どうした……私は確か……何かを追って……
一体……何を追っていた?なぜ、追っていた?
というか……ここは一体……
私たちの家ではないか。クロムよ、何を呆けている?
スミス、様……?
何度も言っただろう。私のことは「お父さん」と呼びなさい、忘れたのかね?
指揮官は寝ぼけてるだけですよ。毎晩徹夜してるからそうなるんです。指揮官、いっそのこと今日はストライクホーク全休ってどうです?
馬鹿を言え、休みなどありえない……待てカムイ、今、私のことをなんと呼んだ?
指揮官、だよ!どうしたんです?クロムって呼んだ方がいい?俺は別にどっちでもいいけど
いや、私は指揮官ではない……私は、お前たちの隊長だ!
私は、ストライクホークの隊長だ!
やっぱ寝ぼけてんだな……俺たちの隊長はバンジで、クロムは指揮官だぜ?
クロムの反応に、カムイは驚いたようだ。屋外に向けて、大声で叫んだ
バンジ!指揮官がバカになっちゃったみたい!
——
バンジ~!
聞こえてるよ!じゃあお前が治してよ
バンジの野郎……隊長になってもサボってばっかじゃん……指揮官、一緒にガツンと言ってやりましょうよ~
だから、私は指揮官ではない。それに……私の体は一体どうした……
逆元装置は?私は構造体のはずでは?
うーん、本当にどうしちゃったんですかね?
訊きたいのはこちらの方だ!私は構造体だ!指揮官試験に失敗してから、構造体改造を志願して……!
指揮官試験は、クロムがトップで合格しただろう
……合格した?
そうですよ!そんですぐに俺たちストライクホークの指揮官に抜擢されて、色んな敵をやっつけまくって、地球奪還まであと少し!
クロムの父親やカムイ、それにこの場にいるさまざまな人間が、クロムの記憶を元に戻そうと、これまでの出来事を洗いざらい説明した
父親はクロムのために手を尽くして良い父親であろうとし、クロムは自身の選択と努力によって指揮官の任に就いた
ストライクホークを指揮して侵蝕体と戦い、地球の汚染区域を奪還し、昇格者たちと死闘を繰り広げた
そして、とうとう勝利をつかみ取った。外で、皆が待っている。誰も不幸にならない世界が、部屋の外に広がっている
行こうぜ、指揮官。早く最後の任務を遂行しよう!
そうだな……着替えたらすぐに行くから、外で待っていてくれないか?
皆が部屋を出ていくと、部屋は真っ白な空間にとって変わられた。唯一、外の世界をつなぐ扉だけがそこに存在している
お前はあちら側へ行けよ、ランストン
お前はどうするんだ……クロム?
私はこちら側だ
似て非なる魂がふたつ、一緒に座る。互いに背中を合わせ、違うものを見つめている
大変な道のりになるぞ、クロム
承知の上だ
そして、彼は……前へと一歩を踏み出した