Story Reader / 叙事余録 / ER01 遥かなる方舟 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER01-13 輝く方へ

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研究に没頭する研究員が不在なため、科学理事会の実験室はガランとしていた。だがやがて、ここの雰囲気とは場違いなふたりの女性が姿を見せた

年上の女性が頷きながら机の上に手を置くと、そこに浮かび上がっていた月下美人のホログラムがゆっくりと消えた

これがあなたの願いなの……

口調こそ質問風だが、イシュマエルは別段訊ねるつもりはないらしい。ただ既知の事実を述べているだけのようだ

うん、それはナナミが決めた約束なの!

約束……

そう……じゃああなたと彼女の約束を、私が実現してあげる

どうか指揮官のこと、お願いします……

全てを決意したようにナナミはとても真剣な顔で、胸の前で手を合わせた

ナナミは……とっても大事なことをしにいかなきゃいけないから

輝ける行進者はコルベットの船首に立ち、目の前の空中庭園を見つめていた。その顔から表情は読み取れない

ハカマの侵入から……300秒経過

彼はコルベットの安全エリアにいるハカマを横目で見た。彼女の意識はまだ深層潜行状態だ

方舟計画の作戦規定に則って考えれば……ハカマの侵入は失敗だと判断できる

コルベットの航行タイマーを設定――目標は空中庭園。1800秒後に自分が戻らなければ、このコルベットごと空中庭園に衝突させる

成功の可能性は低いが、人類にダメージを与えられれば、教会の次の進攻のための時間を稼げる

全てを設定後、輝ける行進者はスラスターを起動し、光を帯びながらコルベットの疑似重力を脱して空中へと浮かび上がった。同時に、彼の両手の刃が灼熱の光で輝き出す

方舟計画の次の段階に移行、「戦車」――輝ける行進者、襲撃開始……!

まさにその瞬間、突如としてコルベット内に警報音が激しく鳴り響いた。何かが極めて速いスピードで接近している

空中庭園の人類に見つかったか……やってやる!

コルベットのロケット砲から砲弾が発射された。しかし旧式の砲台では、その彗星のような光を捉えられない。その光はより一層スピードを上げている

くる。回避不能!衝撃に備える!

その彗星はコルベットの外殻を貫き、甲板にぶつかった

輝ける行進者はその正体を凝視した。それは自分と同じほどの大きな機械体だったが……なんとその上にひとりの少女が乗っている

空中庭園に関するデータベースに、あんな構造体の資料はなかったはず……いや、構造体でなく、我々と同じ機械か?

目の前の少女は攻撃を仕掛けてこなかった。彼女は巨大な機械から飛び降り、遠くにいるハカマを見つめた

ハカマ……未来で見たのと同じ。機械教会のみんなは、やっぱり間違った方向に行っちゃってるんだ

もし未来が変わらなければ、機械と人類の無数の結末みたいに、最後までお互い、お友達にはなれなかったかも

少女の顔に寂しそうな表情が浮かんだ。しかし輝ける行進者はその表情を理解できない

人類と友達に?お前も機械体だろう。人間が我らを対等に話せる存在などと思っていないことくらいわかるだろう?やつらにとって機械はただの道具と手段にすぎんのだ

パニシングのせいで……我々の同胞は命と自我を失った。さて、その災いを起こした元凶である人類はどうだ?我らを化け物扱いして、殺戮の限りを尽くしただけだ

少女は彼の話に反論せず、真剣に頷いた

うん、そうだよ。そのせいで人類と機械の間で全面戦争が起きちゃう。お互いの手がずっと武器を握りしめてたら……握手できるタイミングはずっとこない

でも今なら、まだ選択するチャンスが、そんな未来を変えられるタイミングがあるの……

言われなくとも……機械教会もその未来を変えようとしている。人類と機械の戦争が避けられない未来なら、今この瞬間に人類という脅威を葬り、全同胞とこの地球を離脱する

輝ける行進者は全身の武装を展開した。それらは全て殺戮のための牙だ

我は他の人間を殺すために人類の手で作り出された。使命はいたってシンプルなものだった……人間同士だろうが「友達」にはなれないのだ。そんな考えはただの夢物語だ

みんなが覚醒し続けているのと同じように、人類も自ら変わって、みんなで全てを変えようと努力してる。その力が導く未来は、ゲシュタルトでも計算できないはずだよ

それはお前の演算結果か……?

少女はニコッと笑い、首を振りながら答えた

ううん、これはナナミの「信念」

「信念」、悪くない名詞だ。記録しておこう

ナナミ……それが貴殿の名前か。それぞれが信じる未来があるなら、力比べをするしかない。どちらが未来へ通じる力を持っているのかを!

輝ける行進者は全演算力を戦術回路に集中させた。目の前の少女はか弱く見え、傍らの巨大な機械も自分ほどの武装はない。だが彼はなぜか彼女に脅威を感じていた

我の全身、全力をもって潰す!

ナナミも、全力で止める!

それぞれのスラスターから炎が吹き出し、ふたつの光が激しくぶつかりあった