Story Reader / 叙事余録 / ER12 ラストフレア / Story
遥か遠くの時空の彼方で、「私」もまた、前に進むための第一歩を踏み出した
（まず……足……）
片足、踏み出す、地面につける
（足……もう片方……）
もう片方も、踏み出す……転んだ
ふぅ……
（進む……進む……）
（前……向かう……）
止まる、男の人、いる
ああ、ついに来たんだな。<b>お前</b>こそ私の最高傑作だ
「お前」？
私、真似する、繰り返す
これが最後の<b>扉</b>だ。私がこれを<b>開けたら</b>くぐりなさい。この向こうにはお前たちの養分がある
男の人、しゃがむ。手、振る、呼ぶ
（「私」のため、開ける）
扉を開けてやる前に……<b>名前</b>が欲しくないか？
「名前」？
おや、<b>首をかしげた</b>な。私の言葉をただ繰り返したのか、それとも……考えてるのか？
ハハハ……お前はサルだ。サルでもここまでできるとはね。私は本当に……大成功したんだ……<b>可笑しくて仕方ない</b>……
男の人、首をかしげる？可笑しい？可笑しい？首をかしげる？
何か、体の中、動いてる
さて、私が<b>創造主</b>なのだから、お前に名前を与えるのは当然だ……「<b>イヴ</b>」というのはどうだ？
創造主……「イヴ」
イヴ
ハハハハ！やはり！お前たちは期待通りの創造物だ。私の遺伝子から生まれた子供たち！お前たちこそ、この星で生き残る未来の種族……新しく、完璧で、その名を得るにふさわしい！
創造主、笑う、扉、「ひねって開く」
さあ、扉を開いてやったぞ――この遺伝子保管施設で最も分厚い<b>扉</b>が、お前のために開かれたんだ
私、扉、見る
繰り返す、真似する
（大きい扉、黒い……私、入る）
創造主、しゃがむ、手、振る、呼ぶ
おいで、一歩<b>踏み出して</b>ごらん。この扉の向こうは、お前たちのエデンだ。存分にリンゴを味わうといい
（踏み出す）
怖がらなくていい。人類を見捨てた神とは違い、私はお前たちを心から愛する主だ。このエデンの園は全てお前たちのもの。そしてそのリンゴも罪をもたらしはしない
（踏み出す）
本能に従え。<b>呑み込み</b>、<b>奪い</b>、<b>模倣し</b>、<b>学び</b>、<b>進化</b>するのだ！この扉をくぐれ！扉の向こうの守衛など、最も劣った<b>クズ</b>にすぎん。無視すればいい！
「クズ」
さあ！<b>走れ</b>！
（走れ）
<b>もっと速く</b>！そうだ！
（もっと速く）
ハァ……
速く、走る、速く
私、創造主、速く近付く
ハァ…………
私と風、創造主の前、近付く
足、止める……創造主の目の中――私、いる
ハハハ！私をじっと見て、どうした？人間の目くらいじゃ、自分の全貌は見えないぞ。さあ、走り続けるんだ！
創造主、動かない、手、振る。私、速く、走る
私、足、踏み出す
そうだ！それでいい！さあ、行け！ハハハハハ……
…………
創造主を、見る。私、踏み出す、速く、走る
扉、くぐる
私、世界、入る
走ることで生まれる風の音、足を伸ばして前に進む感覚は、とても不思議だった――だが、生まれたばかりの「イヴ」は、まだその感覚を理解していなかった
イヴは透明な瓶や容器でいっぱいの部屋に素早く飛び込み、本能的に暗闇の中へ身を隠した
……誰だ？
……
誰かいるのか？今日の当直は私だけなのに……実習生が島に来るなんて予定は聞いてないぞ？
棚の隙間から、イヴの視線が白衣を着た若者の姿を捉えた
（クズ）
白衣姿の研究員は、この基地で起きている異変にまったく気付いておらず、ゆっくりとイヴが身を隠しているサンプル棚に近付いた――
