宇宙船停泊区3C格納庫
アレクセイから伝えられた長い暗号キーで政務庁のメインゲートは簡単に開いた。政務庁の長い廊下を抜けると、そこが宇宙船の停泊区だった
十分な空間を確保でき、捕らえた人々を監視しやすくするために、ヴェロニカはこの場所を選んだのだろう
天井から吊り下げられた宇宙船の胴体は白黒の断熱タイルで滑らかに整っている。まるで博物館で丁寧に保管された展示品のようだ
厄災のせいで、地球軌道と天航都市を往復するはずだったこの「駄馬」は、その輸送の使命を果たす機会がないままここに留まっている
ヴェロニカが巨砲として使う加速軌道は、この100tを超える宇宙船でも光速に匹敵する初速を与えることが可能だ
隣接する停泊ドックには同型の機体が更に多数あり、じきに無限大の質量を伴って、環状ドックに咲く鋼鉄の花――空中庭園へ向けて発射される
ここだわ……
含英は薄暗いメンテナンス通路の中を、3C格納庫に向かって進んでいた
この都市の住民は皆、肉体を持つ者であろうと鋼鉄で作られたものであろうと、血塗られた交渉の駒として扱われるべきではない
グレイレイヴンは調停役としての務めを懸命に果たそうとした。彼女はこれ以上、「傍観者」のままで戦争の勃発を待つことはできない