――――
申三から八沿線までの敵を掃討しました。防衛区にて生き延びた全ての者に呼びかけています。聞こえたら、返答を。
……どうやら、遅すぎたようですね……
わかりきっていたことでした。ですが、実際にそうなってみると……
そうであれば、私たちもできることをする他はありません。
ザク、ザク、ザク
暗闇の中で斬りつけ続けた
どれほどの敵を倒したかもう覚えていない。しかし、1体でも侵蝕体が残っている限り、攻撃を止めてはならない
この戦闘はどのくらい続いたのかしら?十日?半月?覚えていない
時間には何の意味もない。私がやるべきことは、ただ敵を倒し、万世銘が確実に遂行できるようにすることだけ
全ては人類を永遠に生きながらえさせために。ずっと傍観者だった私が、やっと人類のひとりになれた気がする
人類の体、人類の記憶を持ってはいても、ずっと自分が本当の人類であると感じたことはなかった
ふふ…胤とヴィリアーが言う通り、私は一度も人類として生きてこなかった。生まれつきの怪物なのかもしれない
でも長い年月の中で、私は人類としての使命と価値を見出した
…………
周りの仲間は死んでいった。怒鳴り続けたために喉がやられ、人類の声を失ってしまった
でも、まだ終わりではない。私は倒れるわけにはいかない。最後のひと息まで、ここを守り通す
これは私が、九龍の首領として生まれた使命――
曲様、九龍城内の全人民の意識保存が完了しました
ああ……それはよかった
通信チャンネルから衡璣の声が伝わってきた。曲にはわかっている。自分の任務が完了し、人類は生き残ったのだ
張り詰めていたものがはじけ、曲は戦場にうずくまった。刀は、多くの侵蝕体を切りすぎてもはや原型が分からない。周囲には人類の死体と侵蝕体の残骸が山積みになっている
——!
侵蝕体が雄叫びをあげ、うずくまる曲に襲いかかった。しかし曲はその場に静止したまま、両目を閉じた
?
――予想していた死はやってこなかった。その代わり、機械が押しつぶされる音が周囲に響いた
まだ終わってません!
これからの戦いは、私どもにお任せを!
!?あなたたち、なぜ……
申し訳ございません、止められませんでした
曲が振り向くと、衡璣が城門から歩いてきた。彼の後ろからは禄存と至尊が続々と走り出てきて、曲を超えて侵蝕体の方に向けて走り出した
この技術を知り、彼らは自ら、改造するようにと懇願したのです
でも……
その代償も理解しています。たとえ見た目や構造が同じであっても、私たちには異なる心を持っており、そして異なる心が、私たちを同じ絆でここに結びつけたのです
曲様と九龍衆は、九龍を守るために自らの命を捧げようとしました。私たちが負う改造リスクよりもずっと大きなことだ
…………
人類とパニシングの戦争は私たちの世代で終わらないでしょう。ただ、これからの九龍は、人類のみが苦しい戦いを続けるわけではない
私たち構造体が加わったのです。新しい九龍衆が誕生したのです
そうですか……
その通り。曲様は万世銘計画の発起人、ここで果ててはなりません
そうですね……データの保存完了は、万世銘の始まりにすぎない……
私たちの歴史は決してここで終わることはありません