（構える）
――幸い、最も危険な角を曲がる直前で、彼は足を止めた
……気のせいか。幽霊なわけないしな、やれやれ
研究員はその場で肩をすくめ、別の角へ向かって歩き出した
…………
研究員が去ると、イヴは棚の陰から飛び出し、近くのサンプルの一部に飛びついた
じっくり観察すると、何層も重なったガラス容器の中に、無数の生き生きとした胚胎があり、人間にはわからないほど微かに震えていた
奪う、呑み込む
バリバリ――イヴがガラスを噛み砕いた音は、立ち去ったはずの研究員を引き戻した
まだ何か音がする。まさかネズミでも出た――うわっ！！
！
研究員の手から器具が落ち、砕け散った。彼は後ずさりながら「イヴ」を指差し、鋭い声を上げた。彼の顔に浮かんだ「表情」――それはイヴにとって理解しがたいものだった
こ、こ、こ、こ、こ、これは………………
クズ
な、な、な、何なんだあああ！！！！！警報、警報を――！！！
イヴの目に映る「クズ」は、叫びながら壁にある赤い警報ボタンに手を伸ばそうとしていた
クズ、逃げる。私、奪う
5分後、ぐったりした人間の死体がイヴの体から滑り落ち、ねっとりとした血液がその存在の痕跡を床に残した
イヴの目的は進化だ。イヴは自らの手でクズを排除し、彼の行動から一種の歪んだ感情を獲得した
（「恐怖」の表情に切り替える）
「恐怖」
それは心の奥底から湧き上がる衝撃と恐れ。陶酔すら感じる刺激的な感覚だった――なるほど、人類がさまざまな活動の中で自ら進んで「恐怖」に触れたがるのも納得だ
イヴはクズと同じ統一された服装に着替え、自分の体をすっかり覆い隠し、同時に「恐怖」の表情も隠した。そして扉を開け、廊下を歩き出す
先ほど胚胎から取得した遺伝子情報を反芻していたが、完全な「学習」にはまだ時間が必要だった
廊下をすれ違う人々は、あの小部屋で起きたことに気付いていない様子だった。皆が同じ厚手の防護服をまとい、無表情のままイヴとすれ違って歩いていく
クズ
イヴの視線が「クズ」たちの間を漂う。魂の奥底から湧き上がる血に飢えた渇望が、今にもイヴの理性を押し潰そうとしていた
――だが、まだその時ではない
克服、走る
イヴは新世界の始祖だ。最も根源的な欲望を乗り越えなければ、新たに進化した完璧な人間にはなれない
当直室
21:00:00
4のペアだ
じゃあ、7のペア
カードゲームが始まったばかりで、数名の兵士たちは椅子にもたれながら、退屈そうに小さなカードを何枚か放り出していた
まったく<b>面倒</b>だ……外がまた荒れてるらしい。島に一番近い港が陥落したとかで、保全エリアで大勢が死んだって話だ……狂ってる
そう考えると、俺たち、あの時に選ばれてこの島に来たのも悪くなかったな。赴任して10数年経つが、少なくとも安全だ。あの侵蝕体どもも、まだ<b>海</b>を渡ってきちゃいないしな
おい、お前の番だ。出せるカードがあるだろう？早くしろ
年長の兵士は眉をしかめ、隅に座る新入りの若い兵士を見た。相手はひと束のカードを握りしめ、順番を揃えるのに手間取っていた
あっ、は、はい、出します。8……8のペアで
何だ？もっと強い役があるだろう？お遊びでやってるんだ。俺たちに気を遣って遠慮すんな
わ、わかりました！ちゃんと出します……！
……何を緊張してるんだ？
来たばかりで事情をよく知らないんだろう。いくつかの研究プロジェクトは動いてるが、もとはただの遺伝子保管施設だ。ここは黒野で「最もお気楽な天国」って評判なんだぜ
そ、そうですか……いろいろ教えてくださってありがとうございます。僕は……その……
