まだ指揮官の通信チャンネルには接続できないんですか?
はい、位置座標は015号都市の外縁に留まったままです。規定のルートから16度ほど外れています
ルシア、私たちも何か手を打つべきでしょうか……
ルシアは首を横に振って、リーフの肩にそっと手を置いた
軽々に動くことは慎みましょう。ひとまず次の指令を待ちましょう
でも……そうですね……わかりました
肩に置かれたルシアの手に込められた力を感じて、リーフも力なく同意した
リー、続けて追跡をお願いします
わかりました
ルシアの視線から合図を読み取って、リーはうなずき研究室の外へと向かった
研究室には再び沈黙が広がり、グレイレイヴンのふたりの隊員は、部屋の真ん中で忙しく動いている研究員を目で追った
……
こちらからは見えてないが、お前たちの視線は痛いほど感じとれる
アシモフは、視線を目の前のスクリーンからそらさずにそう言った
アシモフ、私たちはずっと命令を待っているんですが
俺はハセンじゃないんだ、いきなりお前たちに任務を与えるようなことはできんな
しかし……あぁ……確かに気になるところはあるが……
気になるところ、ですか……?もしかして、指揮官が……
それは何なんですか?
……前回検出した信号は、今回のとは種類がかなり違いますよね、アシモフさん……
しっ、話は後だ。信号源を特定できれば、重要な手がかりになる
アシモフは、静かにしろという仕草をした
そうか……!
……重要なデータが欠けている……補機に戻せば、もしかしていけるかも……
どんなデータですか……?手伝いましょうか?
しかし、アシモフは何も答えないでいた
アシモフさん、また研究モードに入ったんですね……
邪魔しない方がよさそうです
ええ……ルシア、でも、指揮官が心配です。指揮官は、地上で、初めてひとりで、こんなに長い任務に就いているのですから……
心配しなくて大丈夫ですよ、指揮官だって、自分で自分の身を守ることくらいできますから。そして、私とリーフ、リーだってついています
リーフ、今は自分の仕事に集中しましょう。今、私たちができることはそれしかありません
そうですよね……!ルシアはやっぱり、どんな時でも頼りになります……
するとルシアは側にきて、突然声をひそめて囁いてきた
リーが新しい情報を持っているはずです。あちらにいます
リーさんの管轄だから、指揮官の行方が何かわかるかもしれませんね
ふたりはお互いの目を見て、すぐに相手の言わんとする意味を理解した。しかしふたりがそのまま研究室を出ようとした時、呼び止められてしまった
おい、グレイレイヴン、待て
ア、アシモフさん、どうしました?
そんなに指揮官を見つけたいんなら――
(アシモフさんに気づかれたかも……!)
俺だって、重要な実験データを持っている指揮官が、不毛の地でトラブルに巻き込まれるのは御免なんだ
え……?
ちょうど任務があってな。今、許可をとった……お前たちに任せる
アシモフ……ありがとうございます!
グレイレイヴンの3人はアシモフに一礼し、お互いに目を合わせて頷くとすぐに任務へと向かった