Story Reader / パレットクラッシュ / アイラと歩く / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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アイラと歩く-2

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アイラは筆を目線の高さに持ち上げて、少女と筆が並んで視界に入るように立てている

彼女は初心者ではない。比率を測ることは本来得意なはずだった

あとどれくらい?

すぐに終わるから、もう少し待ってね

白い髪の少女の質問に対して、アイラは笑顔で手を振った

そして、すぐにスピードを上げた。まるで筆が紙の上で舞っているかのようだ

その間に、少女の様子をつぶさに観察する

今から数分前、アイラが楽々と次の勝利を収めたあと、荒れ果てたその場に立っている彼女に気がついたのだ

彼女がいつからそこで観察していたのかはわからないが、直感的に彼女と接触することを選んでいた

私はこの戦争に参加していない。芸術のことはよくわからないから……

意外な答えが返ってきたので、思わず個人端末を取り出して、コンステリアの駐在員の情報を検索していた

この子、機械体よ

画材を抱えて合流したアイラは、興味深そうに彼女を観察した

う~ん……私の感覚だと少し違うけれど、強いていえば、似ている部分もあるって感じね

……

少女の視線に気付いて、アイラは申し訳なさそうに頭をかいた

じーっと見ちゃって、ごめんね

大丈夫、気にしてないから

それは無表情で、何も感じていないかのような口ぶりだった

えっと……そうだ、あなたをモデルに絵を1枚描かせてくれないかな?お詫びとして

――そうして、今に至るのだ

できた!

アイラは画用紙を取って、少女に見せた

これが……人間の芸術なの?

厳密にいうなら、そうなんだけど

話の内容とは裏腹に、アイラはこの仕上がりに満足していないようだった

代表するなんて、少しおこがましいけどね、えへへ……

……

視覚センサーの記録映像を切り取っても同じなのに、どうして……

ちょ、ちょ、ちょっと待った!

マルクは急いで少女の話を遮ったが、少女は困惑した様子で、答えを求めるようにマルクを見つめる

マルクはこっそりと背後を見た。だが、アイラの顔に不満そうな様子がないことに驚いている

それどころか、その両目は星のように煌々と輝いていた

物足りないよね!?私もそう思う!

アイラは絵を横にかけると、新しい画用紙を広げて、また筆を動かし始めた

しばらくして、完成した新しい作品を皆の前に掲げた

そこには風車の頂でつま先立ちになって踊る少女と、熱気球や飛行ユニット、ドローンが飛び交うコンステリアがあった

これは?

ちょっと想像を巡らせてみたのよ。気に入ってもらえたかしら?

……

わからない。これはありえないことだから

だから描いたの

空想を絵に描いちゃダメなんてルールはないから

……

少女はアイラの話について考え込んでいたが、やがてある結論にたどり着いたようだ

つまり、センサーの記録に存在しないものこそが芸術なの?

今度はアイラが困ってしまったが、彼女は笑って少女に絵を手渡した

もちろんそれが全てじゃないわ。これは絵画の中の氷山の一角にすぎないの

アイラの笑顔に対して、少女は先ほどの言葉を繰り返した

私は芸術のことはよくわからないから……

……

少女が振り返ってこちらを見た時、アイラは静かに親指を立ててみせた

わかった……

いえーい!よろしくね!

少女の返答を予想していたのか、アイラは食い気味に被せてきた

私はアイラ。こちらは私の指揮官よ。で、こっちは偉大なるマルク

偉大さの欠片もないただのマルクだ

マルクは横で訂正しながら、自分のイーゼルにかかっていた作品をこっそりと回収した

そうだ、あなたの名前を教えてくれる?

……

ドルシ……ドルシネア

これは彼が私にくれた名前

ドルシネア?わかった。あの絵の名前は『ドルシネア』にしよう

でも……ドルシネアってちょっと長いよね。呼びやすいように、ドルシーなんてのはどう?

うん

じゃあよろしくね、ドルシー