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セレーナ: 希声

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希声の秘密1

空中庭園へ戻ったあと、彼女は地上で書き留めた手記や楽譜の整理を始めた。それらの作品が世界政府芸術協会で試演されると、とある聴衆から「セレーナの以前の作品と比べて、雰囲気がより重厚で、より真実味を増している。こちらの方が自分の好みに合っている」との評価を受けた。

希声の秘密2

地上から多くのアヤメの種を持ち帰り、そのほとんどは貴重な地球の植物標本として温室エリアに寄贈され、研究対象となった。その中には、育成後に白い花を咲かせたものもあったが、調査の結果、それは地球上のどのアヤメの分岐種にも属さないことが判明した。しかし、セレーナ自身はそれらの種をどこで採取したのか、まったく覚えていないという。

希声の秘密3

補機の開発方針を決める際、彼女は「音楽創作を支援する機能が欲しい」と提案し、その結果、音波攻撃スキルと録音、再生機能を兼ね備えた音響ロボット「トムテ」が誕生した。今、トムテは彼女の音楽スタジオの一員となっている。

希声の秘密4

地上での経験を通じて、セレーナはこれまで脚本や絵画の中でしか見たことのなかったものに直接触れる機会を得た。それにより、彼女の中で更なる鮮明さと具体性を得ていった。世界政府芸術協会の仲間たちは、彼女が任務を遂行する際に見せる成熟した冷静さに驚いていたが、間違いなく、あの旅が彼女にもたらした変化はそれだけに留まらない。

希声の秘密5

最近の新たな興味は、希声の機能を活用し、演奏ホールで「ひとり交響楽団」の練習を行うこと。指揮から各声部の演奏まで、全て彼女自身が担当している。

希声の秘密6

パニシングの力を借りる際、人工の髪はその負荷を受けて侵食され、無機質な白色へと変化する。しかし、パニシングとの接続を断つと、時間をかけて徐々に元の深い色へと自動的に修復されていく。

希声の秘密7

黄金時代の住民との交流を通じて、正式な声楽教本には決して載らないような地元の民謡を数多く学び、ついに「スオナをメタルロックに融合させる」という目標を初めて達成した。しかし、当時の聴衆の反応を見る限り、その試みはやや前衛的すぎたようだ。

希声の秘密8

アイラとともに、黄金時代の名作オペラを復元するプロジェクトを再始動し、今回は更にレオニーの協力も加わった。復元公演は意外にも空中庭園の年配観客層に大きな支持を得て、アレン会長の後押しもあり、現在では「ゴールデンタイム」として定期的にオペラハウスで無料公演が行われている。

希声の秘密9

完全な記憶を取り戻した今でも、希声の姿はセレーナにとって「最も理想的な自分」のままである。彼女はすでに自身の過去も、現在も、そして周囲が期待する未来さえも完全に受け入れている。彼女は生まれ変わったセレーナであり、同時に、馴染み深いアイリスでもある。

希声の秘密10

かつて彼女とともに長い旅路を歩んだ手紙の数々は、今では書斎の引き出しの奥深くに大切に保管されている。しかし、心に湧き上がる想いを抑えきれず、けれど言葉にするのが難しいと感じた時、彼女はそっとその手紙を広げ、再び筆を取り、思いを綴る。

希声の秘密11

長いループを抜け出した今でも、時々、指揮官が再び自分を忘れてしまう悪夢を見ることがある。それでも、夢から覚めた彼女の心に恐れはない。なぜなら、今の彼女ははっきりと理解している。自分は確かにこの瞬間、この場所に存在しているのだと。

希声の秘密12

このコアが動き続ける限り、時間が前へと流れ続ける限り、彼女は目の前に広がる全てを意識海に深く刻み込み、決して忘れることはない。