若者の視線は天井の辺りに向けられた。そこには小さく赤い光を放つ監視カメラがあり、トランプに興じる兵士たちをじっと見下ろしている
<b>監視カメラ</b>が気になってしまって……。あちこちに設置されてるから、監視がよほど厳しいのかと思ったんですが……
あんなの気にしてどうすんだ！上のやつらが見たけりゃ見るだけさ。気にすんな――こんな<b>クソみたい</b>な世界も、もう終わっちまう。今遊ばなくて、いつ遊ぶんだよ？
キングのペア
？
8のペアに、いきなりキングを出すのか？
隅にいた覆面の兵士は、無言でコクリと頷き、これが自分のやり方だと示した。この見慣れない体格の彼も、恐らく新入りなのだろう
じゃあ、俺はパスだ。お前が出せ、どんないいカードを持ってるのか見せてもらおうか
パシッ
無言の覆面兵士はゆっくりと1組のカードを引き出し、澄んだ音を立てて場に出した
3のペア
……ワハハハ！何を慌てて出したのかと思えば、3のペアを使えずにいたんだな！
出せ出せ、若いの。下手クソどもに譲ってやるよ
年配の兵士は前に向かって手を振った
ご、5のペアで
5？うーむ……あの若造が変な出し方をするせいで出しづらいな……
ん？そういえば、もう9時をすぎてるのに、あの研究員たちはまだ飯に行ってないのか？
また残業で怒られてんのさ。新入りの警備と一緒に来た研究員の新リーダー、あれが完全な「熱血野郎」で、毎日成果をとか、研究にまで指標だ評価だとうるさいんだとよ
年配の兵士は監視カメラをチラッと見て、声を低くした
口の悪さも相当だ。昨日は研究員たちに「人並みの研究成果も出せないくせに、毎日補給食を寄越せと騒ぐし、作るものは反吐が出そうなものばかりだ」とな……ハハ……
ぷっ！あながち間違っちゃいないけどな！ハハハハッ……
当直室の中は陽気な笑い声で溢れていた。隅で適当にカードを出しているふたりの新人を除いては
やっぱり……ちょっと<b>様子を見に</b>いった方がいいんじゃないですか？
ここに来てからずっと観察していましたが、研究員たちは健康管理にはうるさくて、必ず時間通りに食事をしてたのに……でも今日は本当に物音ひとつ、まったくしない……
ハハッ！とんでもない実験で自滅したんじゃないか？黄金時代の古い映画はだいたいそうだ。研究員たちがリスクを冒して怪物を捕まえ、結局逃げられて<b>逆襲</b>されるってやつ
そんなこと……本当にあるんですか？
当直室は、急に沈黙に包まれた。ちょうど覆面の兵士の番だったが、彼はカードを握ったまま、なかなか動こうとしない
そんなに怖い話ばかりするなよ、新人をビビらせてどうすんだ
……冗談だって、真に受けるなよ。ただまあ、別のところではそんなことが起こったんだ……
パシッ
またしてもカードを切る乾いた音がし、人々の視線は自然とそこに向いた――
覆面の兵士はペアのジョーカーを投げ出し、小さな「3のペア」の上に重ねた
……お前、ルールがわかってないのか？
年配の兵士は素早く中年の兵士に目配せし、カードを持つ手はそのままに、もう一方の手をゆっくりと腰へ伸ばした
だがその瞬間、側にいた若い兵士が銃を抜いて立ち上がり、覆面の新人の椅子を蹴り飛ばした
マスクを外せ！！さっきからずっと気になってたんだ。お前は誰だ……！お前、見たことないぞ！！
チッ、血の気の多い若造が手を出しやがって！
当直室の空気が一気に張り詰める。他のふたりも銃を抜いて立ち上がり、立ち上がった覆面の兵士に銃口を向けた
覆面の兵士は3丁の銃に狙われながら、ゆっくりと両手を上げ、マスクを外そうとした
動くな！
年配の兵士が手を伸ばし、そのマスクを引き剥がした
そこには、「恐怖」の表情を下手に真似た、いびつで不気味な顔があった
