Story Reader / 叙事余録 / ER06 薄明射す闇塔 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER06-12 失われた縁

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臨時キャンプ

新しい任務を割り当てる小会議が終わったあと、ある人物が目の前に立ちはだかった

[player name]、ちょっと話せますか?

トロイの呼びかけを聞いて、隣にいたルシアも足を止めた

……

頷いてルシアに合図し、トロイとともにキャンプの片隅へと向かった

ええ……少し……その……うーん……この後のことなんですけど……

トロイの手は言葉に合わせて落ち着きなく動いていたが、しばらくすると動きは止まり、そのままストンと手を下ろした

ふぅ……もういいです

あなたがそんな性格だなんて思ってませんでした。グレイレイヴン指揮官は人の気持ちがわかる、話しづらいことも打ち明けやすいと聞いていたのに

……そうですか。では回りくどい言い方はやめます。ブリギットや、あなたたちはアンジェからどんな情報を得たんですか?なぜかブリギットは一日中私を避けてるみたいで

アンジェに尋……いえ、話を訊いてみたんですが、彼女もわからないと言うんです。嘘ではなさそうでした。となると問題は、彼女が持ち帰った資料にあるはず

答えが得られないと見て、トロイは会話のテクニックを試してみることにした

正直いって、あのストレートな性格ときたら……ふっ……

話し始めたかと思えば、彼女は何かを思い出したように力なく笑い、手の平を広げた

あの向日葵みたいな人が、暗い方向に頭を向けることもあるんですね……で、資料には何が書いてあったんです?

トロイはその答えの中にある含みを理解し、少し黙り込んでから、ぼそっとひと言呟いた

ブリギットの世界では、太陽は沈まないと思っていたのに

あ……どうも、ブリギット支援部隊隊長。トロイです、よろしく

こちらが言う前に、トロイはあの時の言葉を繰り返した

ええ、覚えてます。あなたの言いたいことはわかる。確かに彼女とはそれほど親しくありません、少なくとも今の記憶では。でも……感覚は嘘をつきません

目に見えない薄いヴェールを1枚ずつ剥がすような質問によって、尋問の経験豊富なトロイであってもごく普通の会話に導かれている、彼女はそう気付いた

会話の内容が、とっくに彼女の知りたいことから相手の知りたいことにすり替わっている。だが……

それでも構わない。結局相手の知りたいことは、自分も知りたいことだからだ。そう思ってトロイは更に話を広げた

どちらも同じです。ブリギットと鉱井が私に与える感覚は同じで、とても不快です

自分と相手には何か因縁があるのだと、全ての事柄が私に訴えかけてくるのですが、どれだけ記憶を探しても答えは見つかりません

もともと覚えていないだけならそれでもいいんです。どちらにしても毎日を生きるだけでも十分大変なんですから。ただ……

トロイは体を横にずらし、少し離れた場所で忙しそうに動いているブリギットに目を向けた

ブリギットがこちらの視線に気付いたようで、一瞬体を強張らせたが振り向くことはなく、ぎこちない素振りで遠くへと歩いていった

あなたは、いつドカン!と爆発するかわからないような地雷になりたいと思います?

正直、過去の自分がどうだったかはどうでもいいんです。でも……

トロイは手を広げてルシアの方を示すと、また手を戻した。その意味は明らかだ

ね?爆発した時に爆弾そのものが壊れるのは仕方ないとして、それで周りの人が傷つくのはよくありません

他の人のことはわかりませんけど、これまで多くの経験をしてきたグレイレイヴン指揮官なら、この感覚はよくわかるんじゃないですか?

私はただ、セーフティロックをかけておきたいだけなんです

話そうと心を決めた時、いつの間にか側に来ていた人物に話を遮られた

ねえ、[player name]……そ、それから……トロイも

…………?

[player name]、シェリルのところで進展があったみたいだから呼びに来たの。ちょっと緊急みたいで……その……先に行っててくれれば……

トロイと向き合ったブリギットの言葉は語尾がゴニョゴニョと曖昧になり、そのままふたりは無言で見つめ合うばかりになった

先に沈黙を破ったのはトロイだった。彼女は降参といわんばかりに両手を上げた

はいはい、わかりました。もう訊きません、この話はここまで。さあここから話が展開しますよって感じのドラマのワンシーンみたい、気まずいですって

さあ、シェリルのところへ行きましょう、緊急なんでしょう?

