Story Reader / 叙事余録 / ER07 雲郷に潜む影 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER07-11 仮面舞踏会

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凍りつくような北風が吹きすさび、広い格納庫のゲートを通り抜け、停泊ドックの金属の壁の間に反響していた

だが先ほどの激しい戦闘で、その空気すら焼け焦げていた

凄まじい攻撃だけど、動作から動作への連携はぎこちない

構造体というより……既定の行動パターンに従って戦っている機械のように見える

どこかしっくりしない感覚は、アレクセイが見せたギャップと同じように奇妙な印象だった

交戦後、都市に入ってからずっと感じていた小さな違和感がようやくひとつに繋がった。急速に加速する混乱の背後で、姿なき介入者は仮面をつけ、ついに表に現れた

指揮官、さっきの……あの機械モデルは、何か変です

「彼」は、リーの外見とおおよその攻撃方法を模倣しているだけに見える。しかしリーをよく知る者なら、その模倣が表面的なものにすぎないと気付いてしまう

はい。「彼」はリーさんの見た目と、おおまかな攻撃方法を模倣してはいますが、機体の他のデータはまったく異なっています

まるで……どこかで超刻機体を目にしただけで、リアルタイムデータを参考にすることなく、急ごしらえでこの姿を作り上げたかのようだ

このようなやり口をどこかで見た覚えがある。だが……彼は一体どこで超刻機体を見たのだろう

難民たちを一旦落ち着かせ、外の状況を含英に確認しようとした思った時、当の彼女がまっすぐこちらに向かって歩いてきた

ここに連れてこられた際、機械体は政務庁の入口で暗号キーを長々と入力して、扉を開けていた

含英を疑いたくはないが……もし含英がヴェロニカに寝返り、彼女たちが手を組んでいるのなら、ここも安全ではない

私もそのことをお話したくて……実は、ここの暗号キーはアレクセイが教えてくれたんです

交渉中に見せたアレクセイの奇妙な行動を唐突に思い出した。思わず一歩後退り、隠していた銃に手を伸ばす

あなたの心配はわかります、指揮官。実際、私も驚いているの

こちらの不安を理解して、含英は目を伏せると端末で映像を再生し始めた

緊急事態です。どうか私を信じてください。私が正気でいられる時間はそう長くありません

宇宙船停泊区の3C格納庫です

どうか、ヴェロニカにこれ以上罪を重ねさせないでください

……完全にあなたを信じることはできません

すみません、説明の時間がありません。私もいつまで正気でいられるか……政務庁入口の暗号キーをお伝えします。周辺に伏兵はいません。あなたもすでに探索してるはず

暗号キーは……

映像内のアレクセイは、自分との交渉の時に見たアレクセイとはまったく様子が違っていた

確信は持てませんが、「アレクセイ」は、何者かに身体を利用されているような気がするんです……

ええ、以前のアレクセイは「機械モデル」と似た印象を受けました。そして……

アレクセイに煽動させたり、リーの姿を利用してこちらを混乱したことは、どちらも状況を改善しようとしている他者の努力をぶち壊す試みらしい

あらゆる不可能を排除すれば残ったものがどんなに奇妙でも、それが答えなのだろう。更に言えば、この攻撃手段はどこか見覚えがある……

しかし、予想外の事態が起こりました。例えばあの……「皇帝」と名乗る者です

しかし、彼はこのことを予知していたようなのです……あるいは、推演やシミュレーションは彼にとって非常に慣れたものなのでしょう

あの……万世銘に現れた「皇帝」と名乗る「実験体」なのだろうか?

それは……シュルツのことですか?

はい。九龍で私の傍らにいたあの機械体、彼のコードネームは「皇帝」です

あっ、すみません……色々と特殊な理由があって、これ以上詳しくお話しできないんです

含英は申し訳さそうに微笑んだ

でも私の推測が正しければ、万世銘に現れたあの特殊コードはシュルツのものです

最後に聞いた情報では、曲様が彼を連れていったと……彼はプログラムのコンパイラに精通しています。恐らく十中八九、バックアップデータを残しているでしょう

実は……彼は普通の覚醒機械とはいえないようです。具体的に何が特別かは、私も詳しく知りません。だから彼がアレクセイを操っていたとしても、意外ではありません

全ての人を憎んでいるからです

背後の黒幕が「皇帝」であろうとなかろうと、「誰かがこの全てを操っている」という前提で推論すれば、全ての異常を説明できそうだった

交渉中のアレクセイのわざとらしい時間稼ぎも、反乱軍にこちらの言動を誤解させたのも、彼らが襲撃するように仕向けたのも……

「あのアレクセイ」は、わざとヴェロニカの怒りを誘っていたのね

ヴェロニカが唯一信頼している人間のアレクセイが、殺されかけ体中を負傷した姿をヴェロニカに見せれば、彼女がどんな反応をするかは容易に想像できる

ヴェロニカは騙されているんだわ……いけない、彼女を探さなければ

何とか試してみます。機械体は同胞をひとりたりとも見捨てません

彼女は穏やかな笑みを浮かべた

私は本来なら、今もポッドで眠り続けていたでしょう。でも……同胞たちが、諦めずに私を目覚めさせようとしてくれたから、今ここに立ってあなたと話ができるのです

ヴェロニカも……同じです。彼女が私の言葉を聞き入れるのは難しいかもしれませんが、一縷の望みがある限り、私は諦めません……

彼女は本来、憎しみの薪になるべきではなかった……この災厄を作り出したのは彼女じゃない、別の誰かだわ

含英の眼差しがキッと鋭くなった

含英(ガンエイ)

「皇帝」は教会に背いただけでなく、九龍城をも崩壊させるところでした

今も彼は機械体を焚きつけ、人類への憎しみを煽り立ています。そのためなら、同胞の命を犠牲にすることさえも厭わずに……

彼は同胞を欺き、全ての人を欺きました。彼は……その代償を払わなければなりません

女性機械体の視線は霧を突き抜け、闇に潜む影をまっすぐに捉えた

穏やかさの中に育まれた決意は、どんな剣よりも鋭い

含英(ガンエイ)

どうするか決まったら、善は急げね

彼女は振り返り、うっすらと微笑んだ