指揮官、お邪魔でしょうか?
アーケードの体験報告に集中するあまり、リーフがすぐ側にやってきたことにしばらく気付かなかった
特に用があったわけではないんですが……指揮官を見かけて、ご挨拶したくて
指揮官、これは?
ふふ、本当に真面目ですね。でも祝日のイベントでもお仕事モードだなんて、頑張りっぱなしは体によくないですから……
それなら、私にお手伝いさせてもらえませんか?
そうだ、以前書いたアーケードの体験レポートを見せていただけますか?
うん……ほとんどが他の方の考察を元にまとめられているんですね。指揮官、どうしてご自分で体験されないんですか?
七夕はほとんどのイベントがふたりで参加しないといけないから、指揮官ひとりでは無理だった……
そうだったんですね。でも、もう大丈夫です。私と指揮官のふたりで参加できますよ
でも……七夕……ふたりでって……それは……
リーフは小声で呟やくと、突然顔を赤らめた
だ、大丈夫です!
いえ、その……指揮官、向こうのイベントを見に行きましょう
リーフとともに店に行くと、ちょうどイベントが開催されていた。たくさんの人が針と糸を手にしている
糸通しですね
九龍の伝統的な風習だそうです。1本の糸に連続して針をどんどん通していくんです。1番に終わった人は「得巧」と呼ばれ、他の敗者からプレゼントがもらえるんだとか
でも、ここのルールでは少し違うみたいですね
店の前に書かれたルールによると、ペアになってひとりが針を、もうひとりが糸を持つようだ。制限時間内に糸を針に通し、ボタンを押せば賞品がもらえるらしい
医療従事者のリーフは、針と糸の扱いに慣れている
私が参加するのはちょっと……ズルになりませんか?
それなら問題なさそうですね……試してみますか?
実際始めてみると、ふたりで針に糸を通すのは想像以上に難しかった
指揮官、頑張ってください!あと少しです!
糸を通すのに集中しすぎたせいか、いつの間にかふたりの顔は相手の息がかかるほど近付いていた
長いこと一緒にいるが、恐らくこんなに近くでリーフを見るのは初めてだ
こちらの額をかすめる彼女の髪……
艶やかに潤んだ桜色の瞳……
やりました!
完成した喜びに自分とリーフは同時に声を上げ、同時に顔を上げ――そして同時に固まった
あっ……ボタン!指揮官、ボタンを!
針を通し終わったらタイマーのボタンを押す、そこで初めて終了となる。糸を通し終えた時は時間内だったのに、ボタンを押したのはもう制限時間をすぎてしまっていた
確かに……残念です……
だから……もう1回……やりませんか……指揮官?