Story Reader / シークレット / 15 ラストスパーク / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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15-4 無能

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食堂の前の廊下では研究者たちが黒だかりの行列を作っており、先が見えない

そう遠くない場所にいた研究員が何かを思い出したのか、隣の同僚と言葉を交わして、列から離れた

長い列はゆっくりと前へ進み、彼が空けた隙間が埋まろうとしたその時――

――左右を見渡し、誰も自分に気づいていないのを確認してから――

――ラミアは迷わずその隙間へスルッと割り込んだ

後ろにいた背の高い研究員がラミアに気づき、不快そうな表情で下を向いた。それが仕事の疲労のせいか、ラミアを見たからかはわからない

君は……医療部が飼ってる女の子か?彼らはルールってものを教えなかったのか?

ラミアは身をすくませた

彼女は当然、海よりも冷たく、氷よりも硬いあのルールを知っている

ラミアは自分の肩を抱き、か弱く見えるよう、目を見開いて無邪気な表情を作った

いつも通用する方法ではない――むしろ、ほとんど通用しなかった。図書館の本には、人間は「同情心」と呼ぶ感情を持つと書いてあったが、ここでそんな感情を見たことがない

ラミアは不安げに研究員のメガネの奥の目を見た。無機質なレンズに反射する白い光に冷酷さを感じる

彼はつと頭を上げ、会話を打ち切った

それは同情心からの行動ではない。彼はただ会話することへの興味を失っただけだ

ラミアはほっとした――これが一番いい

列はまたじりじりと前へ進み出した。どれほどの時間が経ったのか、ようやくあの真っ白な長机の前にたどり着いた

昔、ここには食べ物がいっぱいあり、自由に取ることができ、食堂には楽しげな談笑の声があふれていた

しかし今、食堂の雰囲気はどんよりと重い。白い机の後ろに座っているのは、それぞれ記録用のボードを持った後方支援スタッフだ

彼らの背後には、完全武装の行政部のセキュリティスタッフがいる。彼らが秩序を維持しているのだ

後方支援スタッフは自分を見ることすらせず、ひたすらボードを見ている

名前は?

ラミア

彼はいまだボードを見たままだ

ラ……ラ……ラミアです

後方支援部のスタッフはリストに指を滑らせ続け、ようやく探し当てた

カロリー摂取は1日1164kcalまで。今日の食事はこれだ

目の前に2つのビスケットが置かれた

ラミアはゴクリと唾を飲み込み、勇気を絞り出した

試すことは罪じゃない、失敗は許される

あ……あの……

何だ?

そ……その……ビスケットを、もうひとつもらえませんか?お腹が……本当に減ってて……

駄目だ。配給は年齢、身長、体重と毎日の平均活動量によって厳密に計算されている。これが君の分だ

行政部のセキュリティスタッフが一歩前へ出た

彼らにとって、子どもだろうが大人だろうが待遇は同じだ

後方支援部は賞味期限と栄養成分以外の質問を受けつけない。質問があるなら、行政部に言ってくれ。もう離れて。多くの人がまだ後ろで待っている

ラミアは丁寧にハンカチで2枚のビスケットを包むと、食堂から離れた

パニシング発生後、すぐに基地内は配給制になった

最初は配られる食べ物のバケツが食堂の長机に置かれ、缶とビスケットが山盛りになっていた

その後、バケツは後方支援スタッフの足下に移動され、補給を受け取る時に、首を伸ばさなければ中が見えなくなった

今はバケツすらない。おそらく食糧は机の下に隠されているのだろう

今後は?

本には、人は食べないと飢え死にすると書かれていた

多くの人々が飢えて苦しむことを飢饉というらしい

基地にも飢饉が起きるんだろうか?

私はこのまま、飢え死にするの?――とラミアは思った

彼女はまだ外の世界を見たことがない

本によると、外の世界はアトランティスよりはるかに大きいらしい

本によると、海には果てがあり、その果てを陸と呼ぶそうだ

大陸の大きさに比べれば、アトランティスは塵に等しい

大陸にはたくさんのアトランティスがあり、たくさんの人が住んでいる

大陸の地平線は平らではない。そこに山と呼ばれるものがあるからだ

大陸には温室にあるような植物がたくさん生えていて、それは「森」と呼ばれている

大陸にはアトランティスのような「ルール」はないらしい

そこでは、子供が泣けば、暖かく抱擁され、優しく慰められる

ラミアは足を抱えて縮こまりながら、眠りについた