Story Reader / 祝日シナリオ / 一陽来復 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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宵のための闘い

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……

…………

一行はモールの真ん中に積み上げられたお年玉のポチ袋を囲んで黙っていた

ナナミはとても器用に、お年玉袋をひとつひとつ床に並べている

おい……なんか言えよ!これで黒幕をおびき出すって言っただろ?よ……なんとかいうやつ……宵!!

指揮官殿、確かに私が安全確認をしましたが……甘い物は取りすぎない方がいいと思いますが

こいつ、食べてばっかりだな!

カレニーナは手元のバズーカを強く床に打ちつけ、腰に手を当て、足で地面を踏み鳴らした

よいしょっと!

よし、配置完了!うんうん、指揮官、どう?ナナミ特製のお餅はおいしい?

食べるのやめろっつーんだよ!

お前、お前、そしてお前も!仕事に戻らないなら、オレはあの宵を探してくるぜ

ちっ、めんどくせえな!

カレニーナはやっぱり、ナナミのことを信用してくれないんだから!

ナナミは真面目に仕事をしてるんだよ!

ナナミはカレニーナの手を取り、そのまま高いところへと引っ張っていった

おいっ、何すんだよ!引っ張るなよ!

お……これは……

高所から下を見下ろすと、モールの床にはお年玉袋で描かれた笑顔があった。真ん中に置かれたテーブルにはたくさんのお菓子が積まれている

うんうん、そうでしょ。やっぱり指揮官は、ナナミをわかってるよ

あ、これいいでしょ!お正月用に準備したの。ナナミが作ったエサだよ!でも材料があんまりなくて……おびき出し作戦1回分しかない

もし指揮官、食べたかったら――さっきの戦いで体力を使ったご褒美で、もう1個だけならいいよ。でも、それで最後だからね!

カレニーナの爆撃を浴びそうだ

もう食うな!いい加減にしろ!

もちろん任務のためだよーー宵をおびき出すため!

カラフルかどうかは関係ないよ!あれは食べ物で、ナナミが特別に用意したエサなの!

あれは食料。ナナミが特別に用意したエサだよ!

そんなにたくさんないの!新年に準備する……お正月用品とでもいうのかな!ナナミが一生懸命集めたんだよ!

やっぱりバカだろお前……あいつら口がないのに、食べ物に釣られるのかよ?

宵の行動は謎だらけです。もしかしたら、ナナミの言う通り、ある種の……非機械的な思考ロジックを持っているのかもしれませんね

そんなバカなことあるかよ……

ナナミはウソなんかつかないよ……信じてよぉ、ううっ!

カレニーナはナナミのウソ泣きを見て、いくぶん表情を柔げた

くそっ……わかったわかった……お前の言う通りにすればいいんだろ

ふっふっ……カレニーナなら助けてくれると思ったよ~

はぁ!?泣いてたんじゃないのかよ……

【規制音ーー】!黙れッ!

もうちょっと、最後のひと踏ん張りだ!モール全体を飾って、もっとカラフルにするの!もっと映えて、香りがいいものにしなきゃ!

そんなものをどこから持ってくるのです……?

それぞれ、自分の好きなように、想像力で作るに決まってるでしょ!

それから全員で、慣れない手作業が始まった

【規制音ーー】!こんなしち面倒くさいことをさせるなんて、オレを誰だと思ってるんだ!

も、もちろんだ!当たり前だろ……オレは何をやってもうまくやれるんだよ!

一方、ビアンカの前にも、手作りの装飾品がたくさん積み上がっていた

教会には子供がたくさんいて、工作はしょっちゅうでしたから。子供たちを喜ばせるために……

指揮官殿もさすが習得が早いですね。とてもお上手です

よかった!ナナミは手伝ってくれるみんなのこと大好き!

そんなこと言ってもなぁ……!オレは……

あとは、カレニーナが最後の仕上げをしてくれれば完璧だよ!

ふん、オレがいないとやっぱダメだろ?で、何の仕上げをするんだ?

えっと、前にもやった、あれ――

前にもやったって、あれか……

うんうん、そう!もう1回ヨロシク!

カレニーナはバズーカの砲口を上に向け、念のためにもう一度聞いた

これのことだろ?

そうそう、仕上げはコレだぁ~!

巨大な爆発音によって制止の言葉はかき消された。カレニーナがバズーカをぶっ放し、一瞬にして建物が揺れる

こんなもんか?

巨大な爆発音の中で、カレニーナが聞いている

まだまだぁ!!

