Story Reader / Affection / ネイティア·亡詩·その4 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ネイティア·亡詩·その3

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マルガリータ

私は過去に留まる。でも、あなたたちの物語はこれからも先に……

なぜ!?どうして、そんなところに行くの!

初めから違った!あんたは、最初からカヘティの人間じゃなかったのね!!

今日からは、その鋭さも爪も隠せ。自制と忍耐を保ち、力を蓄えて、刀を抜く日を待つんだ

ネイティア

ん……

レノア

目を覚まして、ネイティア。力を抜いて、私の呼吸に合わせて。自分の腕を傷つけちゃうわよ

重く湿った瞼をなんとか持ち上げると、焦点が次第に合い始め、白衣を着た細身の女性が目に映った

レノアは彼女に触れなかった。実験室に導いたこの女性は、まるでサンプルデータを記憶するように彼女の警戒心を覚えていて、呼吸が安定するのを確認したあと頷いた

もう大丈夫、ありがとう

どういたしまして

レノアの視線はたくさんのモニターに囲まれた架台に移った。ワタリガラスの形をした機体が半分ほど分解されたままになっており、主の力尽きた様子を物語っていた

何か問題が起きたの?

調査中なの。ハードウェアには異常なし。ソフトウェアのバージョンとの非互換性がある可能性もある。現状は合成データでの動作確認しかしていないから、今調整するわ

わかった。こっちのデータは明日で一段落するから、終わったら手伝うわ

もう夜中の3時よ。ずっと見張るつもりなら、私の折り畳みベッドで少し休んで

年上の彼女は手首を回しながら、少し自嘲気味に笑みを浮かべた

肉体って、ほんと燃費悪いのよね。大事に使わないと

深夜の静けさが、自制の壁を少しだけ低くしたのかもしれない。日中なら絶対に口にしない言葉が、思わずこぼれた

なぜ、私に色々教えてくれるの?

私はあなたの後輩でも、同僚でもない。過去に処分歴のある「よそ者」よ

……あなたに返せるものなんて、何もないのに

眉間を指で押さえ、慎重に言葉を選んだ。彼女自身もまた疲れているのだろう

ここで浅い関係のまま深い話をするのは、あまり賢明じゃないわ

……こんなこと言うと、一気に20歳くらい老けた気分。気をつけた方がいいわ、「なぜ」を問うことは、「できない」と口にするのと同じくらい危うい

それでも理由が知りたいなら……あなたが来るまでこの実験室で夜をすごすのは、いつも私ひとりだった。だから、あなたがいてくれることに少しだけ感謝していると思って

そう言って、彼女は静かに息を吐いた

ちょっと待ってて

彼女は自分のデスクから、花柄のブリキ缶を取り出して、ネイティアに差し出した

開けた瞬間、甘い香りが広がる。中には、まん丸のアーモンドクッキーがぎっしり詰まっていた

もうダメって時は、これを食べて自分を慰めて。「人生はこんなに脆くない」ってね

「人生はこんなに脆くない」……彼女がそんな言葉を口にしたのが今でも信じられない

時々、ほんの一瞬だけ、たまに思うの。あの白衣の内側に、詩人の魂が隠されているんじゃないかって

ほんの僅かよ。モリガンの整備記録に彼女の名前をよく見かけたけど、ヴァルデンや他の実験室の責任者たちは、私のような「はみ出し者」を長くは置いてくれない

アシモフの法的保証は通行証にはなっても、身分証や免罪符にはならない。私がこの場所で得た立場は、全て私自身で勝ち取ったものよ

補機実験室、放射化学実験室、ナノ科学センター……私は各部門を渡り歩き、許された限りの知識を最速で学び続けたわ。研究法から施設運営までありとあらゆることをね

人々は、私のことを「科学理事会の幽霊」と呼んでた

そして、ある日、その「幽霊」はプレゼン資料を携えてアシモフのオフィスのドアを叩いた。そして具体例を用いて、科学理事会の安全規則を回避するあらゆる方法を示したの

あの表情、今思い出しても笑えるわ。でも、そのプレゼンのお陰で私はリスク管理部門の職に就けた

呼び出されたモリガンはゲーム機の姿へと戻り、ネイティアの膝の上で眠っている。黒い服の構造体は指先でその縁をなでながら語り続けた

私が担当した調査の中で、レノアの行為は最悪でも最重の処分対象でもなかった

人には明日へと繋がっている透明な1本の糸がある。でも彼女の糸はその時、ぷつりと切れてしまったの

これが、モリガンの物語の後半。ワタリガラスは空を翔けるけれど、人の縁はかつてと同じ場所には戻らない

その視線、言葉……あなたは本当に罪な人ね

頬に、ひんやりとした感触があった。ネイティアの爪先が頬に触れている

本題に戻りましょう、検証はまだ終わってない。物語を聞いて、新しい閃きはあった?

