リーと目的もなくアーケードを散歩していた時、彼の目線が道端のあるブースに注がれていることに気がついた
何かのチャレンジ大会が行われているようで、ブース内の参加者たちが真剣に機械模型を組み立てている。周囲を取り囲む見物人たちに紛れて、その様子を眺めていた
3……2……1……終了!挑戦失敗です!
待ってくれ、あと少しなのに……あぁっ!
惜しかったですね。あと2秒でした。もう一度挑戦しますか?
記念コインは全部使っちゃったわよ……難しすぎるし、制限時間も短いわ……もう、いいよ
言うまでもありません
目ざとく興味を持った人に気付いた店主が、笑顔でチラシを手渡してきた。そのままルールについて説明し始める
完成図に従って、ひとりがパーツを選び、もうひとりが制限時間内に組み立てるんです。ただし、挑戦中は会話をしてはいけません
七夕ですからね、以心伝心を試すゲームなんです。カップルの方がよく参加されますよ……おふたりも試してみますか?
成功すると、世界にたったひとつの秘密の賞品と、協賛のアディレから機械パーツのギフトパック大が贈られますよ
……参加します
……わかりました。参加するからには勝ちましょう
はい!記念コインはもういただきましたから、おふたりはこちらへどうぞ……
ブースに向かいながら、低い声でリーと「戦術」について話し合う
おっと――言い忘れていました。公平を期すために、役割はくじで決めますんで
数分後、ふたりは機械パーツを組み立てるテーブルの前に立った。リーの前にはバラバラになったパーツが置かれ、自分の前には組み立て用の工具が置かれている
……指揮官
リーは「心配ご無用」というクールな眼差しを投げかけ、こちらの手にバネを置いた
原理は同じですよ
はいはい、おしゃべりはそこまでですよ。準備はいいですか……スタート!
完成図を見ながらどこから手をつけるか考えていると、リーが1個目のパーツを手渡してきた
……
こちらを真剣に見つめるリーの表情は、グレイレイヴンの武器庫の時と変わらない。武器構造を熟知しているあの目つきだ
渡されるパーツの順番及び沈黙の視線が、心に深く刻まれた分解組み立て理論へと導き、それは次第に明確な設計図へと変わっていった
長椅子で武器を分解していたあの午後に、時が戻ったかのようだ。リーの熱のこもった眼差しに見守られながら、自分は手元の機械模型を着実に組み立てていった
すごい、完成図とまったく同じです……しかも制限時間より5分も早い!?新記録ですよ……
制限時間よりも早く挑戦を終えたことで、やや得意気になっていた
……
2、3mmの誤差があるフェイクパーツが大量に紛れていなければ、もっと早く完成できたんですが
おふたりとも専門家だったとは……1本とられましたね。賞品はおふたりのものです。新記録達成の記念に、この模型もプレゼントしましょう
見物人たちの歓声の中、露天商はため息をつきながら大量の賞品をふたりに手渡した
大小さまざまな賞品を手に賑やかなアーケードを離れて、コンステリアでは人気のない高台へとやってきた。景色を遮る建物もなく、澄んだ星空がふたりの頭上に広がる
「秘密の賞品」がまさか、ペアのバッジだったとは……
リーが箱を開けると中に入っていたのは、カササギの絵が描かれたペアのバッジだった。広げた羽が橋の形になっている
会いたい人がいれば、たとえ奇跡のような小さな可能性でも、そのために全力を尽くすもの
ああ、織姫と彦星のことですよ
あなたなら、そう言うのではないかと思っただけです
……
……なぜ急にお礼を?
手の中の「おまけの記念品」を見ると、夜航船で過ごした七夕を思い出した。リーがくれた夜航船の模型だ
――それはもう少し遠い記憶のように思う。同じ祝日、同じような月の色、そしていつもの顔ぶれ。たくさんの経験をともにして、彼は今も自分の傍に立っている
……ええ
手に温かな力を感じた。リーが自分の手を握っている
照れているのか、彼は少し気まずそうに目を逸らし、星の川を隔てて向かい合うふたつの星を眺めた
それはとても……嬉しいことです
静かに降り注ぐ月明かりの下、彼はつぶやくそうにそっと言った