Story Reader / 幕間シナリオ / 無垢なる祈り / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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平凡であること

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ヒョードルが狩猟漁業組合の用事を済ませて、市場で彫刻刀を買う頃にはもう正午を回っていた

おい、早く店を引き上げろ。今日はもう閉めるんだな

冗談じゃねえ。まだ1本しか売れてないぞ!

「あれ」が来る。早く家に帰った方がいい

ヒョードルもすぐに理解した。今日、バイオニックの「潮」が来るということだ

今度の「潮」はどこから来る?

はあ?「潮」はいつも森から来るだろうが……今回だってそうだろうよ

それを聞いたヒョードルは慌てて金を置くと、そりを駆って森へと向かった

おい!じいさん、釣りは!

ロゼッタ!ロゼッタ、いるか!

ヒョードルは小屋の扉に飛び込んだ。侵入の痕跡はない。だが、ロゼッタもいない――

外へ出る時は書き置きを残すよう、ヒョードルはロゼッタに口を酸っぱくして言い聞かせていた

わしがいない時に外に出るなんて……ロゼッタ……一体どこだ!

証拠は一切ないが、ヒョードルの直感が告げている。ロゼッタの不在はバイオニックの「潮」と関係している――

ヒョードルの疑惧に呼応するように、扉の向こうでバイオニック特有の咆哮が響いた

バイオニック

ギァァァーー!

畜生っ……!!

ヒョードルは年齢にそぐわない俊敏さで小屋を飛び出し、バイオニック目掛けて猟銃をぶっ放した

キィ……

バイオニックの胸に大きな風穴があき、そのまま雪に倒れ込む

だが、バイオニックは決して1匹だけではない。「潮」と呼ばれるほどの大群なのだ。ヒョードルはまたたく間にバイオニックに囲まれてしまった

???

ピューーピューー

その時だった。鋭い指笛が2回鳴ったかと思うと、空から十数本の槍が降り注ぎ、ヒョードルを取り囲むバイオニックを次々に貫いていく

続いて馬蹄の音が響き、木々の間から人馬型の構造体が飛び出してきた

守林人のデミアだ。じいさん、怪我はないか!

守林人を名乗る亜人型構造体に、ヒョードルは眉をひそめてそっと視線を外した

この老人は急なことに驚いて声も出ないに違いない――そう思ったデミアがヒョードルに一歩近づこうとしたその時、倒れていたバイオニックが背後から飛びかかってきた

グアーー!!!!!

耳をつんざく銃声。ヒョードルの猟銃が煙を吐いている。弾はバイオニックの胸を貫通していた

こいつらはな、動力連結部を壊さない限り止まらんぞ

……すまない、恩に着る

更に複数の守林人が現れ、デミアに向かって状況を報告し始めた

リーダー!ここから山に向かう足跡を発見した。足跡は複数で、どれもまだ新しい。大きさからいって皆、女の子だと思う

いつもこっそり町を抜け出して雪山で遊んでいるあの子たちか……だが、なぜこんなところに……

傍らにバイオニックの足跡もあったから、おそらくは……

横で聞いていたヒョードルは黙って猟銃を背負い、山に向かって歩き出した

おい、どこに行く!?おい!

守林人、武器を持ってあの老人に続け。急ぐぞ!

ロゼッタは周囲を警戒しながら、不自然に折れた木にそっと近づき、そのにおいを嗅いだ

循環液のにおい。多分まだ山の方に向かってる……

あの子たちを見た時に言ってあげるべきだったんだ。今日は森に来ちゃダメって!

だが、ロゼッタは祖父の言いつけを破れなかった。外の人間と話すな、外の人間と会うな——

バイオニックより先にあの子たちを見つけなきゃ。もし間に合わなかったら……

ロゼッタは手に持つスピアをきつく握りしめた。彼女が最も頼りにしている武器だ

バイオニックをやっつけるしかない!

ロゼッタは手に持つスピアをきつく握りしめた。彼女が最も頼りにしている武器だ

バイオニックをやっつけるしかない!