この……!クソッタレの勇者めッ!
アハ、男の子でしょ?そんな風にメソメソ泣かないの。カム、カレニーナ、回復薬はどのくらい集まったかしら?
だから!なんでてめぇが仕切るんだよッ!
回復薬をできるだけ集めて、さっさと旅を終わらせたい――そんなわけでヴィラは、道中ずっとこの調子だ。家という家から、ひたすら回復薬を巻き上げている
あら?こいつらに同情しているのかしら?まあ、あなたが大したお人よしだというのはわかっていたけれど……
回復薬ってやつは、多いに越したことはないの。この先もっと危険な目にあわないとも限らないでしょう?
それに、私たちは回復薬以外何ひとつ取り上げていないわ。金目のものだって、武器だって取っていないのよ。つまり、私たちは善人だってこと
ロジックが破綻してるぞ。俺たちがやっていることは強盗と変わらない
それは、代価を支払わない場合の話でしょう。カレニーナは一軒一軒にきちんとコインを残していってるのよ?まあ適正価格かどうかはわかりませんけど
てめぇ!いつから気づいてやがった!
アハハ。悪役はからきし無理ね、カレニーナ
オレは悪役をやるつもりなんかこれっぽちもねぇ!!
――しばらく経って、ヴィラはカムとカレニーナが抱えてきた大量の回復薬をふたつに分け、自分とカレニーナのアイテムバッグに詰めた
オーケー。じゃあ、次の村に行きましょうか
当然でしょう。まあ自己治療できる私に回復薬はそれほど必要ではないけれど、他者の物を奪う感覚は、病みつきになるわね
魔将の城はこの村の裏手なの。あなたがどう思おうと、私たちは村を通らなければならないわ
国王の犬が!これ以上好き勝手させてたまるか!
犬だのなんだの言われても、何も思わないわ。それにしてもあなたたち、よほど国王に対する敬意がないのね
ヴィラがパーティーを率いて去ろうとした時、村中のガードが高らかに正義を叫び始めた。どうやら村の財産を奪う勇者を、一刀両断にしようということらしい
国王は城にこもっておかしな実験をしてるだけじゃないか。あいつは魔族を殺すこと以外、何もしやしない!
滅茶苦茶な国ね……まあ、私には関係のないことですけど
私がすべきは勝つことのみ!そこをどきなさい!
そう言うとヴィラは刀を抜き、ガードの群れに突撃した