ナナミ、これからどうする……
例のクマ型とその賛同者が離脱しても、ナナミはずっと立ったまま微動だにしなかった。その時間があまりにも長いように思い、マーチンはナナミの肩をそっと叩く
はッ、はッ、はッ、はッ!
……またそれか。一体何の意味があって……
これはね!元気を出してるの!
おう、つまり作戦続行ってことだな?
もちろん!ナナミはね、そんな立派な理屈に引っ込むような構造体じゃないの!やりたいことは何がなんでも最後までやるのッ!
……あのバイオニックたちの気持ちもわかるけど、でもやっぱりこんな場所で戦うのは違うと思うの。それに、侵蝕体もいることだし
パニシングか……実のところ、バイオニックにはよくわかってねぇんだよな
つまり、バイオニックは侵蝕体との交戦経験がきわめて少ない。知識として侵蝕体について知ってはいても、極地においてそれは大して恐れるべきものではなかったのだ
侵蝕されたら何もかも終わりだってことだけわかってればいいんだよ。インブルリアにコントロールされることよりも、ずっとずっと恐ろしいことだよ!
やっぱりさっきの連中を追いかけるか?それとも、侵蝕体を片っ端から探し出すか?
うーん、どっちもどっちだね……一番効率がいいのは、最初のプランに戻ること
そう言ってナナミは周囲を見回す。そして、自分の身長を「嵩増し」できる大きな石を見つけ、乗り上がる
コホン、コホン!ナナミ軍団のバイオニック諸君、注目したまえ~~!
ナナミ軍団ってなんだよ!?
どうした?
バイオニックたちは一斉に石の上のナナミに注目した
マーちゃんは頭がちょっとおかしくなっちゃって、インブルリアの居場所を忘れちゃったの。けど、みんなは知ってるよね!?
知っているが……それでどうしようと?
インブルリアを説得して、人間への攻撃を止めさせるの。そしたら今度はみんなの力を合わせて、侵蝕体の目的を確かめたりとかできちゃう!
だが、マスターユニット……インブルリアはずっと寝ていて、会話ができるかどうかはわからない。それに……
それに?
俺たちがここに残ったのは、戦いを続けたくないからだ。でも、ここを去っていったやつらも間違ってないと思ってる。俺たちも同じ怒りを感じている
だから、身勝手にもあいつらの努力を無駄にするようなことは……
でも、あなたたちの行動の最大の理由はインブルリア、でしょ。もしインブルリアが戦いをやめるっていうなら、みんな受け入れるんじゃない?
まあ……それはそうだが
説得できなかったら、また他の方法を考えればいいよ。でも、ナナミは今目の前にあるチャンスを絶対に逃したりしないの!
ナナミの強気な宣言に対し、バイオニックたちは輪になって討論を始める。マーチンも輪の中に引きずりこまれた
しばらくして、マーチンは今度は輪の中から押し出された
ナナミ、インブルリアはこの近くの地下で眠っているそうだ。行こうぜ!
ふむふむ。ではでは、ナナミ軍団――出撃!