Story Reader / 祝日シナリオ / 縁を紡ぐ糸 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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あの日の誓い

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神社の山道

深夜

深夜、神社の山道

セレーナとともに輝く山道を歩いていると、ほどなくして前方に神社の輪郭がうっすらと見えてきた

周囲も賑わい始め、山道の両脇の木々の間から、あるいは別の分かれ道から、更には空や大地からさまざまな身分の来訪者が現れた

途中、紫藤の法力に気付いた数人の妖怪がセレーナに挨拶をしていたが、彼女もそれにうまく応じていた

更に進んで神社の入口にたどり着くと、誰かが立っていた。彼は仮面をつけ、四方からの来客に落ち着いて応対している

近付くと、その人物の視線がこちらを捉えた

宮司

……

紫藤さん、お迎えが遅くなり失礼いたしました。それで、こちらの方は……

神婚のあとに伴侶と縁を結ぶと伺いましたが、まさかこの方が?

セレーナ

はい。こちらが私の伴侶、[player name]です

宮司

……慈悲深きお方

宮司はそれを聞くと仮面を外し、明らかに気の緩みを抑えて、真剣に一礼をした

宮司

貴殿が今夜お越しくださり、誠に光栄です

宮司

ただ……

セレーナ

何か問題でも?

セレーナは表情を崩さずに質問を投げかけたが、その微細な変化から、彼女が警戒していることを感じ取った

宮司

いいえ、滅相もない。おふたりが今回縁結び神社にお越しくださったことは、大変光栄なことです。疑念を抱くことは決してありません

ただ……今日お会いして、感動を禁じ得なかったのです。おふたりがこれほどの覚悟を持っていること、実に敬服いたします

セレーナ

……どういう意味でしょうか

宮司

……まさか「隔たり」について、お考えになったことがないのですか?

紫藤さんは修行によって、ある程度の成果を収めてはいるものの、その寿命は数百年ほどにすぎません

ですが……伴侶である[player name]さんは願力でその身を築いたのでしょう。法力は神に通じ、風格も並外れたもの。きっと私たちには到底及ばぬ存在の化身なのでしょう

このような隔たりがあってもなお、おふたりが縁結びを決意されたこと、どうして敬わずにいられましょうか?

セレーナ

……

セレーナは黙り込み、僅かに視線を彷徨わせた。相手の問いに返す言葉が見つからないというよりも、何か別のことを思い出しているかのようだった

しばらくしてから、彼女はようやくゆっくりと口を開いた

セレーナ

あなたは、身分や寿命が情の障害になると思いますか?

宮司

浅い見解となりますが……そうでもあり、そうではないともいえるでしょう

ただお訊きしたいのです。予見できる未来において、一方は若く輝き続け、もう一方は老いてゆく。そう考えるだけで私は恐怖さえ感じますが……おふたりはどうお考えで?

セレーナ

……

セレーナはすぐには答えなかった。言葉が見つからないように見えたが、こちらの手を握る力が少し強まった

その様子を見た宮司は微笑み、視線をこちらに向けた

宮司

貴殿はどのように理解されているのでしょうか?

紫藤さんがかつての容貌でなくなり、身が朽ち果てるその時になっても……貴殿はこれまでと同じように彼女に接することができるのでしょうか?

宮司

山のように重い4文字をこれほど容易く口にすることができるのは、やはり貴殿のようなお方だけなのでしょうね

……心を打たれるお返事ですね

失礼を承知でお訊ねしますが……紫藤さんの一生が、貴殿の長い時間の中のほんの一瞬にすぎないものだとお考えになられたことはありませんか?

この問いを投げかける宮司の表情に、厳粛さが増していく

周囲の妖怪たちさえもその異変に気がつき、遠くから注目している

彼は問いかけるというよりも、確かめているようだった。誰かの口を借りて、心の奥深くにしまい込んでいた疑問に答えを求めるかのように

宮司

どうかご教示願えますか

宮司

……

ハハ……ハハハハハハ!

なんと率直なお言葉……感服いたしました

紫藤さんは誠によき伴侶をお選びになりましたね。この度の無礼をお詫び申し上げます

宮司

どうぞおふたりとも、神社へ入ってお休みください。これ以上、貴殿と紫藤さんの「今」を邪魔するのは野暮というものでしょう

宮司に別れを告げ、鳥居をくぐって神社の中へと足を踏み入れる。いくつかの建物を通りすぎ、宮司の姿が見えなくなったその瞬間、セレーナはようやく安堵の息を漏らした

セレーナ

ふぅ……

セレーナ

大丈夫です、コンダクター

ただ、彼の問いについて考えていただけです

セレーナ

いえ、違います……

足を止めて振り返ったセレーナの表情は、真剣そのものだった

セレーナ

以前はあまり深く考えたことがありませんでした。私にとって「未来」という2文字は、あまりにも贅沢なものだからです

でも、あなたと再会したあと……突然幸せが訪れて、私は遠い昔の出来事を忘れてしまっていました

考えるべきではないことがいくつかあって、今話してもあまり意味がないのはわかっています。ただ……

セレーナは深く息を吸い込み、何の隠し立てもせず、まっすぐにこちらを見つめた

セレーナ

何年もあと、一方は変わらぬ容貌を保ち、もう一方は老いていく……たとえそうなっても、コンダクターは傍にいる覚悟がありますか?