警報がけたたましく鳴り響く
速く、走る
イヴは、点滅する警告灯の中、当直室を飛び出した。体に浴びた血と肉片は拭いきれず、複雑な人間の衣服は脱ぎ捨て、早足でその場を離れた
クズも、走ってる
捕まえろ！！
背後から銃弾が一斉に飛んできた。あの老兵が死に際に鳴らした警報が面倒を呼び寄せたようだ――複数の兵士が追いかけてくる
（転がって回避する）
当直室の中のやつは、もう……！クソッ、どうなってやがる！前を走ってるあれ、何か変だ！
イヴは手足全てを使って走ろうとしたが、進化途中の体は、原始的な歩行手段には適応できず、よろよろと足で進むしかなかった
面倒
1発の弾丸がイヴの「肩」に命中し、強烈に生臭い黒い液体が飛び散った。進化途中の体にはまだ血液が形成されておらず、これでエネルギーの変換をするしかない
なっ！？何だこいつ！気色の悪い！
さっき調べに行ったが――研究室の方も大変だ！緊急対応策を発動しろ！！あの走ってるあいつは……
「クズ」の兵士たちの叫び声に反応して、ますます多くの人々が事態の異常さに気付き始めた
――あいつは、絶対に人間じゃない！！！
面倒！
火力はますます激しくイヴの背後に集中する。逃げも、避けもできない。高速の弾丸が容赦なく襲いかかり、人間を模倣して作られたばかりの体を貫いていく
面倒！面倒面倒面倒面倒！
面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒面倒
クズ！！
クズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズ
クズが！！死ね！！！
逃げ込もうとした角から、突然また武器を持った連中が飛び出してきた
クズ――殺す！
イヴは巨大な口をグワッと開いて飛びかかった。異様に裂けていた口は更に耳のあたりまで裂けたが、それでも足りない……
呑み込む！喰らう！クズどもを！
バキッ――
血が飛び散り、骨が砕かれ、皮膚と肉が引きちぎられる。ボロ布を裂くような音とともに、研究員の頭は凶暴に引き裂かれ、そのまま丸呑みにされた
喰らう……奪う……模倣して……学び――
進化する
……！！！
イヴは「クズ」からもたらされた情報を高速で解析し、咀嚼を通じてさまざまな複雑な感情を理解していった
中でも、最も軽やかで快活な感情にイヴを強く引きつけられた。「恐怖」を遥かに超える感覚が胸の奥から溢れ出し、イヴはどうしてもそれを表現せずにはいられなかった
すごく「楽しい」
イヴは首のない研究員の肩によじ登ったまま、その楽しさをこらえきれず、追ってくる兵士たちに向けて、これ以上ないほどの眩しい笑顔を見せた
うひ、ウヒヒ
世界で最初の「新人類」――イヴは、遺伝子保管施設から脱出し、孤島の地上に姿を現した
道中で呑み込んだサンプルの量は十分だ。溢れるほどの情報が体内で解析され続けている。あの扉をくぐって以来、「成果をたっぷり得た」旅ができた
後は海へ飛び込むだけ……海を渡ることはできなくても、水中に隠れてこの場をやりすごせれば、全ては大成功だといえる
海へ飛び込む直前の一瞬、イヴは最後に振り返り、追ってくる兵士たちを見た
兵士たちから「楽しい」感情は一切失われた。イヴと同類の大群が一斉に巣から現れたからだ。全ての「私」が進化を目指し、クズを狩っている
クズは所詮クズだ。本来なら新人類の進化の踏み台としておとなしく使われるべきものだ
イヴは恐怖に満ちた人々の顔を見て、「楽しい」気持ちを見せつけずにはいられなかった
キキキッ、バイバイ
イヴは岸辺に立つと同時に、身を躍らせた
（海に飛び込む）
勝った！