ナナミは、そう言いながらも「宵」の反応を観察していた。爆発音を恐れるはずの「宵」は逃げ回らずに、状況を確認しているようだった

更に爆発音が続く。細かい塵と瓦礫が次々に天井から降ってきた

爆発の光は構造体たちの注目を集めただけでなく、「宵」も引き寄せた。美しいものに見とれて、立ち止まっているのかもしれない

ははん!そうか!!

パーフェクト!もう1回!!そうだ……これも一緒に!

ナナミは色とりどりのリボンと紙吹雪、カラフルな色の粉を抱えていた――モールに残されていた物のようだ

バズーカの熱放出量を最低に、威力を最大に設定して!

いいぞ!まかせとけ!最高の1発をお見舞いしてやる!

……

これが役に立つかは疑わしいですが……

ナナミとカレニーナが大騒ぎしている間、ビアンカは両腕を組み静かに佇んでいた

仕事前のセレモニーとして考えましょうか

しばらく騒いだ後ナナミが突然こちらを振り返って手を振ってきた。爆発音はやんでいる

どうだ!?成功か!?

し――!

静かに……近づいて来てる……みたい……

言い終えた途端、モールの入り口からゾロゾロと何者かが入って来た。先頭の者は銃を手にし、よく見慣れたトレンチコートを着ている

周囲を見渡すワタナベと目と合った。ワタナベはほっとした様子で、その肩の力を抜いたようだ

そしてワタナベはこちら側に向かって、静かにと合図を寄越した。彼が手でサインすると、後ろから重装備の小隊が現れて、真剣に何かを探しているようだ

お前たちは……空中庭園の構造体だな?そうか、指揮官と一緒にいたのか……

オブリビオン!?なぜここに来たんだ……?オレたちを追ってきたのか?

指揮官殿……安全な場所に隠れてください。あの人のやり方を、あなたもよくご存じのはず

ふん。わけも聞かずに迎撃態勢とはな……それならば、我々も相応の対応をさせてもらう

一触即発の状態に陥り、カレニーナに至っては今にも飛びかかりそうだ。しかしその時、ワタナベの後ろから数人の子供が現れた

物資商人さん!ここにいたのね!

あ、本当だ!!

さっき、迷子になった時、侵蝕体に会っちゃって、怖かったよ……

この子たちはオブリビオンの……なぜこんな危険なところに連れてきたのですか!?

子供たちを見てビアンカは武器を下ろすと、その口調が警戒から非難へと変わった

ビアンカが攻撃態勢を解いたのを見て、ワタナベもオブリビオンのメンバーに武器を下ろすように命じる

[player name]を一緒に探すために連れ出したんだが、こんなところに侵蝕体が隠れていると思わなかったんでね

待て……侵蝕体と言ったな?でもオレたちは侵蝕体なんか見てないぞ……わぁっ!

カレニーナの話の途中で、突然、隅から飛び出してきた何かがぶつかった

なっ!?これはなんだよ!?侵蝕体か?

カレニーナはすぐに反応して砲口を向け、発射しようとした――

待って!宵を撃っちゃだめ!

ナナミの言葉で、カレニーナはかろうじて砲撃を止めた。ぶつかって来たのは、塗装された機械体のようだ

これ、宵か……?なんにせよ、こいつはオレを襲おうとしたんだが……

違うよ!……とにかく、宵とのやり取りは、ナナミにまかせて!

冗談言えよ、お前あいつらとおしゃべりできるのかよ――

ふたりが言い合っている時、広いホールに突然、武器がぶつかる音が響き渡り、「宵」の一群が集まってカレニーナ及びオブリビオン一行に近寄ってきた

子供たち、早く私の後ろに隠れろ!

3人の子供たちは驚いて悲鳴を上げながらワタナベの傍に駆け寄った。しかし「宵」たちは、一直線に隅の方へと走っていった。どうやら何かから逃げているようだ

どうしたの……何かに追われている感じだよ

侵蝕体です、「宵」たちの後ろに、侵蝕体の一群がいます!

あ!僕たちがさっき出会ったやつらだっ!!

侵蝕体の前に立ちはだかったのは大型の「宵」だった。他の「宵」と同じく臆病だが、仲間を守るために恐る恐る侵蝕体と戦っているように見てとれる

仲間を見捨てずに、仲間のため戦うのは、立派な指導者だ……おい、空中庭園の、「宵」を助けないのか?

当然だろっ!理由はどうあれ……侵蝕体を滅亡させるのがオレたちの使命だってのッ!

可愛い「宵」のため、ナナミの勇敢なボディーガードたちよ、急ぐのだ!

誰がボディーガードだッ!!

口ではそう言いつつもふたりの息はぴったり合っており、侵蝕体の集団へ向かってほぼ同時に走り出していた