Story Reader / 外伝シークレット / EX05 迷境ノ疵 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
<

EX05-10 結末の引導

>

――私、ひとりじゃない

ノクティス、21号、とどめよ!

地獄の番犬に追い詰められたブードゥーはすでに袋の鼠、俎上の鯉だ。敗北する瞬間はもう目の前だった

……だが、いつだって予想外の出来事というものは起こりうる

Laguz——

ロランの低い声が聞こえた。前にロランがこの手を使ったことを知っているヴィラは、これからの事態を察知し即座に反応した

聴覚を遮断ッ!!

意味ないよ

抗いようのない強い力のせいで、21号は後ろへ飛ばされ、それからノクティスも飛ばされた。皆は一瞬にしてバランスを崩し、武器を落とし、その場に倒れてしまう

うわっ――おいっ――

……ぐっ……!

――あのヴィラですら動けないでいる

やられた振りをして、地面にしゃがみ込んでいた男が微笑んでいる

素晴らしい……本当に素晴らしいよ

ロランは優雅な足取りでやってきて、かぶってもいない帽子を取る仕草をすると、月の下、お辞儀をしてみせた。公演を終わらせたマジシャンといった風情だ

レディースアンドジェントルマン――ショーはこれにて終わりです

場を温めてくれたうえに、面倒ごとも片づけてくれて感謝申し上げるよ。でも、チケットを買ってなかったゲストには……ささやかな罰を与えないと、ね

言葉と裏腹に、ロランはブードゥーを捕らえはしなかった

ロランとケルベロスとの戦闘後のブードゥーにもう戦う気力がないのは明らかだ

同時に、ブードゥーの反応から、ロランは更に多くの事実を手にしていた――

――彼女は逃げようとしなかった。それはいいことだ。撃破されることも、相手が予想していた事実を示している

彼はブードゥーに向かって歩いた。先ほどまでのように、完全に反抗できないガラクタのような様子ではなくなっている

チケット代を出してくれる?お嬢さん

そう言い終えると、彼はブードゥーに近づき、他の者には聞こえないような低い声で話した――

――もうひとりはどこだい?私は下っぱには興味はないんだ

私を招待してくれるんなら、全てを決められるホストからのお招きだと願いたいね

……フォン·ネガット様はお前に満足なさるだろう

彼はどこにいるの?

……もう少し経てば、わかること

謎かけは好きじゃないんだ

ロランは拳銃を取り出し、ブードゥーの割れたマスクに狙いを定めた

設計者がなんで構造体の意識海のコアパーツを、人間組織と同じように、頭部に設置したのかはわからないけど

私にとってはかえって便利だよ。マスクの装甲保護を失えば、軍事用レベルの複合頭蓋骨でも、この散弾銃の弾丸には耐えられない

だから、死にたくなかったら、もうひとりの姿を見せてくれない?

…………

3

…………

ロランの視界の端に、どこかで見たことのある黒い服の少女の姿が現れた

ちっ、興ざめだな

さぁ、もう時間がない、そうだろう?

君が言うあの方に、会わてくれないかな

それは……私にはできない

なぜなら……私は今、ここを離れないといけないからだ

緊急ロケットエンジン、点火

ブードゥーの大きな黒い翼の下から、突然、いくつかの巨大な炎が現れた

噴出口から吐き出される大量の炎と熱い気流が、ブードゥーを空へと飛翔させた

ブードゥーがロランの銃撃範囲から離れる直前、彼女がロランに残した最後の言葉――

あの方に会ったら、お前の考えは変わるだろう

お前と私のような者にとって……あそこは私たちが、唯一自分を楽しむことができる場所なのだ

面白い……実に面白い……

本当に面白い、このゲームは面白すぎる、ロランはそう思った

ハハ……ハハハ……ハハハハハ!

――彼は思わず笑い出した。彼は振り向くと地面に打ちつけられた21号を一瞥し、嘲るような表情を浮かべた

21号はロランの目から嘲笑と軽蔑を感じとり――喉からぐぐっという威嚇の声を発した。しかし、それを聞いてもなおロランは、21号とグレイレイヴン指揮官を哀れに思うだけだ

面白いな……指揮官、真相を知ったら、あなたがどんな顔をするか見たいもんだよ……

(この世界はどこまでも暗い。昔から相変わらず。私にとって、君にとって、ずっとそうだった)

(もしチャンスがあれば……君を目の前に捕らえて来て、運命に翻弄されるふたりの魂として、ゆっくり話しをしてみたいな)

――しかし、それはまたいつかの話だ。ロランは21号に視線を戻し、そして振り向いてブードゥーの方を見た

ブードゥーが安全高度に逃げたのを見て、ロランは視線を下げると先ほどの黒い服の少女を探した

――しかし黒い服の少女はすでに消えていた。そう、いつものように

……ちっ、本当に幽霊みたいだ

じゃ、ここらで失礼するよ

ワンワンさんたち、じゃあね

ロランはそういうと身をくるりと翻し、谷から去っていった

その時、遠くからヘリコプターの轟音が聞こえた。どんどん近づいて来る。おそらく空中庭園の増援だろう

いや、違うだろうか?いずれにせよ、ロランはもう関心がない

ケルベロスはすぐに気づくだろう、あれは晨星スタジオリゾートの時と同じものではなく、先ほどの戦闘中に適当に捨てた電磁拘束装置から生じた効果であることを

しかしそれももう、ロランにとってはどうでもいいことだ

次の段階に進みましょうか?

敗北したのですね。問題ありません、計画通りです

はい、戻って来てください

これからのことは、私が

…………

これはあの方のご意向です

ええ

それはあなたが考えるべきことではないですね