Story Reader / Affection / 蒲牢·華鐘·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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蒲牢·華鐘·その4

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時が経ち歩く距離が増えるにつれ、蒲牢の荷物は少しずつ増えていく。壺投げで勝ち取った仮面の他、パンダのキーホルダー、ロボットの模型、シールや木刀等だ

蒲牢が歩く度に、それらの小物がぶつかって音を立て、持ち主の笑い声の代わりのように響いていた

ちびちびと綿あめを食べている蒲牢にはまるで龍の子の威厳などなく、ただ遊ぶのに夢中になっている少女にしか見えない

自分の手には、シューティングで勝ち取った特等賞の商品がある――阿寛朝茶店のクーポンだった

うーん……蒲牢にも理由はわかりません。でも美味しいからいいじゃないですか、名前なんてなんでも

指揮官、2回遊んだだけで追い出されちゃいましたね

あの店主の泣きそうな表情、とっても気の毒でした……

そうでしたね。では蒲牢はこれから[player name]と呼びますね。指揮官は蒲牢のことを……うん……蒲牢牢蒲「ホロウロウホ」と呼んでください!

大丈夫ですよ、絶対バレませんよ

指揮官、あそこを見てください。あれが蒲牢が話した阿寛おじさんの飲茶店です。あそこのチャーシューマンが絶品なんです!早く行きましょう

ああ~もういい香りがしますね。これはきっと出来たてのチャーシューマンの香り!チャーシューマン、待っててくださーい!

おっと、カワイイ娘さん!おふたり、何を差し上げましょ

蒲牢の視覚モジュールは湯気を立てている料理に釘づけだった。あらためて訊くまでもなく、彼女のよだれを垂らしている口が答えを出していた

お目が高いね。うちのチャーシューマンは西区の名物ですよ。何個いります?

蒲牢はこちらに向かって3本の指を出したが、いきなり首をブンブンと強く横に振ると、親指と小指を広げ、期待を込めた眼差しでこちらを見つめてきた

チャーシューマン5個だね?はいよ

違う違う、5個じゃなくて、5皿です!5皿!

蒲牢は慌てて口を挟んだ。阿寛おじさんの目がこちらに向けられた時、蒲牢は瞬時に頭を下げた。まるでそこの地面に宝物が埋もれているかのように見つめ続けている

5皿も?これ、結構腹持ちするよ、本当に食べ切れるの?

店主は疑問の眼差しを蒲牢に向けた。視線を感じたらしく、彼女の小さな頭が素早くコクコクと頷いた

じゃあいいですよ、店内で食べる?それとも持ち帰ります?

お、シューティングの名手だね。もちろん使えますよ

じゃあ、席に座ってお待ちください。チャーシューマンをお持ちしますから

蒲牢は辺りを見渡すと、ひとり客が座っている4人席を指差した

指……[player name]、あのテーブルに座りましょう

蒲牢はそっと声を低くすると、耳元で話しかけてきた

……市井の人の龍の子に対する考えを聞く大チャンスです。遊ぶのに夢中で、大切なことを忘れてました

変装した目的をようやく思い出したことに、蒲牢は少しバツが悪そうだった

こんにちは、ここに座ってもいいですか?

ああいいよ、席を空けるよ

蒲牢は体につけていた小物を丁寧に取り外した。すぐに席いっぱいに、さまざまなオモチャが並べられた

えらくたくさん持ち歩いているんだね。でもふたりは、オモチャ屋じゃなさそうだけど

いえいえ、これは全部ゲームの賞品なんです

ああ、西区には確かにたくさんのゲームの屋台があるね。でも結構難しいのばかりだから、こんなに賞品を獲れるなんてすごいね。よくここで遊ぶの?

よくではないのですが……

じゃ、才能があるんだね

見慣れない顔だけど、どこの区から?

……中区です

お、中区か、中区はいいところだ。あそこは船で一番栄えている場所だから。そういえば、龍の子もそこに住んでるんだっけな

客の言葉で蒲牢の顔が再び強張り、重い空気が漂った。彼女は口を開いて、何かを話そうとしたが、懸念と恐れからかそれをやめてしまった

そして、彼女が助けを求める眼差しを向けてきた

蒲牢は口をすぼめて、ハムスターのようにプッと頰を膨らませた。どうやら蒲牢を無視したことと、自分の下手な演技に怒っているようだ

蒲牢は唇を噛んで、何か決心をしたようだ

彼女は深呼吸をして、言葉を選びながら、ゆっくり話し始めた

皆さんは龍の子が嫌い……憎んでいたりしますか?

……

相手が黙ったので、蒲牢は心の中で結論を出し、話を続けた

龍の子は皆さんを故郷に戻す手助けをしたはずです。なぜ許してあげないんですか?

蒲牢の声は思わず上ずり、日ごろからの不満を訴えているかのようだ。またそうすることで「理解しがたい」世界の中で、ようやく呼吸できているかのようだった

その客は、丁寧にオモチャを整理していた少女が、出しぬけに厳しい質問をするとは思わなかったのだろう。その表情が少しこわばった

ご……ごめんなさい。こんな話をすべきじゃなかった

大丈夫だよ、ただ……まぁ、まだ子供だし、そんなことを理解する必要もないんじゃないかな

でも、私は理解したいんです

客は蒲牢を見ずに、視線をこちらに移してきた。だが彼は口を開かなかった、こちらの意見を求めているようだ

そう。じゃあ、もう今日は覚悟して話そうかな

お嬢さん、まず訊くけど、船を前の状況に戻したいかい?

