侵入してきた全ての異合生物がついに撃退され、町を攻めようとしたオブリビオンらしき敵も全滅した
町の建物が一部壊れていたが、大部分は守り抜くことができた
酒場……酒場さえ無事なら、俺は生きてられるってもんだ!
【規制音!】お前、なんてこと言いやがる!俺様が丹精を込めて育てた麦ちゃんが……全部燃えたんだぞ
町の外の麦畑は異合生物から出た炎のせいで、めらめらと激しく燃えている
問題ねえさ。ほとんどの麦は収穫してたからな……残りは……
マックスは焦土と化した麦畑へと歩き、まだ熱を持っている灰をすくい上げた
この灰がまた、肥沃な土地の養分になる。来年はもっと収穫が増えるぜ
この町も同じだ。生まれ変わりを繰り返して、灰から何度だって蘇る
マックスは血だらけのコートを整えると、ヴィラと粛清部隊の前にやってきた
空中庭園の皆さんよ……今回、あんたがたに借りができたな
お互いさまね。あなたたちがいなけりゃ、私たちだけじゃあいつらを止められなかったし
ああ……確かに
ヴィラはニヤリとしながらマックスを見た
でも、どうしてもその借りを返したいってことなら、この人間を返してくれないかしら
ほう、人を見る目がある。こいつは町で一番のバーテンなんだがな
町にひとりしかいないバーテンダーだけどな!ウヒャヒャヒャ!
とはいっても……指揮官はここじゃなく、もっと必要とされる場所でその力を発揮すべきだろうな
じゃあ商談成立ね……って、今、どこにいるの?
ヴィラは辺りを見渡し、最後まで戦闘を指揮していた「バーテンダー」の姿を探した
突然、21号の叫び声が響く
隊長!!指揮官の心臓……止まる!!
どいて!道を開けて……!
ヴィラは珍しく慌てていた。限られた条件下の環境では、酒場の中で検査を続けるしかない
赤髪のお嬢さん……どうかこの人を助けてやって……
そうだぜ姉貴、ちゃんと治してくれよ!何をしてるんだかさっぱりわかんねぇけど……
【規制音!】
うるさい!イサリュス、全員追い出して!
イサリュスはヴィラの命令を聞くつもりはなかったが、渋々粛清部隊とともに、見物人たちを酒場から追い出した
隊長……指揮官どうなる?死ぬの……
ナイゼルを見くびってたわ……状況は思ったよりやばいわね
グレイレイヴン指揮官……私の声が聞こえる?
なんとか意識は保っていたが、まったく声を出せない
視界がぐるぐると回転し、ヴィラの声もぼんやりと遠い場所から聞こえるようだ
ノクティスとリンクしているせいね……ノクティスの絶望感に影響されて、こちらの「毒」の回りが早くなっている
あのバカ、一体何してんのよ!
何て言ってるの……
21号は逆元装置を立てて、言葉を聞こうとした
指揮官……ノクティスに深層リンクしたいって
死ぬ気……?深層リンクすれば、あなたの意識が彼と完全に結びつく……もしあいつが少しでも怯めば、あなたは確実に死ぬわよ
そう……彼を信じることを選びたいのね。確かにあのバカはやることなすこと考えなしの脳筋だけど、唯一、根性だけは誰にも負けない
ヴィラは少し苦しそうに笑ってため息をついたあと、覚悟を決めた
いいわ、じゃあやってあげる……このおバカさんふたりが、果たして奇跡を起こせるかしら