彼女なら、計画性と記憶力の両方を備えている。確かにありえるわ

黒い羽のスカートを纏う構造体は腕を抱き、唇に指を当ててしばし思案した

モリガンのベースコードを全て手作業で精査するのは、時間的に不可能ね

でも正しい切り口を見つければ、最短でたどり着ける。ヒントになりそうなのは……あの告発ね

あのメッセージで唯一、意味不明な文章があった。最後の1文よ

ネイティア

「黒き鳥よ、この世界に雨の幕が降りる時、どうか孤独に鳴かないで」

赤い瞳に微かな光が走り、ネイティアはハッとして、自分を見つめた

カラスさん。一緒にこの言葉を声に出して読んで?

言葉が口からこぼれた瞬間に、休眠状態だったゲーム機の光が一斉に灯り、音を立てて宙に浮かび上がった。ネイティアは、こちらの手の上にそっと手を重ねてきた

「シークレットドキュメント1846、タイムラグ起動。優先度:最高。音声認証:彼女の名を呼ぶ」

迷いはなかった。目の前の赤い瞳をまっすぐ見つめながら、その名を、まるで息を吐くように自然に口にしていた

「ドキュメント、アンロック」

その瞬間、ネイティアの指が力強くこちらの手を握った。まるで精密なロックが正しい鍵で開かれるように、全ての歯車が噛み合う音が響く

それは真実の狩人が持つ眼差しであり、盟友として勝利を確かめるような触れ合いだった。彼女の口角が上がり、称賛の輝きを帯びる

ビンゴ!

ふたりでないと解けない謎だったなんて。さあ、私たちの戦果を一緒に受け取りましょう、[player name]

静寂が漂う中、ネイティアがドキュメントを開いた

それはあるリストだった。名前の数はそう多くない。そして、リストの一番下に1行の詩が添えられていた

「私は涙を矢に鋳て捧げ、決意の時を待つ」

このリストにある数名は、私たちがすでに訪ねた人ね。でも、まだ訪ねてない人も含まれている

ダークゴールドのネイルがモニターを軽やかに叩き、いくつか線を引いた

見て、1番目の名前はホワイト博士よ。やっぱり彼は何かを隠してる

矢を鋳て捧げる……その「矢」が何かはさておき、レノアはリストの人たちに何かを託したのね。彼らは今も、彼女のためにそれを護っている

あなたの予想通りね。この詩こそ、秘密を開く鍵なのかもしれない

次のラウンドに進む時がきたわ

解読の手応えに、ネイティアは明らかにご機嫌だった。指先は端末を滑るように走り、モニターをこちらに見せてきた。その顔に柔らかな笑みが浮かぶ

まずは最も難敵から始めましょう。ホワイト博士を説得する方法を閃いたの

前回は私の名前でコンタクトを取ったけど、今回はあなたの番。グレイレイヴン指揮官の名声を少しだけ貸してもらえる?

もう文章は完成しているから、あとはあなたらしい言葉で仕上げて

もしかして、安全総監の仕事って「あれもダメ、これも秘密」なんじゃないかって心配?

そうね、もしうっかり見ちゃったら、3冊分の秘密保持契約にサインするか、あなたを科学理事会に異動させて、私の首席秘書官になってもらうしかないわね

彼女は全身を震わせたかと思うと、こちらの肩に身を預けて笑い転げた

本当にその気はない、カラスさん?私のオファー、結構大真面目なんだけど?

ふふ……もう少しだけ、あなたの考えが変わる日を待つわ

その答え、気に入ったわ。納得できた――今のところはね

心配しないで。これは仕事用じゃなくてプライベートの端末。見たければ、中身をぜーんぶ見ても問題ないわ

そう言いながら、ネイティアは顔を上げ、少しいたずらっぽくウインクをした

渡してる私の連絡先はプライベートのものなの。私たちだけの秘密の宝箱に、またひとつ宝石が増えたってことね

差出人を自分にして、詩を添えたメールをホワイト博士へ送った。数分もしないうちに返事が届いた。ネイティアは余裕の笑みを浮かべたが、やがて眉をひそめた

面会は明日の午前中……向こうも焦ってるみたい

この調子ね、[player name]。隠し部屋での駆け引きは一旦ここまで。これからはもっとエキサイティングな攻防になりそうよ