それは、もちろん嫌です!

私も同じさ。だから龍の子と部外者が、私たちをあの地獄から救い出してくれたことには感謝している。ただ唯一残念なことに、その日がもっと早く来てほしかったけどね

そこまで言うと、客は頭を振った

欲張りはよくないな……やっと地獄から逃げ出したんだから、もう地獄には戻りたくない

でも苦労の末に得た解放に、私は何も貢献しなかった。砂漠の雨の恵みのように、私はそれを切望していたはずなのに。それを得る方法も、それを守る方法もわからないまま

自由を得てしばらくの間はただ喜んでいたが、また恐怖に陥ってしまったんだ

龍の子は果たして味方なのか?龍の子はまた首領のように、私たちをコントロールしようとするのでは?もし彼らがそうなったら、どうすればいいのだろう?

それに夜航船の新造も龍の子たちだけで完遂された。私たち一般人は互いに簡単な取引しかできないまま、だから自分は……

彼は唾を飲み込んだ。喉に言葉を詰まらせ、しばらくしてからようやく吐き出した

……いつまで経っても安堵を感じられず、まるで流氷の上で生活しているようなんだ

憎んでなんかいない。嫌いでもない

ただ、どう向き合えばいいのかわからないんだ

ごめんなさい、そんな、そこまで複雑な思いがあるなんて知らなくて……

謝まる必要はないよ、ずっと溜まっていたモヤモヤを口にできてスッキリした

阿寛おじさん、粥をもう1杯

子供の君が龍の子のことがそこまで気になるなんて。彼らのことは怖くないの?

……嫌いだと思ったことはありません

あなたは?

……

そうか、逆に私の方が悪人みたいだね

確かに一部の人は叩けば埃が出る身だから、九龍の子を見ると条件反射で恐れるだろうね。あ、こんなことを君みたいな子供に言うべきじゃないな

突然、白い湯気が視線の中に入り、会話を遮った

チャーシューマン!あのね、皆が皆、自分と一緒だと思っちゃダメだよ

阿寛おじさんが高く積み上がった5皿分のチャーシューマンとお粥を置きながら、客に語りかけてきた

ワシはただ龍の子に恩義を感じて船に残ったんだ。彼らの保護がなければ、この老体なんてとっくにバラバラになっていただろう

ふぅ、出航してから首領が変わるなんて、誰にわかったもんか

龍の子の中にはうちにチャーシューマンを買いにくるのもいる。でも仮面をつけて、あまり話さないけどな

本当ですか、誰ですか?

ガーサイとかいったかな?ワシは学がないので、文字も半分しか読めない。だからこれが合っているかどうかもわからないが

あ、もうひとり知ってるのがいるな、嘲風というのだ。彼は夜に逆さまになって現れるもんだから、いつも驚かされる

ぷぷっ……注意しておきます

あ、つまり……私は中区に住んでいるから、時々、龍の子と話すことがあるんです

だから龍の子のことが気になっているんだね

そうだ、お嬢さん、龍の子と話をすることがあると言ったね?

はい

なら建設を担当する贔屓衆に話してもらえないかな……

瞬時に戸惑い、恐れ、悔しさ等の表情が彼の顔に表れ、言葉の続きはそのまま飲み込まれてしまった。しかし蒲牢は真剣な眼差しで彼を見ながら、じっと待っていた

やがて、彼は酒を飲むようにして、湯気を立てているお粥を一気にぐいと飲み込んだ

熱っ!ゲホッ……実は……私はかつてエンジニアだったんだ。設計の賞をもらったこともある

だから……もし人手が不足しているなら、私も手伝えるんだ

そうすれば贔屓衆は朝早くから仕事する必要もなくなるし、皆も十分な睡眠をとることができるだろう……

……龍の子を恐れていたのでは?

……私も多くの人と同じように、生活のためにやむなく商人にならざるを得なかったんだ

今の生活手段から抜け出して、自分の好きな仕事に戻れたら。それが、私の願いなんだ

君たちと阿寛おじさんを見て、龍の子は想像しているほど恐ろしくないんだなと思った。そろそろ、一歩前に踏み出す時だ

ちょっと、何を言ってるんだ?この子は龍の子じゃないんだ、そんな交渉ができる訳ないだろう。決めたことがあるのなら自分で言うべきだろう!狡い人だ

そんな度胸がないんだよ。また今度ね、今度!

そうですよね……やってみます

いえ、ちゃんとお伝えしますから!

ちょっと言ってみただけだよ、無理しないでいい

それが人にお願いする態度なのか?

いやいや、余計なひと言だった。すまないね

大丈夫、大丈夫ですから

蒲牢はいつの間にか、真っ白な饅頭を手に持ち食べ始めていた

独りよがりな考えは真実の追究を阻む――ここの状況は空中庭園の縮図だと思った

しかし異なる歴史、異なる文化を持つからかもしれない。この土地においては、人間は構造体に対してあまり偏見を持っていないようだ

「隔たり」という何かを越えると、向こうの風景は想像していたほど険しくない。勇気で築き上げた橋が蒲牢の不安を打ち破り、彼女に新しい活力を与えたようだ

阿寛おじさん、後2皿追加してください

まだ食べるの……