ハロハロ~~~!グレイレイヴンのみなさ~ん、ナナミが遊びに来たよ!
ナナミはハイテンションでグレイレイヴンの休憩室に入った。しかし、そこにいたのはリーフただひとりだけだった
あれ?リーフだけ?他のみんなは?
ナナミ?何かご用ですか?ごめんなさい、あいにく、皆忙しくて……
忙しくファイルをまとめているリーフは、猫の手さえ借りたいほどに見えた
ねぇ!手伝ってあげようか?ナナミ、すっごい力持ちなんだよ!
ナナミ、ありがとうございます。でも、お気持ちだけで……ひとりで処理できますから……
リーフは何かのパーツとファイルを持って、ふらふらと立ち上がった。その顔には笑みを浮かべている
今日は皆、用事があるんですが、指揮官はあと2時間くらいでミーティングから戻ってくる予定です。私も出てしまいますが、もしよかったら、ここで待っていてください
リーフはパーツ等を慎重に抱え、休憩室を後にした。またナナミはひとりきりになってしまった
みんなが帰ってくるまでって、いつなの?もう……つまんないなぁ……
ナナミはいかにも退屈そうな顔で、スケジュールがリアルタイムに更新されるさまを見ていた。上部に今日のグレイレイヴンのスケジュールが表示されている
みんな、今日は各部門の支援か……だからリーフはあんなにいっぱい持って出かけたんだ
え~っと……指揮官は?……ストライクホークのクロムと戦術会議中……会議なんて何が面白いんだろう?げっ!2時間も!?長すぎだよ……
ナナミが悶々と過ごしていると、興味深い報告がモニターに表れた
ん?リーの報告だ。ゲシュタルトシステムが脆弱性を抱えている……エンジニア部の度重なる検査でもランダムに現れる無秩序現象として処理……
どういうわけか、ナナミには何かが引っかかった。詳しく内容を読み始めることにした
むむむ……これが脆弱性の高い条件のコードか……上手にバックドアを隠してるんだね……よ~し!何が起こっているのか、ナナミ調査隊、しゅっぱーつ!
ナナミはゲシュタルトにリンクした。脆弱性が指摘されたルートは完全に修復されているが、なぜか内部からの秘匿されたバックドアが残されたままだ
ちょっと幼稚だなぁ。でも普通に探知するぶんには十分偽装できちゃうね……
この脆弱なとこ、直してあげよっと!そうすればおばあちゃんロボもナナミのこと、見直すんじゃない?
き~めた!……ナナミが退屈だからとか、遊ぶためにするんじゃないからね!
誰を説得するわけでもなく、自分を納得させたナナミはよさげな場所を模索し横たわった。そして、おもむろに変なポーズをした
ナナミ!行っきま――す!
現実感が歪み始める。同時にナナミの視界は徐々に白いノイズに覆われていった――
ノイズが消え、目の前に広がったのは現実世界とまったく同じ空中庭園だった。しかし時折データフローが表示され、それはつまり、ここが仮想空間であると告げていた
よしっ、入れた。権限承認も完璧に偽装……ナナミわかっちゃった!やっぱりこのバックドアは自然にできたものじゃなくて、誰かが作ったんだ!
ナナミはひとまず我流で周辺を探ってみた。しかし、正常に作動している修復プログラム以外、特別おかしなものは見つからなかった
ソースはここじゃないのかなぁ?もっと深いところなのかも……
お――い!そこのプログラムさ~ん!修復ログをナナミに見せてよぉ
さも当然にプログラムはナナミを黙殺した。ただログの閲覧要求には応じ、ナナミの権限の範囲内で閲覧できるログのみを公開した
MZ105423、修復済……MZ105424A、修復済……MZ105424B、修復済……修復済、修復済、修復済……う~ん、おかしなものは見当たらないなぁ
むむむ?……検査されてないエリアがある……もしかして、そこかも!
へへん、真実に向かって爆走中なのだ!ばっちゃんの名にかけて、ナナミ様が全ての謎を解いてみせるぞ~!Let's go!
修復プログラムたちを適当に仲間の下へ投げ返したナナミは、修復プログラムへの異常干渉で警報が鳴る前に、脱兎のごとく逃げ出した
突然の異常から解放された修復プログラムは、まるで何ごともなかったように自分の仕事に戻った――所詮、ただ設定されているだけのプログラムでしかないのだ
鋭いブレーキ音とともに、全速力でかっとばしていたナナミは目標地点で急停止した
名探偵ナナミ、目的地に到着!……まずはどこから攻めようかな?
ナナミはちょんと背伸びし、キョロキョロと見回したが、気になる痕跡は見当たらない
そう簡単には見つからないなぁ。きっと何か……どこかに……え?何あれ?
一見して周りと違う修復プログラムが現れた。形はウサギに見える。何かぶつぶつと言いながらナナミの前を横切った。ナナミと目が合うと、ウサギはそのまま走り去った
遅刻だ<//チック>!遅刻だ<//タック>!
ナナミは少し驚いたが、瞬時にゲシュタルトのバックドアに関係していると感づいた
お~い!待ってよぉ!逃げないでってば!!
ウサギ型のプログラムは追いかけてくるナナミに気づき、更にスピードを上げて角を曲がり、姿を消した
ナナミはとにかく追いかけた。すると突如、目の前に壁が現れた。しかし、気づいた時には止まることもできず、そのまま壁へ……それは偽装空間の壁だったようだ