Story Reader / 叙事余録 / ER06 薄明射す闇塔 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER06-10 惶惑

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臨時キャンプへ帰る途中アンジェは終始無言だったが、血痕が途切れた崖まで来た時に、彼女は足を止めて言った

……私の助手は、ここから彼らに投げ捨てられました

坑道を片付ける時にもし彼の遺体を見つけたら、私の代わりに彼を埋葬してもらえますか

彼女とその助手の間に特別な絆などはなかった。過去の助手と比べても、彼女にとって彼は単なる人型の工具にすぎない

だが、彼はこんな結末を迎えるべきではなかった

坑道内で見つけた遺体は適切に処理をするわ

ブリギットは冷ややかにアンジェを見つめた。この女性に対していい感情は持てなくても、彼女の願いを断ることはしなかった

……ありがとうございます。やっぱり、あなたたちはいい人ですね

フン、こんな時にお世辞ですか?お世辞より、あなたの目的をはっきり話した方がいいと思いますけど

……

アンジェは再び黙り込んだ

ラボが並ぶ通路へ到着した時、かつてどのラボに教授がいたのか、アンジェにはわからなかった

背後にいる黒野の兵士は悪意をますます露わにし、アンジェは恐る恐る目の前の扉を1枚ずつ開けようと試みた

1部屋目、2部屋目、3部屋目……

アンジェはあからさまに目立つ行動は避けた。彼女が兵士の持つ銃のスピードに勝てるはずもない

ここも違いますね、権限カードで開けられません

アンジェは無表情で黒野の兵士にその悪いニュースを伝え、手の中の権限カードを強く握りしめた

ノルマン研究員の権限カードで開けられるのはいくつかの公共ラボだけだ。しかし、彼女には教授から受け取った権限カードがある

ここに来るまでに、アンジェは2名の兵士がその点を知らない事実について、何度も確かめていた

クソッ、本当にツイてないな、まだ先へ行かなきゃならんのか

湿気の多い環境は、戦闘のために存在する構造体にとってあまり好ましくない

どうして俺たちがこんなクソ任務を……

おい、変な小細工はするなよ

彼は武器でアンジェを押しやって警告した

知ってるでしょう、ノルマン研究員の権限はそれほど高くありません。いくら私が責任者でも、上からはこの権限カードしか渡されていないんです

もう少し、もう少し後ろよ……

私たちじゃ公共ラボしか見つけられない。公共ラボからプライベートラボの端末をハッキングしてみましょう。私は欲しい物を持ち帰り、あなたたちの任務も終わる

ここかしら……いや、もう少し前……

フン

兵士は黙って彼女の話を聞き入れ、歩みを緩めた。彼らは彼女ひとりが前に進み、権限カードで扉を開けようとすることを許し出した

彼らは関節に不快感を覚えていたのだ。防水装備もない黒野の構造体兵士たちにとって、今の環境はあまり快適とはいえないものだった

【規制音】、防水装備なんか持ってくる訳ないっての。干上がった坑道が湿っぽいなんて誰が思うんだよ、【規制音】……

ここよ!

アンジェは冷静に立ち止まると先ほどと変わらない動作で、権限カードが使えるか確かめるように、壁にカードを押し当てた――

ビーッ――ビーッ――ビーッ――

彼女がカードを押し当てた瞬間、警報が鳴り響き、赤外線レーザーライトがふたりの黒野の構造体に狙いを定めた

【規制音】!

軋む関節を気にすることも忘れ、兵士はすぐさまアンジェに武器を向けた

しかし時すでに遅く、冷たい防弾性の金属扉が彼らの目の前でガッチリと閉まった

さようなら

無情にも、扉の向こうから銃火器が金属にぶつかる音と、その直後に地面に倒れ込んだような鈍い音が2回響いてきた

彼女は振り返らなかった

あれから、坑道内には重い足音だけが響いていた

黒野の兵士……秘密のラボ……ここまで通ってきた坑道……

心が落ち着かないのはブリギットだけではない。コンスタンティン鉱場に入ってから、トロイも少し不安定になっていた

なぜかはわからないが、彼女はここでの全てをよく知っているように感じていた

それは「既視感」ではなく、「一度経験したことがあるような感覚」だ

確かに君はコンスタンティン鉱場から救い出されたが……過去の経歴については何もわからなかった

どうして君が当時ノルマングループに所属していたのか、詳細はわからない。ただ、報告書にかつてノルマングループのコンスタンティン鉱場で働いていたとあった

それに……

レオナルドは、時代遅れの紙の報告書を手元に引き戻すと、いつもの皮肉っぽい態度になった

俺は、今の君はとてもいい感じだと思うけどね、トロイおば……姉貴

ちょっと

それで、姉貴は本当にコンスタンティン鉱場の開放任務に参加しないといけないのか?

……ええ

トロイは窓の外に目をやり、珍しくぼんやりとした

なんとなく、あの場所に行かなきゃならないような気がするの

どうせ人をやるのなら、私が行く……ちょっとボス、従業員が自主的に仕事を申し出てるのよ?もう少し喜んだらどうなの?

何を喜ぶんだよ、追加の外勤手当を支払わなきゃならないことをか?

とにかく、任務は私に任せて。他のことは自分で解決するから。じゃあね

彼女がタイムトラベラーでもない限り、彼女の乏しい経歴を合わせて考えると、残る真実はひとつだけ――

彼女とコンスタンティン鉱場との間には何か因縁がある