けた

……89人、うち33人が負傷している

通信塔を守っている第5探索隊を除けば、生存者は全員ここだ

司令室の扉を閉めると、バネッサは肩の力を抜き、微かな疲労を滲ませた

悪い。どうも私たちは、いつでも同じ会話を繰り返している気がするな

ともかく、ここに入り込んでから21日目……

砂時計の最後のひと粒が、ガラス容器の中をゆっくりと落ちた。バネッサは砂時計を反転させ、流れ落ちる砂が再び終わりのない循環を繰り返し始めたのを、じっと見つめた

22日目になった

バネッサは暗く目を伏せた

あの時、攻撃を受けたファウンス宇宙船は自動防御システムを起動させ、単独で射出された

地上からの異常な攻撃はしばらく続いた。反撃を試みたが、敵を捕捉できず、断念せざるを得なかった

最初はまだ楽観視できた。通信塔の不具合で連絡は取れなかったが、空中庭園の巡航信号は追跡できていたからな。宇宙船が……こんな場所へ引きずり込まれるまでは

そうだ。ファウンスはこの空間に主体的に「捕捉」され、引きずり込まれたんだ

異常な重力を感知した瞬間、エンジンの出力を最大まで引き上げ、ファウンスの操縦権を取り戻そうとしたが、まったく効果はなかった

激しい振動の後、宇宙船はこの空間に捕捉されてしまった

現れた最も異常な人物というなら、お前たち3人だ

侵蝕体なのか、それとも別の何かなのかは不明だが、何か巨大な存在が宇宙船を追跡している。頻繁に現れはしないが、激しい「震動」の後、時折その姿を見せる

私たちは、ひとまずそれに「キメラ」というコードネームをつけた

そうだ。やつの体は巨大で、一対の奇妙な角を持っている。「亀裂」は、あれが開けたのではないかと私は疑っている

だが、攻撃部隊を組織できるほどの兵力は残っていない。今の安全区域を維持するだけで精一杯だ

彼女は眉をひそめた

負傷者も多く、これ以上時間を無駄にできない。脱出する方法を考えなければ。お前らふたり……いや、3人はどうやってここへ来た?通った経路から脱出できそうか?

私と指揮官……それと、こちらの構造体は、ファウンス地上跡地で何かに「巻き込まれて」ここへ引き込まれたんです

……ファウンス地上跡地?

……

αはこちらの「嘘」を指摘することなく、黙っていた

灰白色の霧が立ち込める中、再び目を開けると、そこは見覚えがあるような、しかし見知らぬデッキの上だった

耳鳴りのような低い唸りはまだ耳から消えていなかったが、最初に取った行動は、傍にいるはずの構造体の姿を探すことだった

指揮官、私ならここにいます

指揮官、ここはファウンス宇宙船のようですが、それだけではないようです……

ルシアは立ち上がり、こちらの防護服に搭載されたパニシング浄化システムが正常に作動しているのを確認してから、低い声で口を開いた

私たちは今、ファウンス宇宙船にいるはずですが、この空間は……「霧域」かもしれません

異重合塔が降臨していない以上、「霧域」へ通じる経路も存在するはずがない……

私にも……はっきりとはわかりません

前に霧域へ入った時は、こんな様子ではありませんでした

あの時の霧域はどこまでも灰色の霧に覆われ、時間も空間も存在せず、彼女はただ闇雲にひた走ることしかできなかった

しかしこの場所は……

無数の「亀裂」はそれぞれ異なる「空間」に通じているらしく、幾千もの異形の怪物がその亀裂をくぐり、このデッキへと降り立っている

灰色の霧の中でも、宇宙船の記念碑はビーコンのように目を引いた。しかし……あまりにも音がしない。怪物たちの物音と血痕を除けば、ここは巨大な墓所のように静かだ

彼らは本当にまだ生きているのだろうか?

うっ……

マインドビーコンの向こう側から微かな震えが伝わり、ルシアは顔をしかめた

……大丈夫です、指揮官。霧域の影響でしょう

覚えていません。これも霧域の変化の一部なのかもしれません。今回は、異重合塔が降臨していませんから

振り返っても、「戻る」ための道は見つからない。残された唯一の選択肢は、前へ進み続けることだけだった

指揮官、私たちは……

ファウンス宇宙船の失踪は、ちょうど学校の記念日で、船内には経験豊富な指揮官も多くいた。こんな高濃度パニシング環境に突入すれば、彼らは必ず小型浄化塔へ向かうはずだ

最悪の事態を覚悟しながら進み続け、ぼんやりと人影を見つけた時、ようやく胸をなで下ろした

「霧域」か……聞いたことのない名称だが、なかなか的を得ている

バネッサは端末からファウンス宇宙船の航行記録を呼び出した

つまり、君らが入ってきた区域――ファウンス地上跡地付近には、「霧域」へ通じる出口が存在する可能性があるということだな……

それでも手がかりであることには違いない。ここで座して死を待つよりはいい

あの忌々しい亀裂は、今も新たな怪物を吐き出し続けている。当面の急務は、この安全区域を守り抜き、その上で……

ギギギ――

何の前触れもなく、引き裂くような激しい震動が船体の周囲で起き、合金製の隔壁が歪んだ悲鳴を上げた

くっ……

αは小さく後ずさり、刀の柄を強く握りしめた

……

霧域に入ってからまた現れた意識海の震動……「キメラ」の仕業なのだろうか?

またか……レイナ!予備の第7探索隊を率いて、安全区域周辺を巡回し、亀裂が出現しないよう警戒しろ!それから、アリアナに……

バネッサは何かに気付いたようにハッとして、突然黙り込んだ

――わかった!

レイナは扉の向こうで答え、素早くその場を離れた

……おい、貴様もぼやぼやせず、その構造体たちを連れて確認を……

彼女は戦術レーダーのホログラムを展開し、敵が集中している地点を確認しようとした……

すると、無数の赤い「敵」に囲まれて、緑色の光点がまたひとつ表示された

……どういうことだ。4つ目のファウンスの信号だと?

待て、この人物は……

バネッサは愕然として顔を上げた

なぜ信号が……「キメラ」と重なっている!?