ガアアァァンッ!!!
か……はぁ……っ!!!
事態が混乱するに従い……ロゼッタの意識海も沸き上がり、もはやいつ沸騰してもおかしくはない状態だ……
あの時、あなたたちを助けたのは……ッ!!少しでも……罪悪感を軽くしたかっただけ……ッ!!
今になって……私の前に立ち塞がるなんて……ッ!!
いらぬ情けを……かけてしまったものだ……ッ!!
リーが虫の息となるまで、ロゼッタの攻撃はやまなかった
……ぁぁ…………ぁ……
はぁ……はぁ……?
ロゼッタはようやく手を止め……そして、周囲の状況に気づいた。守林人と港の民は侵蝕体に挟み撃ちにされ、甚大な被害が出ている
ナスティアッ!!
ナ、ナス姉……ナスティア姉ちゃん……!!
いっ……ぐ…………つ、痛………………
……
……絶望で虚ろな目。いまだかつて、イヴァンがこんな目で自分を見たことがあっただろうか
これは……
全部……私の……せい……?
う……!!
あ、ああぁぁぁッ!!!!
し、侵蝕率が……臨界点を超えたようです……
ぐぅ……ああぁぁ…………ッ!!!
ロゼッタ……
まだ、意識はあるか?
私……ディアンナ……?私の身体……一体何が……?
大切なものを失った……が……あなたのせいではない……
あなたの過去は皆……知っているから……
ディアンナは重傷のナスティアの方に視線を向けた。必死に世話を焼くイヴァン、その横には捕鯨砲を持った港の民がふたり
ふたりはナスティアとイヴァンを……守っている
……
漁師は後悔に満ちた表情で、ディアンナから目を背けた
……新ムルマンスク港の全住民に告ぐ
守林人が犠牲を厭わず救援へ馳せ参じたのは、決して責務のためなどではない
単純に、生命に対する情のためだ
……これまで、あなた方は我々との接触を避け、我々から目を背けていたが……
今こそ、守林人の真の姿を見よッ!!北極航路連合よ、我々の存在を改めて認識するがいいッ!!
我々は守林人だ!!それ以外の何者でもない!!
ディアンナの一喝が轟く。誰ひとりとして意義を唱えるものはない
生命への……情……
なる……ほど……
でも、何もかも……手遅れ……
あなたの姉妹であり、弟子であれて……私は幸運だ
ぅ…………
ロゼッタは静かに立ち上がった。侵蝕体は絶え間なく上陸し続けている
ロゼッタは深呼吸をし、スピアを力いっぱい振り回した
放たれた斬撃の波によって侵蝕体は粉々に打ち砕かれ、海の藻屑と化している
……
淀み切った目にはもう、微かな理性しか残っていない
ロゼッタはその場にいたひとりひとりを見回した後……空高く飛び上がった……
ドレー……ク……
初めて領地から出た、あの日。祖父とともに、港を滅茶苦茶にしたキカイイッカクを追いかけていた日々を思い出す
船で荒波を越えて、北極から遥か南極まで。そしてドレーク海峡で初めて侵蝕体と遭遇した
最終的にはキカイイッカクと協力し、互いの命を助け合ったのだ
お爺……ちゃん…………
パニシングに侵蝕されて痩せ細った祖父。枯れ木のような祖父を背負い、雪の森を越え……
港に到着した時にはもう、祖父の息はなかった。それから、港の民に囲まれ、「道具」になることを迫られ……
寒い…………
ロゼッタは落下していく。自らの魂が帰る場所は……ドレークの傍ら……
だが……静かにまぶたを閉じようとしたその時……
ああああぁぁぁぁ―――ッ!!!う、あぁぁ、あああぁぁぁ―――ッ!!!
その身体を赤い閃光が包み、ロゼッタは苦痛に悶えながら氷原へ墜落した
人間の真実を識った者には、昇格者となる資格がある
氷上のロゼッタは、痛みのあまり全身を歪めて悶絶している
させませんッ!!!
!
ルシアの凄まじい一撃が、αの行動を妨害した