Story Reader / 叙事余録 / ER10 アウトフォックス / Story
夜空が無数の破片となって砕け散り、雷鳴のように降り注いだ。ドームの外では、荒れ果てた大地に狂風が吹きすさぶ
黒々と連なる山の尾根は烈火の中で震え、やがて虚空へと沈んでいく
蛇行する侵蝕の狂潮が、赤い災いが染み込む荒地を嚙みながら、濃密な夜へ突き進む。地平線は明滅し、この黄昏と黎明に囚われた大地を支配するのは、岩石ではなく恐怖だ
星々は苦痛の弧を描きながら墜ち、ガラスに反射して無数の幻影となったが、最後には澄んだ破砕音を響かせて終焉を迎えた
破片が肌をかすめ、滲み出た鮮血が雨に混じる。新たに刻まれた裂傷から機体へと至福が流れ込み、彼女は僅かな静けさと揺るぎない確信をその顔に浮かべた
彼女は勝った。それは偽りのドームの下に存在する、唯一の真実だった
人間には欠陥がある。なぜなら人は目標のために生きるのではなく、ゲームのために生きるのだから
それ以外に原動力となるものを持っていない
子供でも知っているわ。ゲームは宿題よりも面白く、指示に従うより人を屈服させる方が面白いってね。ゲームの最中、人は主導権を握ることで、自分の脳を高揚させる
ゲームの刺激とはゲームそのものではなく、リスクを負う快感にこそある
確率がゲームの勝敗を決めるのであれば、そこには賭けるものが必要だわ
確率は対戦するプレイヤーの技術と実力に左右される。勝利の栄光、敗北の屈辱、それ自体が賭けるに値するもの
それがプレイヤーが評価される部分であり、プレイヤーのアイデンティティを確立する唯一の方法だから
人類は大博打に負けた。そうでしょう？あなたたちは、いまだにその事実に向き合おうとしない
黄金時代、最後のチップとして差し出されたのは、零点エネルギーリアクターよ。人類は未来全てをそれにベットした……
……けれどまさかパニシングが、進歩と呼ばれるゲームも参加者も、その他の何もかもを呑み込むなんて、誰も考えもしなかった
損失を最小限に抑え、次の賭け方を選ぶ。常識的にはそう教えるものよ。もっとも、その常識が陳腐なものでなければ、だけど
私は昇格ネットワークを選んだ。昇格ネットワークも私を重視した
それが事実、そうでしょう？
長きにわたる勝負に挑んできた唯一の勝者は、生まれ変わったように、鋭い銀の雨の中をひとり悠然と歩んだ
侵蝕体、異合生物、高濃度侵蝕区域、赤潮……ドームの外に満ちる脈動は、生き残った人間たちの、骨の髄まで刻まれた恐怖を象徴している
だが彼女にとってはきらめく遊園地であり、まだ遊んだことのない新しいオモチャでもある
彼女にはわかっていた。この施設を包囲する戦闘機の中で、パイロットたちが計器の警告表示を見つめながら、攻撃の準備を整えているのを
そして、空中庭園の武装勢力は、深紅の大地と空を支配しようとなおも渇望していることを
彼らはまもなく、それぞれの運命に直面する
<size=28>リリスは、ガラス片が次々と肌をかすめ、皮膚に祝福を刻んでいく感触を楽しみながら、自らが行使する無上の力を脳内に思い描いていた</size>
いつの世も、天国で仕えることを拒み、地獄で王となることを選ぶ者がいる
この崩れ落ちた小さな世界で、彼女こそ唯一の支配者だ
