うん、でも他の点心のためスペースを空けておかなきゃ……
物凄い食欲だね、これからどこかに行くの?
指……[player name]はまだ東区に行ったことがありませんから、東区にお連れします。あそこではバイオニック演劇と曲芸が観られますから
東区ね、ちょっと気をつけたほうがいいよ
気をつける?
蒲牢は真剣な面持ちで聞き返した
何か悪質な事件でも起きたのですか?それとも犯罪集団が事件を起こしているとか?事件が起きたエリアと時間は?いつから始まったのです?
それとも大規模な窃盗事件とか?放置された倉庫の物品が盗まれたり?
倉庫?何だいそれ?ていうか、そんなに重大なことじゃないよ
でも半分は合ってるかな、窃盗事件だったから
誰が盗んだかわかる?答えはね、幽霊なんだよ
彼は低い声で、真実を語っているように話した。しかし残念ながら、蒲牢はそんなことでは驚かない
東区の申家班の坤さんが、ある日夜中に起きた時、偶然、屋根で人影が横切るのを見たんだ
そして次の日、彼の腕を鍛えるための鉄の器具がなくなっていた
2番街の狗娃がビー玉で遊んでいる時、頭の上に何かが飛んでいくのを感じて、見上げるとそこには何もなかった
そして彼が再び頭を下げた時、何が起きたと思う?
彼の足下にあったビー玉が一瞬で全部消えていたんだ
その後、変な影が見かけられる度に次から次へと物がなくなるんだ。ビー玉とか、飴玉とか、ネジとか色々なものが
なぜ蒲牢衆に報告しないのですか?
なくなるのはいつもたいした物じゃないからさ。だから皆も気にしなかった。お嬢さんがオモチャを大切にしているから、教えてあげてるだけだよ
次第に、皆が互いに似たような経験をしていることに気づき始めた。そして噂が広がった。夜市には怪しい影がいて、それにでくわすと物をなくすって
客は興奮しながら、都市伝説を語るように話していた。それは、世にはびこるデマそのものだった
わかりました。ありがとうございます
[player name]、いきましょう
お嬢さん、君は、実は……
客の声が後ろから聞こえてきた。蒲牢が困惑気味に振り向く
?
……いや、何でもない。くれぐれも気をつけて
飲茶店を後にすると、蒲牢はパンダのぬいぐるみを抱えて、考え込んだ
指揮官、どう思いますか?
蒲牢もそう思います
そうですよね。この世に怪しい影や幽霊なんか存在しませんよね
一番不自然な点は――盗まれた物です。もし盗人が値打ちのある物が目当てなら、盗んだものには大した価値がないのに……
もしかして名声のため?
うん、そうですね。名声のためならもっと難しい金庫とかに挑戦するでしょうね。恐怖を掻き立てるため?でも現実はただ噂のネタになっただけですし
ダメですよ、指揮官。あのおじさんが一歩踏み出そうとしているのと同じように、蒲牢だって一歩踏み出さないと
蒲牢はこれまで、報告を受けてから行動していました。だから多くのことを見落としました。もう同じ間違いはしません。今度こそ、自分から行動するんです
どんなに小さなことでも見落とさず、九龍のリスクを排除することが蒲牢の仕事です。いつか恥じることなく、正々堂々と皆さんの前に立つために
そして蒲牢は他の情報も握っているんです。この件をそう簡単には片づけられません
あ……口を滑らせちゃいましたね……
蒲牢は少し悔しそうな表情を浮かべたが、すぐに元の顔に戻った
秘密ではありませんし、指揮官に教えてもいいかな……
実は昨晩、ある窃盗犯を捕まえたんです。彼の供述によると、東区の倉庫から盗んだということでした
その可能性を排除はできません、そうでしょう?
そうなるとこれ以上、指揮官と一緒に遊んであげられないですね……エンジニアリング部隊まで送っていきます
でも指揮官は九龍の人ではありません。ご迷惑をかける訳には……
指揮官がそう言ってくれるなら、これ以上、遠慮し続けるのもよくありませんね
じゃあ、出発しましょう!目標は東区の幽霊事件を解決すること!
蒲牢が小さな拳を突き上げると、身につけているオモチャがガラガラと音を立てた。これでは調査というより、ピックニックに向かうみたいだ
後ろからの目線を感じたのか、蒲牢が振り向いて、不満げな表情を見せた
指揮官、その目つきはちょっと失礼じゃないです?蒲牢の調査能力を疑っているのですか?