ブリギットの横を通ってキャンプへ向かおうとしたトロイの腕を、ブリギットが突然がしっと掴んだ

トロイ

……?

……あなたは間違ってない

……え?何ですか?

つまり……あなたは、許されないようなことは何もしていない。少なくとも、あの資料には何も書かれていなかった

それだけで、あなたが本当に危険な爆弾なのかどうかを判別できる訳じゃない。けど……

少なくとも今、あなたの体に火薬は隠されてないわ

……そうですか

トロイはそっとブリギットの手を振りほどいた

まあ……いえ、わからないならお好きにどうぞ。では

そう言い残し、トロイはスタスタと立ち去った

…………

……ええ

臨時キャンプ

シェリルのテント

シェリルとノルマンの研究員数人が、設備の周りで忙しそうに作業をしている

シェリルたちが坑道内で無線機を見つけたの。研究員たちの手も借りて、送信機と受信機を改造したわ

何度も調整して、空中庭園の通信チャンネルを受信できるようになったの

忙しなく働く人々と静かな無線機を眺めていると、いつしか意識が別の方へと向かっていた

どうしたの?機器に問題はないし、さっき空中庭園とも連絡が取れたわ。今は向こうが提供したパラメータに合わせて調整中よ。これで通信がぐっと安定するはず

無線機に顔を突っ込むようにして調整していたシェリルが立ち上がり、大きく息をついた

坑道内に正常に稼働している配線があったので、まだ使えそうな電源に接続しました。それが何か?

シェリルの問いかけに答えず、ブリギットを見やった。彼女も最初はその質問にポカンとしていたが、次第に表情が険しくなった

電源、そうか、そうよね。電力があったとして、この設備を動かせるほどじゃないはずだし、少なくともこんな風に機器を安定して維持できるのは妙よね

つまり坑道内には……

ピーッ――

ジジジ――

耳障りな電子音が会話を遮り、歪んだ映像が徐々に浮かび上がった

それを見たシェリルとノルマンの研究員は、持っていた工具を置き、テントを離れていった

君の様子は悪くないようだな。なら、私が予想していたより状況はいいかもしれない

君たちと連絡が不通になったのを確認してすぐ、空中庭園は動いている。工兵部隊がすでに鉱井周辺に到着し、キャンプを設営中だ

我々は鉱井外側の調査を終えたが、状況は楽観できない。ノルマングループから鉱井の図面を提供されはしたが……

……カレニーナが別の方法を試している。これまでの道が使えないなら、新しい道を作るまでだ

鉱井内に君たちの安全を脅かす存在はいるか?

……わかった、少し時間をもらえるか

その時、通信チャンネルに別の声が割り込んできた

??

今、[player name]さんに最も足りないのは時間です。私の提案をご検討ください、参謀総長

ジジジ――

不安定だった映像が更に歪み、もうひとりの姿がゆっくりと浮かび上がった

危機から脱する手助けをしたいと望む者です。初めまして、グレイレイヴン指揮官

工兵部隊も[player name]さんも現状の問題を解決できないようですし、私の提案を聞いていただけませんか?

声が一瞬止まった。彼の焦点の定まらない視線が通信映像を通して、こちらの背後にある坑道を見つめているようだ

はっきりとは見えなくとも、彼の目に宿る探究心や熱意がうっすらと感じられた

実は、ノルマングループが持っている坑道図面は完全なものではありません。実際に地下で作業していたのは黒野ですから

我々の手元には、より詳細で具体的な資料があります。その中のどれかが、支援部隊とグレイレイヴン指揮官が逃げ延びる糸口になるかもしれません

その言葉は傷付きますね。あなたは空中庭園でも名高い重要人物です。我々の間にそんな損得勘定があるはずないでしょう?

もちろん、これは黒野が大変な労力と金銭を投じて得た資産ですから、私が無条件で渡すと言っても契約的な条項が許さないでしょう

ええ、ええ、わかります。その環境はかなりのプレッシャーでしょうね。なに、ちょっとした前置きで雰囲気を和らげようとしただけですよ

ご安心ください、我々からの要求はそう多くありません。ほんの少しのご配慮があれば