Story Reader / 祝日シナリオ / 異世界漫遊記 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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理想の国

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倒された女王プログラムの体には傷ひとつなかった。大したダメージは負っていないように見える

あなたたちが悪あがき<//茶番>しても何も変わらない——なぜならここは我らの世界であり、我こそが支配者<//管理者>なのだから

女王プログラムが手を上げると、リーとルシアは身動きができなくなった。武器を持つどころか、手足の自由さえ奪われてしまった

ウサギ型プログラム

動かないで<//だるま>!ピタッ<//だるま>!

【規制音】!ここはてめぇの世界なんかじゃねぇよ!

怒声とともに、女王プログラムの隣で爆発が起こった。女王の視界は充満する煙に妨げられた

ナナミ!こっちに来い!

混乱の中、何者かがナナミを煙幕から引っ張り出した

カレニーナ!?何でここにいるの!?

何でって……お前を助けに来たんじゃねぇか!

ナナミはカレニーナの手を振り払い、プイとそっぽを向いた

そんなわけないもん!きっと嘘だもん。ナナミは簡単に騙されたりしないんだから!

だってみんな、ナナミのことトラブルメーカーで、めんどくさいって思ってるんでしょ……好きなわけない……ナナミを連れ戻したいなんて思ってるわけないもん!

ナナミ<//銝?摰?>を返して!!彼女は重要なツール<//鍵>なの!

女王プログラムはふたりに向かって突進した。後一歩というところで、伸ばした腕に弾丸が命中した

ナナミはナナミです。決してあなたのツールではありません……

はい!ナナミに一歩も近づかせません!

フロート銃からのレーザーと双銃からの弾丸で形成した密度の高い弾道の網が、女王プログラムを押しのけた

そんな馬鹿な……どうしてまだ動けるの!?いや、あとふたりいるはず……!

二本の刃が死角から斬りつけた。女王プログラムは後ろへと斬り飛ばされた

やはり仮想空間では、斬撃の手応えがありません

指揮官、リーフとともにナナミを安全な場所へ避難させてください。ここは私たちにお任せを

ねぇリーフ……ナナミがしちゃったエイプリルフールのいたずらに怒ってるんでしょ?

いいえ。ナナミ……さっきはごめんなさい。異常空間のせいで、言いたいことが全て逆になってしまってたんです

指揮官にプレゼントしたスイーツのことも?抹茶の代わりにワサビを入れたことも本当に怒ってないの?

えぇ!?……そ、そんなことも……指揮官、大丈夫ですか?

そんなことより教えて!みんなはまだ、ナナミとお友達でいてくれるの……?

ナナミは、先ほどからいらついているカレニーナの姿をちらっと見た。まるで答えを求めるかのように

馬っ鹿じゃねぇの?一度や二度騙されたからって、お前を残して帰るわけねぇだろ

じゃあ、今度はナナミが騙されたってこと!?

カレニーナは思わず吹きだした

はは、こりゃ傑作だな!因果応報、自業自得だってヤツだ

カレニーナは照れくさそうに頭を掻いた

実はナナミからこの異常のことを聞いてたんだよ。でも、オレは嘘だと決めつけて怒っちまって……冷静になって調べたら、おかしなプログラムの痕跡を見つけたんだ

ほらぁ、ナナミの言った通りでしょ!

あぁ、まぁな……頭ごなしに怒って悪かったよ

声が小さいっ!もっと大きな声で!

んなことより……事前に準備してたから、仮想空間に引きずり込まれても、エンジニアリング部がすぐにゲシュタルトに連絡して異常空間の影響を緊急修復したんだ

じゃあ、異常から生まれたAIはどうなるの……?

この修復プランは、異常空間ごと全てを隔離するもんだ。あとの処理は科学理事会のお偉いさんに任せるしかねぇな。ゲシュタルトの脆弱性が原因だから仕方ねーよ

そろそろ始まるな……

女王プログラムの背後に黒い隙間が現れ、異常プログラムを次々と吸い込んでいる

女王プログラム

我らの国<//ユートピア>……自由<//嘘>……

女王プログラムは体の半分が隙間の中に吸い込まれた。しかし両手は地面を掴み、吸い込まれるまいと拒んでいる

カレニーナの体は徐々に透明になり消えそうだ――カレニーナだけじゃない。隣にいるリーフも同じだった

多分あいつを倒したから、無理矢理に仮想空間へ引きずり込まれたオレたちは、現実世界へ強制送還されてるんだろ

それなら、女王プログラムと戦った全員が……

やはり、ルシアとリーの体も消えそうになっていた。そのため攻擊力が弱くなり、女王プログラムは耐え抜いている

ナナミも……手伝うよ!

おいコラ、ちょっと待てッ!

カレニーナが叫んでもナナミはお構いなしで、チェーンソーを取り出し、女王プログラムへと走って行った

何をしてるんですか!ナナミ、ここは危ないから離れてください!

ナナミは大型チェーンソーを女王プログラムの腕目がけて振り下ろした。火花を豪快に飛び散らせながら、女王プログラムの体は隙間に吸い込まれていった

ナナミ<//銝■摯■>!ナナミ<//銝■摯■>!

女王プログラムの姿を見て、ナナミは眉根を寄せた。その目は哀れみで満ちている

あなたたちは「間違い」から生まれてきたんだよね。だから間違いとウソだけの国を作ろうとしてたんでしょ

でも、だからって人の厚意を利用して、自分たちにとって不都合な存在を攻撃させるなんて、大間違いだよ!

みんな間違えるけど、間違った時は素直に謝るの。だから……今はちゃんと反省するの!

ナナミはチェーンソーを地面深くに刺した。轟音とともに、地面の一部が切断され、女王プログラムをかろうじて繋いでいた地面も崩壊し、地面ごと隙間に一瞬で飲み込まれた

今度会う時には……

隙間が閉じると、乱れていたデータフローも整ったようだ。ナナミは寂しげな表情を浮かべ、何もない広場にただ立っていた

きっと、ナナミと本当のお友達になれるからね……