Story Reader / 祝日シナリオ / 縁を紡ぐ糸 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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あの日の誓い

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戦闘はあっけなく終わり、宮司は大敗を喫した

香火を盗んだとはいえ、縁結びの姫は本来戦闘を司る神ではない

勝利を決定づける一撃が放たれると、黒狐はほぼ全ての戦闘能力を失いかけていた

黒狐は法術で分身をセレーナに向かわせ、本体は人間の姿に戻り、雲謁の方へ駆け寄った

自分は雲謁の前で、余計な動きをしないように努める

セレーナは片手でタクトを前に伸ばして分身を押さえつけ、もう一方の手で青い光を描きながら宮司を拘束した。それに合わせて流れるように歩み寄り、彼を地面に押さえつける

やはり駄目でしたか……降参です

宮司は少しもがいたが、最終的に諦め、深く息を吐いた

焼くなり煮るなり、お好きになさってください

ただし、全ては私がひとりでやったこと。どうか雲謁を……そして縁結び神社の信者たちをお許しください

その言葉を聞き、思わずセレーナと目を合わせた

すみません、あなたの仰ってる意味がわからなくて……

ここまできて、まだ私を弄するのですか?

願力でその身を築き、法力は神に通じ、並外れた風格……これが人間界における天道の化身でなければ、誰だというのです?

宮司はもがきながら姿勢を正し、壁に寄りかかって深く息を吐いた

私はてっきり……貴殿がこの姿となって現れたのは、私の行いを黙認しているからだと思い……

神社の前で問うたのは、神と人間の間に永遠の絆が存在するのかどうかを知りたかったためです。もし存在するのなら、私の卑劣な行いにも意味があると思ったのです

垂雨……?一体何を言っているのですか……

宮司は狐を一瞥し、返事はせずに己を嘲るように笑うと、こちらに視線を向けた

貴殿の返答を聞き、神にも一途な初心があること――そして縁結びの姫に代わって神婚を遂げる前に、最後の僅かな時間を大切にするよう言われているのかと……

まさか、天道と縁結びの姫の間に神と人間のような隔たりがあってもなお、互いに愛し合うことができる……だからこそ口を出さず、介入しないと?

……

まだ曖昧な部分があるものの、ここまで聞いて宮司の目的を理解できないわけがない

ふたりで同時に、背後の狐を振り返った

……?

な……なぜこちらを見るんです?何かありましたか?

その言葉に対し、宮司は何かを理解したように苦笑いを浮かべている

まさか、私の考えすぎでしたか?

その言葉を聞いた瞬間、狐でさえも何かがおかしいと薄々気がついたようだった

もはや立場や細かいことなど気にしていられず、彼女は宮司のもとへ駆け寄り、焦りと不安を隠せないまま傷の手当てをし出した

皆、何を話してるんですか?一体どういうこと?誰か教えてくださいよ……!

……

セレーナは一瞬ためらい、複雑な表情を浮かべたあと、口を開いた

宮司が神位を奪ったのは、香火を欲したからではなく……雲謁さんが天道と結婚することで、悪い結果を招くことを懸念したからです

ここまで話したところで、あることを思い出してセレーナを見た。どう答えたらいいのかわからないのか、彼女は言葉を飲み込んでから軽く下唇を噛んだ

私とコンダクターが力を尽くしてあなたを阻止できたとしても、戦いの余波による被害を完全に防ぐことはできません

ですが、舞台を変えたらどうでしょう?外界と隔絶された舞台でなら……どれほど熾烈な劇を上演しようとも、誰ひとり巻き込むことはありません

花ですら、大切な人のために雨風を遮りたいと願うもの……コンダクターコンダクターはもう、あまりに疲れすぎています

舞台裏で終わらせられる物語なら、わざわざ表舞台に出す必要はありません。結末はもう決まっているのですから……

…………

!!!

そう……なんですか?

あなたは、本当に……

ようやく落ち着いた宮司は雲謁の様子を見て、苦笑いのままため息をついた

何十年もの間、婚姻や縁について誰かと話す度にあなたはいつも自信満々に語っている

人々には「慎重に、真剣に、よく考えなさい」と教えている

しかし、あなたは本当にそれを理解しているのですか?天道と結婚する代償を知っていますか?これからの生活については?

も……もちろん!

もちろん、あなたは何も考えていないのでしょう。そうでなければ、私の考えがわからないはずがない

宮司は深くため息をついた

!!!

ご……ごめんなさい。あの時、私はただ……

宮司は頭を振り、こちらに向き直った

貴殿が天道の化身でないのであれば、伴侶とともに、そして雲謁とともにここを去りなさい

できれば、神社にいる他の妖怪たちも

神婚の儀は遂げられなかったのです。天罰がすぐに下るでしょう。その時……

そ、そんなのイヤ……!できる、私は天道と結婚できますから!

イヤだ……垂雨……

……はぁ。あなたを見ていると、少し心配になります。この縛りを解いて自由にすることがいいことなのか、悪いことなのか

もし私の計画が失敗した時、その代償としてあなたを犠牲にしてしまうのなら……

するのとしないのでは、何が違うのでしょう?

大丈夫です。天罰が下るのは私ひとりで十分

そ……そんな!本当にそれ以外に方法はないんですか?

宮司は狐の訴えを聞き、無意識にこちらを見たが、すぐに視線を戻した

何かをするには、代償を払わなければならないのです。早く行きなさい

セレーナと一瞬目を合わせる――宮司の様子から、互いに何かを感じ取ったことを確信した

垂雨様、天罰を避ける方法があるのなら仰ってください

……

この期に及んで、あなたは……!

……方法は確かにありますし、難しくもありませんが……そこまで無礼を働けません

おふたりは先に行ってください。手遅れになります

……

ええ、貴殿の仰る通りです

自分の一方的な願望で引き起こした混乱は、自分で片付けなければなりません

宮司は頭を振り、ためらわずに口を開いた

方法自体はそれほど複雑ではありません。貴殿が天道の化身でなくとも、その肉体に宿る願力は一般の神々を超えています

もし、貴殿が立場を厭わないのであれば……私の寿命と福運で補い、ここでセレーナ様と式を執り行えば天罰は下りません

私たちの正体が、あなたが思っていたようなものではないことはご理解されていますよね?

貴殿の正体が何であれ、その身に宿す願力は決して偽物ではありません

それは並々ならぬ功徳を積み、数々の偉業を成し遂げた者にのみ現れる本質……でなければ、私が見誤るはずがありません

もしお力を貸していただけるのであれば天罰を免れるだけでなく、雲謁も天道との婚儀の決まりに従う必要がなくなります

そ……それは……

雲謁はすぐにでも頼みたくなったが、ふと自分の発言を思い出した

夫婦というのは、軽々しく演じられる役割などではありません!結婚は……とても大切な、とても神聖な契約なのですよ

紫藤道士と山の君が互いに想い合い、婚姻の祝福を受けたいと願うのは当然でしょう。でも、セレーナと[player name]は……

これまで見ていると、あなたたちはとても親密そうですが夫婦の仲には見えません

そう言って狐は身軽にぴょんと跳ねて台上に上ると、こちらと目線を同じ高さにした

その姿には、物語に登場する縁結びを司る神のような風格がある

あなたたちは、一体どういう関係なんです?

そう――結婚は仲がいいとか、曖昧な仲だからといって軽々しく成し遂げられるものではない