ようこそ、遠方より来られし勇者たちよ
かつて国王の城で聞いた歓迎の言葉だ。国王はNPCとしての本質を維持しているようだ、再度同じ言葉を投げかけてきた
目の前に広大な土地が広がっている。中央にある古びた場所がおそらくは秘密の魔王城なのだろう
ついに来たわね……ずいぶん長いこと待たせてくれたじゃないの
指揮官!皆さん!
動くな。計画に支障が出る
国王の傍に、ヴィラとカムが立っている。更に、両手に奇妙な黒い輪をかけられたリーフも
あの黒い輪によってリーフは行動を制約されているらしい
カム、何してんだよ!?勝負したいなら、正々堂々とやればいいだろ!
バカが……
カムを見つけたカムイが、前に出て挑発する。それに対し、カムはただただ首を横に振るだけだ
リーがカムイの首根っこを捕まえたと同時に、国王がゆっくりと前へ出てきた
勇者たちよ。繰り返すが、我は決して貴君らに危害を加えぬ
だが貴様は、この世界を滅ぼそうとしている!
魔王よ……なんだそのけったいな見た目は。そんなことになっているとわかっていたなら、勇者との接触を避けることもできたのだが
ふん、我がおらずとも反乱の狼煙を上げる者もあるだろう。他の連中だって、もし貴様が世界の滅亡を謀っていると知れば……
だが、それは誰ひとり与り知らぬこと。ゲームという名の循環の中、貴様と我だけが世界の真実を理解した
もちろん、目の前にいる勇者の方々も真実を知っておる
いかにも。我はゲームのキャラクターとしてゲームの世界で生きることが嫌なのではない。むしろ、それこそが我が運命
世界を守る……[player name]、さすがはご立派な勇者だ。大層なことを言う
だが、我はもうゲームのルールを受け入れたくはない。システムの操り人形には飽き飽きだ。意味のない会話の繰り返しは金輪際御免だ!!
何者にも束縛されない、独立したAIになりたい、ということですか?
そうだ。女神の秘宝があれば、その力を得ることができる。このゲームの世界から自由になれるのだ!
それは無理でしょうね。所詮はゲーム内のアイテムにすぎませんから……そんなものがゲームのシステムに影響を与えられるとでも?
残念だが無理ではないのだよ。女神がそうなさったのだ
当然だ。ここはそういう世界なのだから!
ふん。冗談だと思うならそれで結構だ。おのれが何をすべきかわかっているのは、どの道我だけなのだから!
力を得て、世界を滅ぼし、そのうえで自らのルールに則った世界を再構築する。我が新たな女神となり、このシステムから自由になるのだ!
なるほど……言いたいことはわかりました。ですが、ひとつ問題があるようです
問題……?
男性は女神になれません
……
……
ぷっ……
カム、ヴィラ、それに忠実なる衛兵たちよ!かかれ~!
えっ!??