海に体を打ちつけるように飛び込むと、無数の泡が、耳元でゴボゴボと小さな音を立て、新たに生まれた種に祝福を贈っていた
イヴは重力の優しい引力に身を任せ、ゆっくりと海の底へ沈んでいった
イヴに奪われた無数の遺伝子は、イヴの体内で急速に解析され、変化した。どの新しい瞬間にも、イヴは「旧人類」という種族の無数の意義を垣間見ることができた
イヴは全てを理解しようとした。例えば最初に出会った人間の感情は「恐怖」。そしてイヴを生み出した男……扉を出るよう促し、進化を求めさせ、名前をくれた男、ヘインズ
あの時のヘインズの表情も、イヴはようやく理解できた
あれは、熱狂的な「興奮」
「興奮」
突然、大波が押し寄せた。波には馴染みある同類の気配がした――この時、遠方から来た1隻の船が孤島の近くで沈没していた。その船からパニシングの気配が漂っている
イヴは、更に興奮すべきことに気付いた。孤独な「旧人類」が海へと落ちたのだ
この旧人類は、他のクズたちとはどこか違うようだ
（旧人類の方へ、速く泳ぐ）
旧人類は厚手の戦闘服を身にまとっていた。衣服は、溺れる内に水を吸い込み、人間を深海へと引きずり込む重石となる
パニシングの目を通して見ると、旧人類の体はまるで何重にも糸を巻きつけたように形作られており、微かに光を放っている
これは運命の糸に絡め取られた者だ
これはどこかの世界の投射だろうか？それとも……見間違い？ただ単に、水中でもがくただの旧人類なのだろうか？
（「興奮」して近付く）
どうであれ、この旧人類が持つ情報は非常に豊富だ。味見しない手はない
イヴの手が旧人類の剥き出しの足首に絡みつく。情報を呑み込む必要があるが、パニシングの侵蝕によって、旧人類の皮膚は急速にただれ、真っ赤な肉が露出した
旧人類の足首を掴んでいた手がふと緩んだ。イヴの心に、奇妙な感情が湧き上がる
「惜しい」？
だが、この旧人類がもたらす情報は複雑で、瞬く間にイヴを包み込んだ。たちどころに「旧人類」という種全体に関する解析が進んだ
ぼんやりとした意識の中、多くの旧人類たちの声が耳元に響くようだった。男の声、女の声、年老いた声、子供の声……それは鐘の音のように海底に響き渡った
人々はこう言った
<i>「私の子、あなたは私の大切な宝物」</i>
<i>「君は私の小さな指揮官だ。君が行きたいところへ行き、どんな夢でも叶うことを願っている」</i>
<i>「あなたは私たちの希望」</i>
<i>「あなたは……」</i>
…………
イヴは旧人類の呼びかけから抜け出せなくなった。その温かな感情に……たちまち依存にも似た感覚が芽生えた
そして抑えきれずに、熱を帯びた声で呼びかけた。創造主ヘインズを恐る恐る呼ぶ時とは違い、ただ純粋に、旧人類のように、その呼びかけに返してみたかった
……お母さん<//お父さん>……
突然、体にかかる重力が一気に増し、イヴは旧人類の足首から無理やり引き剝がされた――次の瞬間、イヴは水面から引き上げられ、空中で吊るされていた
▃▇▂▄█▄▄！！！
ガアアアッ！！！
イヴは狂ったように暴れ、水しぶきが海面にはね散った。目の前には海から半身をのぞかせる真っ赤な髪の女がいた。どこか危うさのある整った顔が、イヴにぐっと近寄った
近い▆▆▇▅▂！
だから……どうしてこの島の虫ケラは人間を真似たがるの
何を食べて、何に影響されたら、人間になろうなんて思うわけ？
現実が見えてないようだから、私が教えてあげる……
彼女はイヴを見据え、残忍で嘲るような笑みをじわじわと浮かべた
おチビちゃん、あなたは汚らわしい異合生物なの
！！！
（「恐怖」）
ドスッ――
ヴィラは巨大な旗槍を振りかぶり、異合生物の体を真っ直ぐに貫いた
