輝ける行進者は自分が劣勢になるとは微塵も考えていなかった。火力も機体性能も、分析においても、相手より優れているはずなのだ
たとえナナミに命中しても次の攻撃で、計算不能の角度からカウンターを見舞われる――それはどんな戦術回路でも計算、予測不可能な動きだった
なぜだ……!
ここでナナミを倒さなければ、方舟計画は完全に失敗する。同胞たちから託された希望も全て無に帰してしまう
彼は初めて戦術回路を停止し、自己判断だけでナナミと戦い始めた――ナナミが乗る機械にミサイルを撃ち込まれながら、拙い突進を繰り出し、やっとナナミとの間合いに入った
光の剣と灼熱のチェーンソーが激しくぶつかり、その光が宇宙を明るく染める
人類のために……それに機械のみんなのために、ナナミは負けない!
少女はその言葉で本当に力を得たようで、輝ける行進者の自慢の怪力をもってしても押し返せない。彼女のチェーンソーが回転し、自分の刃より更に眩しく輝き出した
戦術回路からの警報音が耳を突き刺す。極めて危険な状態だと告げているのだ
「戦車」、仲間のために道を切り開く
輝ける行進者は手を伸ばし、ナナミが乗っている機械をガッと捕まえた。彼の胸の輝ける殲滅砲にエネルギーが集まり始めた。この攻撃で、必ず敵を貫く――同時に彼も自爆する
……このっ、わからずやぁぁぁ!おりゃぁぁぁあ――!
殲滅砲が発射される寸前、ナナミはコクピットから飛び出すと、輝ける行進者の頭を両手で引っ掴み、気合とともにガツンと頭突きをした
その瞬間、輝ける行進者の電子脳に無数のプログラムが流れ込み、彼は初めてセージ様の絵を見て啓蒙を受けた時のことを思い出した
まるで体の制御権を失ったように、殲滅砲の光が消え、ふたりはゆっくりと地面へ滑り落ちた
ぁたたた……死ぬほど痛いよ……
ナナミは頭をなでながらため息をつき、輝ける行進者の頭も同様になで出した
でも、あなたも痛かったね?
膝をついていた輝ける行進者はびっくりしてナナミを見つめた。その小さな手が触れたところから、不思議な力が広がり、彼の冷たく空っぽな部分を温めた
ナナミ……貴殿は、セージ様なのか?
はい、彼女こそ、私たちがずっと探していたセージ·マキナです……
潜入から帰還したハカマはゲシュタルトが見せてくれた少女にゆっくり近づき、自分の記憶の中にある少女の姿と重ね合わせた
セージ様、やっと……やっと会えましたね