すぐさま首を振って否定し、蒲牢の身につけている小物たちを指さす。少女はすぐにその意味を理解したようだ
……オッホン、失礼、これは気づきませんでした。少し興奮しすぎちゃいましたね
蒲牢が小物を預け、東区に連れていかれた。非公式な身分では聞き込みに支障が出ないか心配したが、ここの人々はそれを事件ではなく、ただ話のネタとしてとらえていた
蒲牢は正々堂々と牢蒲「ロウホ」という身分で、事件に興味を示した。人々は見聞きしたことを全部話してくれたが、中には誇張もいくつか含まれていた
だが……
まったく……手がかりがありませんね……
手がかりどころか、調査したところ被害者が3人も増えていた
まずはフルーツ飴露天商の呉さん。怪しい影が現れたあと、水あめを作るための角砂糖がなくなったらしい
今朝、出店した時、何か変だと感じていたんだ
角を見ると、黒い影がそこにあったけど、何なのかわからなかった
振り向いた瞬間に、箱の中に入れてあった角砂糖がいくつか減ってたんだ
まったく気味が悪い
でもたいしたことじゃない。運が悪かっただけだ。高いものでもないし
太鼓を叩く朱さんも、変な影を見たら、バチの帯がなくなったらしい
昼の演奏のあとのことだ、バチを腰につけて、ご飯を食べに行ったんだ
上から睨まれているような感じがして、上を見ると何かが屋根の裏に回ったのが見えた。その後、バチを触ると帯が消えてた。新しい帯を買うのに、午後は遅刻しそうになったよ
そうだ、赤色だった。幽霊は赤色だったよ、あれはきっと赤鬼なんだ!
それに加えて、手芸屋の展さんも、縫い針をなくしたのだとか
あれは本当に不思議でした。今日、生地を取りに行った時なんですが
中に入るとヘンな影が中をうろついているのが見えました。その頭は臼みたいな大きさでした
勇気を振り絞って近寄ってみましたが、誰もいませんでした。でも、いつのまにか側に置いてあった縫い針が消えていたんです
本当に気味が悪いですよ。針が見つかったとしても、もうそんな針はいりません!
盗難に遭った倉庫の持ち主は、変な影は見なかったと言っていました。そして他の倉庫の持ち主にも訊いてみましたが、盗まれた物はないそうです
どうやら倉庫の窃盗は昨晩のあの人が犯人で、幽霊とは関係なさそうですね
せっかく皆さんが親切に教えてくれたのに……
でもまったく収穫がない訳でもないですよね。そうでしょう、指揮官
蒲牢の左手にはフルーツ飴、右手にはでんでん太鼓、腰にはパンダのクロスステッチがかかっている。それを見て、頷いた
もらった物のことじゃないですよ!!事件のことです、事件の!
色んな人に訊きこみをして、グループ犯罪ではないかと思ったんですが
そうです。被害者たちはまず影に気を取られて、その後に物がなくなっていることに気づきますよね
そんな短時間で、物を盗んで遠くに逃げることはできません
えっと……蒲牢もわかりません。盗まれたのはたいした物じゃないから、蒲牢衆に報告はこない。蒲牢衆が来なければ、誰も事態を重く考えない……あっ、わかりました!
指揮官、オオカミ少年の話を聞いたことがありますか?
彼らは東区の人の警戒心を弱めるために、まずささいな物に手を出したんです。そうすれば蒲牢衆が来ることもありませんから
東区の人々に「金目の物を取らない」という印象も与えて、人々が慣れてしまった頃に、真の目標を狙うんです。この前、蒲牢が捕まえた盗人も、実は目くらましかも……
どうでしょうか?そう思いません?
うーん、割に合わないような気がする
そう思った時、顔に当たっていた光が少し影になった。顔を上げると、ひとつの人影が遠い屋根の上に立っていた
展さんの言う通り、その頭は臼のように大きく、そして赤色だった。その姿をはっきり捉える前に、影は瞬時に左の物陰の中に入っていった
指揮官、何か思いついたことでも?
本当ですか!?すぐに追いかけましょう!……ちょっと待ってください!
訊きこみによると、黒い影を見たあとに物が盗まれます。早く盗まれた物がないか確認しましょう
蒲牢が色んなお菓子を出して数え始めたので、自分も持ち物をチェックすることにした
銃、財布、端末、血清、アドレナリン等は全て元の位置にちゃんとあった
22、23……ふぅ、全部ありますね、指揮官、何かなくなっていましたか?