何やらおかしな場所だ。数歩進んでみて理解したが、どうやらこのあたりはゲームの「スタート地点」らしい
周囲には誰もいない。確かカムイは「チーム分け」があると言っていたが……
不安に駆られながらメニュー画面を開き、「パーティー」の項目をタップする
プレイヤー:[player name]、パーティーメンバー:ヴィラ、カム、カレニーナ
………驚いた
夢にも思わなかった組み合わせだ
なんだよ?なんか不満でもあんのか?
前方から現れたのはカレニーナだ
予想外ね……
そして、右側からはヴィラ。刀を引きずっており、刀先が擦れる音が響く
待たせやがって
カムも左の死角から飛び出してきた
……3人に取り囲まれてしまった。3人とも夏仕様の塗装だ
ゲームのTipsによれば、それぞれの衣装はプレイヤーデータに合わせて自動的に出現する「勇者の装束」らしい
はあ!?あとのふたりが勝手にオレの真似しただけじゃねぇか!
それはそれで息ピッタリ
……イカれちまったのか?
なんとか絞り出した挨拶の言葉を全否定されてしまった
よし、おふざけはここまでだ。面子も揃ったことだし、すぐに城に向かうぞ
そうしましょう。……カレニーナ、先ほどの偵察で、城は見つかったのね?国王を探すの何だの息巻いていたようだけれど?
例のミッションってやつだよ。多分このゲームは、国王から任務を受けて、それで魔王を倒すとかそういうことだと思う
そうね、10分ほどは早かったかしら。構造体の方がロードが速いみたいだし、この様子だとおそらくグレイレイヴンは先を行っているわね
そうだ。さっさと追いつかなきゃならん。俺はあのバカに負けるつもりはないからな
偵察には出たが、城はなかったぜ
じゃあ、何してたのよ?
もちろん、あっちのチームをやっつけてやろうと思って探してたんだよ。ここがスタート地点なら、あいつらだってここらにいるはずだろ?
へえ……あなたがそんなことを考えていたとはね。それで結果はどうだったの?
手ぶらで戻ってきたんだからわかるだろ!一から十まで全部言わせる気かよ?
いいえ。あなた自身の口から、失敗を認める言葉を聞きたかっただけよ
この赤毛女……
いちいちじゃれるな。敵に気づかれるだろうが!
キィ!
「敵」ってなんだよ。他にもっと大事なことがあんだろ!
あなたにできるのかしら?
口を挟む間もない。カムは雄叫びをあげて大剣を放り、物凄い勢いで突進していった。カレニーナはヴィラに弄ばれ続けている
キィ!キィ!キィ!
……カオスだ
頭の中に、大きな文字が浮かび上がる
前 途 多 難