セレーナは唇をきゅっと結び、その表情が僅かに変わる。しばらくして、彼女は笑い出した

セレーナ

……コンダクター、わかっていますか?ここは縁結び神社、口にしたことは破れませんよ

そう言って、セレーナは爪先立ちになりそっと身を寄せた。柔らかな温もりが腕の中に収まる

セレーナはいつもと違い、手渡された感情を受け取ることはなかった

逆に彼女は目を閉じ、そっと寄り添ってきた

柔らかな温もりが腕の中に収まり、熱い息が耳元を掠め、小さな囁きが山風にかき消されていく

セレーナ

私はこれまでと同じように、変わらずあなたの傍にいますよ

縁結び神社

深夜

深夜、縁結び神社

しばらく立ち止まったあと、光の導きに従って道を進み、鍵のかかった部屋にたどり着いた

鎖を断ち切り、屋内に足を踏み入れた瞬間――雲謁は妖狐の姿に変わって飛び出してきた

雲謁(ウンエツ)

成功したのですね!

セレーナ

姿を現しても大丈夫なのですか?

雲謁(ウンエツ)

ええ、ここは私の最初の香火の地なので。ここに来れば大した問題はありません

それに、あれを取れば……私は縁結びの姫の身分を取り戻せます

そう言って狐は顔を上げ、上を見つめた。その視線を追うと、精巧で小さな鈴が宙に浮いていた

たくさんの赤い糸が天井の各所から伸び、鈴を囲んでいる

セレーナ

証は鈴だったのですね。てっきり結びとか、ハンカチのようなものかと思っていました

雲謁(ウンエツ)

ふふ、意外だったでしょう?

なぜなら……

宮司

なぜなら、これは私が雲謁に贈った最初のプレゼントであり、私たちの縁の始まりでもあるからです

少し懐かしむような声が背後から聞こえた

いつの間にか宮司が部屋の入口まで来ていた。彼が手に持っていた御幣を軽く振ると、鈴は宮司の手元へと飛んでいった

雲謁(ウンエツ)

あなた……!

宮司

紫藤さんの仮面に憑いて何をしているんです。まあ、あなたが何に憑いていても、私にはわかりますが

それに、この方も紫藤さんではないでしょう?

狐は自分たちの前に立つも防御態勢はとらず、僅かな悔しさを滲ませながら、戸惑った様子で宮司を見つめている

雲謁(ウンエツ)

垂雨……どうしてこんなことを?

垂雨(スイウ)

……

本当の名前を呼ばれた宮司は沈黙してから、静かに口を開いた

垂雨(スイウ)

……考えたことはないのですか?

いや、あなたが考えるはずもない。他者を助ける時、あなたはいつも細かなところまで相手のことを考える……しかし、私やあなた自身のことは、まるで考えようともしない

雲謁(ウンエツ)

……何を言っているんです?天道との結婚が、そんなにも重要なのですか?

修行がしたいのなら、早く言ってくれればいいものを……香火を他の人に分け与えることだってできますし

垂雨(スイウ)

……もう結構です。あなたにはわからないでしょう

垂雨は軽くため息をつき、視線をこちらに向けた

垂雨(スイウ)

貴殿はどうです?私の行いを理解できるでしょうか?

宮司の発言と振る舞い、そして雲謁の話から考えると――少し違和感を覚える

しかし、結論を出すには手がかりが散らばりすぎている

垂雨(スイウ)

貴殿までそんなことを仰るとは……

てっきり、貴殿が伴侶を連れてきたのは承認の表明かと思っていました

今思えば、あなたの返答には答えが隠されていたのですね。私が浅はかなため、その意図を理解できなかっただけです

そう言って宮司は仮面を取り出し、再びそれをつけた

垂雨(スイウ)

貴殿が雲謁の誤りを正す手助けをしたいと仰るのであれば、受けて立ちましょう

たとえ絶望的な結末であろうとも、試してみる価値はある

すると、鈴から外に向かって香火の力が溢れ始めた

垂雨は香火の願力に包まれ、姿を変えた

垂雨(スイウ)

それではおふた方、お手並み拝見といきましょうか

言い終えると同時に、神社の隅から香火の願力に包まれた信者たちが次々と現れた