いや、違う……
彼女が指し示す道は、きっとこの世界を終焉へと導く……
混沌とした意識の中、この考えだけが鮮烈に脳裏に浮かび上がった
溺れる者のようにたった1本の綱を握り締め、奔流の中から必死に身を起こした
……だったら、あなたはどうやってこの世界を救うというの?
彼女の瞳には失望も怒りもなかった。ただ、深い哀れみだけが宿っていた
私は幾度となく、常人の力では抗えぬ悲劇を目の当たりにしてきた。あなた自身でさえ……その悲劇に命を落としたのよ
聖堂のやり方を見て。枢機主神でさえ、至高の御方の支配を維持する機械にすぎない。ここに住む者たちを家畜として扱うために、星門を越えてここへ来たのよ
世界がこのような法則で動いているのは、私たちの苦闘を高みから眺め、少数の「昇格者」を選び出して「星門」を渡る駒として使い、領土拡張の野望を満たすため
私は誰ひとりとして、至高の御方の操り人形にされるのを見たくない。そして、この世界をあの寄生虫に渡すつもりもない
そう言って、夜を統べる魔君は腕を下ろし、5本の指を胸に当てた
かつてこちらの胸にあった心臓が、彼女の体の中で激しく脈打っている
それとも……
その表情は、深く沈むような哀しみに満ちていた。もはや底が見えないほどに深く
あなたはこう考えているの?また以前のように自分さえ犠牲になれば、この世界がよくなると?
ひと筋の鮮血が自分の腕から滑り落ち、足下の深き奈落へと消えていった
……私が?
彼女がその意味を理解する前に、ホルスターから銃を抜いた。熱い鮮血が銃身の溝を流れ、瞬く間に1発の銃弾へと姿を変えた
照準の先にあるのは、暗黒の魔君の心臓
ためらっている暇などなかった。ほとんど反射的に、引き金に指をかけた
夜空を切り裂くように、ひと筋の赤い光が眩く弧を描き、ネイティアの胸を貫いた
彼女の体はゆっくりと後ろへ倒れていく……はずだった。だが、輝きと熱を放つもうひとつの影が彼女へと駆け寄り、鋭い閃光とともに、彼女を空へと吹き飛ばした
ネイシスの鏡の檻?行ってみたわ。案外、大したことなかったわね?
ほら、やっぱり私の「無限幻境」の方が面白かったでしょう?
静かにして。君の幻境に行きたい人なんていないよ
霧が晴れると、視線の先に四騎士の姿が立っていた。相変わらず他愛のない雑談をしている。まるで眼前の脅威など見えていないかのように
皆……ゆめゆめ油断するな
広いつばの帽子を被ったワタナベが前へと歩み出る。手には拳銃を掲げている
敵は「枢機主神」と「死の王」の力を融合した存在だ。一瞬たりとも気は抜けんぞ
それで、グレイレイヴン様。私はどういたしましょう?皆殺しがいいかしら?
リリスはいつものように怪しい笑みを浮かべている。その傘の先が指し示すのは、秘法が解かれたことで這い寄るように迫りくる、天使と悪魔の軍勢だった
無差別な殺戮は、この世界に更なる苦痛をもたらすだけだよ
バンジは小さくため息をついたが、すぐにランプを持ち上げ、足下に押し寄せる「黒潮」に銃口を向けた
仕方ない、今回限りだよ。彼女の魂を僕に渡して
「ランプ」の中で彼女の本心を覗くから
その「損なお人好し」役を受けても構わないけど、グレイレイヴン様は?彼女を見逃すつもりかしら?
アハ、決まりね
全員、気を抜かないで。この戦いに援軍はいない。中止も撤退も許されない。私たちだけで三界の軍勢を迎え撃つのよ
ヴィラは地に突き立てた双頭槍を引き抜くと、遥か高みに君臨する黒き主へ、真っすぐに突きつけた
血の契約者、我らに命を
了解!
