Story Reader / 多次元演繹 / 呪詛の潮声 / Story
耳にこだまする潮の声が、今はもう聞こえない
目を開けると、世界は一新していた
広がる草地にまばらに淡い赤色が広がっている。名も知らぬ植物が木の根元に巻きつき、新芽が土から顔をのぞかせている
コマドリはさえずり、辺りにはしっとりと芳香が漂っている
これまでにないほど、自分はこの世界の一部だとハッキリ認識できる
何かが自分を待っているような感覚がある……
一歩踏み出し、密林の奥深くへと向かった
その直感は間違っていなかった
……
いらっしゃいましたか
赤い瞳の少女が微笑みかけた
彼女は古樹の陰に寄りかかり、手には摘み取ったばかりの鮮やかな赤い花を握っていた
よかった、名前を覚えていてくれたんですね
嬉しいです……もうお別れの言葉を言わなくていいんですね
あなたの選択によって、世界は本来あるべき姿に変わりました
まさかあなたが私の予想を遥かに超え、この世界の本質に触れるなんて
ご心配なく。何も悪いことではありません
初めにお話したことを覚えていますか？
何の保証もできない世界ですけど、私にはひとつだけ保証できることがあります
それは、あなたの旅がどんな終わりを迎えようと……
私は必ず、最後まであなたと一緒にいます
……そうです
ある意味では終点です
おめでとうございます。あなたの旅はここで終わります
でも、私の使命はまだ終わっていません
赤い花を……まだ世界の隅々まで咲かせられていない
私はこの「新生」を象徴する花の種を、目の及ぶ限りの場所に蒔こうと思っています
あなたもここで歩みを止めたくはないでしょう？
これから……最後までお付き合いいただけますか？
ふふ……そう言ってくださると思いました
ふふ……もしあなたが本当に嫌なら、私の前にはいないはず
これはあなたが選んだ結果であり、あなたと私が交わした契約です
立ち上がった彼女に手を引かれた
私たちは、あなたが望む世界でずっと旅を続けるのです
