Story Reader / 叙事余録 / ER08 追憶のピリオド / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER08-25 EX-誕生日

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1、2の……

3

銃弾が飛び出し、廃墟を徘徊する侵蝕体に正確に命中した

報告、後方の残存侵蝕体の掃討完了

了解。怪我人はどうだった?全員掩体の下に連れていって、信号を残しておいたが、見つけたか?

見つけた。皆、大した怪我じゃなかった。緊急治療は済ませてるよ

バンジは後ろを振り返った。数名の負傷した構造体が整然と「並べられて」おり、それらは皆目を閉じていた

心の準備はしていたものの、初めて目にした時は、一瞬で目が覚めたような気がした

シュトロール、次からこういうのは……

そうだ、そのままもっと俺の位置に近付いてきてくれ。途中でお前に片付けてもらいたいことがまだ残ってる

また悪趣味な仕掛けをしてたら、あなたとの任務を拒否するってクロム隊長に申請しておくよ

生意気言いやがって、隊長がいるから何だ?スカラベには指揮官もいるんだぞ

それにただの簡単な後始末だ。お前はもっと体を動かせ

「簡単な後始末」……?それってこの前みたいに、元恋人同士の構造体を会わせて、僕に1時間も喧嘩の仲裁をさせたようなこと?

戦闘より喧嘩の仲裁の方が楽だろ?それで思い出したが、あの変なカップルが後でお前に苦情を言ったらしいな?本当か?

……シュトロール

わかったわかった。今度から気をつけるよ

今日はこれが最後だ。さっきの場所にまだちょっと後始末が残ってるが、俺はもう遠くに来てしまったからな。お前に手伝ってもらうしかない

……わかったよ。あと、偵察兵は僕なんだから、今度からは僕を先に行かせてよ

ああいいぞ、お前がどんな厄介事を残そうと俺は文句を言わん

ブツッ――

バンジはそのまま通信を切った

彼は周囲の支援員に連絡し、掩体の下にいる負傷者の保護を任せたあと、シュトロールの位置へと向かった

だが歩くほどに違和感を覚えた

シュトロールから「前進せよ」の信号を受け取り、道端に倒れている侵蝕体の残骸も目にした。だが周囲は静まり返り、再びシュトロールに連絡を取ろうとしても応答がない

そのうちにシュトロールの位置情報と重なる場所にやってきたが、誰の姿も見えなかった

そこには、地面にキャンディがひとつだけ置かれている

……

シュトロールがいつも持ち歩いてるキャンディだ

彼は身を屈め、その小さなミントキャンディを拾い上げた

一体何なんだ……

キャンディを手の平で転がした時、突然キャンディの表面に赤く光るものが見えた

しまった――うっ!!

ミントキャンディがバンジの手の中で軽く「爆発」し、彼は狼狽して後ろにひっくり返った。電流が機械アームを伝って流れ、腕全体がしばらく痺れていた

あんなもんに引っかかるのかよ?

背後から歩いてきたシュトロールがバンジを立ち上がらせた

……シュトロール!

お前、あまりにも警戒心がなさすぎだ。もし本当に敵が仕掛けた罠だったらどうするつもりだ?

侵蝕体はこんな罠を仕掛けたりしないだろ。ましてやこれはあなたがいつも持ってる――

ふいに「ミントキャンディ」から機械的な歌声が流れ始めた

「ミントキャンディ」

「Happy Birthday to You→Happy Birthday to You↗Happy Birthday to You↘……」

……?

なんだ?「想定外」みたいな顔して。忘れたのか?今日はお前の誕生日だろ?

……

改造を受けて以来、バンジは人間が祝う「誕生日」などないものだと考えていた

でも、起動日は――

クロムが言っていた。改造前にバンジは重傷を負い、一部の記憶データが深刻な意識海の偏移を引き起こす可能性があったため、そのデータは改造時に封じられたと

彼は改造日の出来事を覚えていない。カムイとシュトロールも、簡単に説明しただけだ――難民の避難支援中に爆発に巻き込まれ、クロムたちによって運ばれたと

トンプソンや他の仲間たちの「消失」は、ピースが欠けたパズルのようだった。あの任務で多くの仲間が落命し、シュトロールも起動日について一度も触れたことはなかった

シュトロールはバンジの「誕生日」を祝ってくれる最後の友人なのだ

ほら、誕生日プレゼントだ。ぼんやりするなよ

シュトロールは格闘用の刀を差し出した

うん……ありがとう

へえ、珍しいじゃないか。お前が「気持ちだけもらうよ」って言ってた頃が懐かしいぜ。人は変わるもんだな

……はは……

バンジは困ったようにうつむいた

よし、じゃあ装備を片付けて帰るとするか。前方の侵蝕体は俺が全部片付けておいた。「後始末」はないから安心しろ

シュトロール、どうしてまだ僕の誕生日を祝ってくれるの?

シュトロールは頭を掻いた

「どうして」って難しいことを……強いていうなら、お前がまだ若いからか?

えっ?

改造を受けるってことは、お前の時間が止まるようなものだ。その後、どれだけ長い時間がすぎようと、機体を変えない限りお前はずっとそのままで変わることはない

だが、それでもお前が成長し続けることを望む人がいる――お前が積み重ねてきた記憶データを持って……あー、なんだかカユくなることを言っちまったな

……

シュトロールは自分の発言にブルッと身震いし、手をブンブンと振って歩き出した

行くぞ。任務が終わったら報告を提出しなくてはならん。申請もしておく。次にお前と一緒の任務があったら、お前の要望通り先頭にしてやるさ