本当にしぶとい……いや、頑固と言った方が適切かな?
チッ……
ロランに対峙するヴィラは満身創痍だった。彼女が一歩進めば、ロランは一歩退く——
結果として昇格者の足止めには成功したが、力任せで強引な一連の攻撃は、ヴィラにとって不快極まりないものだった
データ上は問題ないはずなのに……ロラン、あなた一体……?
データ……グレイレイヴンが収集したものかい?ずいぶんと彼らを信用しているんだね
……そうだと良かったんだけれど
グレイレイヴンがケルベロスの亡骸を見たら、どんな反応をするだろうね……心配しなくても綺麗に包んで送り返してあげるよ
ロランは言い終えるが早いかチェーンブレードを上空へと振り上げた。刃は空中で鋭く長い鞭に変貌する
砕け散れ!
——
ギィ!!!!
なんだと……!?
——突如飛来した砲弾がロランのすぐ背後で炸裂し、吹き飛んだ侵蝕体の機体と突風で鞭の軌道が乱れた。ロランとケルベロスは同時に砲弾の発射地点を見やる
ごきげんよう、コードから見て空中庭園の小隊でしょう?私たちはアディレ商業連盟です……只今より、砲撃支援を行います
……あの、遠くに見える変てこな列車から砲撃しているのかしら?
その通り
ジャミラ様、一旦退却してもらいましょうよ。砲弾に目は付いてないし、友軍を避けて砲撃するのは難しいです
私もそう思います
冗談じゃないわ!一歩だって退くもんですか……チッ!
その間にもロランは攻撃の手を緩めない。援軍が現れた以上、目の前の問題を一刻も早く――
片づけるしかない
ボランティアで来たわけではありませんし、仕方ありませんね……ソフィア、常羽、別の方法で支援しましょう
じゃあ私は下に。常羽は援護を
ラジャ!
撤退しないと吹っ飛ばされる。隊長、今は退くべきだ
退かないと言ったでしょう……手ぶらで帰れるものですか!
モチのロンよ。撤退なんてほざいたら、後ろからあんたの首に噛みついてたぜ
狂犬が……くだらないことを言っている暇があったら、さっさと合流なさい
案の定、最後までおとなしく言うことを聞いているわけがなかったか
アシモフ……?まさか……
お前たちの指揮官をコネクトシステムに入れてやったぞ。識別IDは0000だ
この識別ID……どういう意味!?
システム上、識別IDは必須なんだよ
使えりゃなんだっていい!ヴィラ、早く識別IDを確認してくれ……!
次から次へと不愉快だな……
ケルベロスの魂胆を窺いながらもロランの戦闘本能は動きを止めることなく、その刃先は一直線にヴィラを狙っている
意識リンク——開始
こいつは……
刃先は僅かに目標から逸れた。その瞬間、目に凶悪な光を宿したヴィラは魔犬のように地を走り、紙一重でチェーンブレードの一撃をかわすと――
勢いそのままにロランへと飛び掛かった。ロランは片足を軸にくるりと旋回すると、前方の地面をチェーンブレードで切り裂き、ヴィラの動きを止める
お次の一撃は?
おい、仕留め損なったのか!
ロランへの一撃が不発だったことを通信で悟ったノクティスが、初めて驚きの声を上げた
ただのウォーミングアップよ。お互いにいい運動だったわ
ケルベロス……動きが見違えたね。何の魔法かな?
痛みを分け合う存在が増えたから……と言っても、どうせわからないでしょうね
ふぅん……