ギガァァァ!ガーー!
ロゼッタはスピアをバイオニックの動力連結部に深く刺し込み、その動きを完全に停止させた
だが、ロゼッタは「潮」の規模を完全に見誤っていた。想像を絶する数のバイオニックが森の外に向かって大挙している
そんな……早くあの子たちを見つけなきゃ!
ロゼッタは道を塞いでいるバイオニックを蹴飛ばし、一歩先に森を離れた
思った通り、少女たちは山の中腹にいた。何ひとつ警戒するそぶりもなく、皆で雪合戦を楽しんでいる
もう、おじいちゃんの言いつけを気にしている場合じゃない――ロゼッタは覚悟を決めると少女たちの前に飛び出て、大きな声で叫んだ
今すぐ逃げて!「潮」が来る!
目の前の少女が驚いてロゼッタを見る。他の少女も皆手を止め、一斉にロゼッタを見つめた
え、どういうこと?それに、あなた誰なの……
焦ったロゼッタは、少女の手を引っぱって強引に連れて行こうとした。だが、振り返ったロゼッタは驚きのあまり停止してしまった――
後ろには、バイオニックの影も形もなかった。ただ、何事もなかったかのようにいつもの森がいつも通りあるだけだ
ひょっとしてあなた、森に住んでるっていう噂の女の子でしょ?
え、うん……待って、本当なの!でもどうしてバイオニックの姿が……
少女はえらく喜んでいるようだ。少女はロゼッタの手を引き、仲間の前に立たせる
えっへん!どうよ!「雪の森の女の子」は伝説なんかじゃなかったわ!よくも私をバカにしてくれたわね!
他の少女たちは興味津々の様子で、一斉にロゼッタの周りに集まってきた
私はリーシャ。お名前は何ていうの?
ロゼッタ……
へえ!ロゼッタ!互いに名前を知ったらもうお友達よ!せっかくだから、ロゼッタも一緒に遊びましょ!
他人と交流した経験がないロゼッタには誘いを断る方法すらわからず、ただリーシャに手を引かれるままに、少女たちの遊びに加わった
ロゼッタには思いもよらないことだった。同じ年頃の子どもたちと、ただただしゃべって、くだらないゲームをすることがこんなにも楽しいだなんて――
ロゼッタ、一緒に遊んでくれてありがと。森のこともたくさん教えてくれてありがとね!
ううん……私も楽しかった……
そっか、良かった!でもロゼッタはもう帰らなきゃダメみたいね。おじいちゃんが迎えに来てるよ
ロゼッタが振り向くと、少し離れたところにヒョードルが立っていた。彼は黙って、少女たちを見つめている
おじいちゃん!ごめんなさい……あの、この子たちがバイオニックに襲われるんじゃないかって……それで教えてあげなきゃって……もう二度としないから!
だが、ロゼッタの予想に反してヒョードルが怒ることはなかった。それどころか、少女たちに向かって手を振っている
ロゼッタ、友達と別れる時は手を振って「さよなら」を言わないと
さ……さよなら
うん、さよなら!また一緒に遊ぼうね!
おじいちゃん…………
ロゼッタ、ずっと森の中で暮らすのは寂しいか?
ヒョードルの問いにロゼッタは目を真ん丸にし、すぐに首を振って否定した
寂しくないよ……おじいちゃんも動物もいる……それに守護神様も……十分だよ
ヒョードルはからりと笑った。それから、ロゼッタの手をそっと持ち上げて、市場で買った彫刻刀を握らせる
ロゼッタ、わしはもういい年で、実は外に出かけるのも億劫なんだ。明日はお前が代わりに日用品の買い出しに行ってくれるか?
おじいちゃん、急にどうして!それに「潮」が……
大丈夫だ。「守護神」は戻ってきなすった。「潮」もじきに過ぎ去るだろう
ヒョードルは指笛を鳴らした。ロゼッタは興奮を隠しきれずに雪山の断崖に走り寄り、そこから海を見渡した――
ゴォーー
突然、巨大なキカイイッカクが水面から飛び出し、水しぶきを吹き上げた。遠くでそれを見た少女たちからも、歓声が上がる
デミアは森の影に隠れ、静かに子どもたちを見守っていた
あの忌々しい実験がなかったら、私たちだって同じように……
過去に戻ることはできない。今の我々は守林人だ。使命を全うすることだけが存在意義の罪人だ
リーダー……
行こう。日が落ちる前にバイオニックの残党を処理しなければ
了解!