Story Reader / シークレット / 15 ラストスパーク / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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15-3 臆病

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一日の仕事を終えると、ラストリアスはいつも定刻通りに自分の部屋に戻る

基地の居室の配置は、まるで蜂の巣のようだった

基地の奥の廊下から上を眺めると、そこには「絶壁」が見える。そのキラキラときらめく四角形は、まるでガラスに凝固した霜の花のようだ

その四角形とは、実験室あるいは研究室だ。廊下を行き来する白衣の人間は、翅を持たない働き蜂そのものだ

彼らの周りではドローンが飛んでいる。後方支援部門の管理のもと、基地内には常時サイズの異なるドローンが数十万機飛んでいた

ドローンが血管内の細胞のように廊下やダクト、ケーブルを清掃し、修理をするため、研究者は零点エネルギーリアクターの研究に集中できる

広いサーバールームで点滅するサーバーはキラキラと輝く海のようだ。巨大なサーバーのタワーは重厚な石碑のようで、そこにいるデータ部のスタッフは塵のように小さく見える

研究者は学問にしか関心がない

どこを歩いても、ラストリアスは物理や数学の討論を耳にする。この基地で飛び交う言語は、変数、変量、方程式ばかりだ

しかし今、そこに小さな変数が現れた

そう、あの愚かしい人間の子だ

自分の部屋の前でウロウロしている女の子を見て、ラストリアスは無表情で近づいていった

何をしてるの?

わっ――あ!主任さん!

誰がここに来ていいと?

きょ……許可されてません。怒ってる?

今はまだ。私に何の用?

え、ええと……

1分あげる。話して

えっと、えっ?は、話すって、何を?

ここに来て私に会いに来た理由を。あと50秒

あなたがこの基地で一番偉くて、頭のいい人って、医療部のおじさんたちが言ってたから――

ひとつ目は事実、ふたつ目もまあそうね。あと40秒

だ、だから、ひとつ聞きたくて。医療部のおじさんたちは答えてくれないから――

いいわよ。35秒

……言うのが、こ、怖いの。その質問はみんなを怒らせるのかな?だからみんな答えてくれない――

質問した相手の反応を、あなたがどうこうできるものじゃない。28秒

……

20秒

「ママ」ってなに?

……

主任さん?

やっぱり怒った?

いいえ、でも、医療部の人間に対しては怒っている

どうして!?みんないい人だよ、みんなを怒らないで!

それはあなたが決めることじゃない。私が怒る理由は、彼らがこんなどうでもいいことを隠すからよ。まさか私からあなたに説明しないといけないとはね

お入りなさい

……本がたくさん。前に見た部屋と全然違う

それもあなたとは無関係よ。こちらへ

ラストリアスはパソコンを立ち上げて、リビアのファイルを表示した

この人があなたの母親。あなたを産んだ人

「産んだ」ってなに?

人間の話なら、それは女性の子宮で精子と卵子が結合し、胎児となり、女性が分娩する過程のことよ

わ……わたし、よくわからない。主任さん

簡単に言えば、彼女はあなたを創った人ってこと

機械部のおじさんたちがロボットを作るみたいに?

そんなところね

ここ、見える?現在状況――死亡。彼女はもう死んでるの

……

いつ死んだの?

あなたが産まれた日

わ、わたしのせいで死んだの?

いいえ、彼女は自分の愚かさゆえに死んだの

……ママはバカな人だったの?

他の場所なら違うでしょう。でもアトランティスでは、失敗は1度しか許されない

……胸のここが痛い……

ラストリアスは動じない

私には助けられないの

気持ち……悪い……医療部に戻る。おじさんたちが薬をくれるから……

あなたを助けられる薬はないわ

……ママは今、どこにいるの?

遺体のこと?それならすでに海に水葬したわ

このファイルにあるのって……この女の人の写真?1枚印刷してもいい?

駄目よ

どうして?

これは機密事項なの

主任さん、お願い。1枚だけ。だめ?

駄目

……

どうしてそんな憎々し気に私を見るの?

1度断るだけでいいことを、今日、あなたにはわざわざ2度も断ったわ。感謝すべきよ

ラストリアス!大嫌い!

小さな姿は扉へと走ったが、滑らかな床で義肢が滑って転んでしまった。だが彼女はすぐに立ち上がり、廊下の先へと姿を消した

廊下には弱々しい泣き声が響いていた

ラストリアスはため息をつきながらリビアのファイルを閉じ、そして目を閉じた