Story Reader / Affection / リリス·万魔 その1 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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リリス·万魔 その2

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トライアルラウンドまで、あと5分ほどでしょうか?

こんな運任せのゲームに、トライアルなんかいらないだろ

その時、端末が微かに振動した

先ほどの電波強度のようなアイコンの表示が変わった

この端末、なんか変じゃないか?

パニシングだ!

その通りです

リストバンド式端末の画面を見ると、いつの間にかパニシング濃度を示すマークがすでに2段目まで色がついていた

この階段状のマークに、一番上まで色がつくと負けとなります

ゲームはまだ始まってないだろ!なんで俺のはもう1段目に色がついてるんだ?

おかしいですわね?私は何も色がついていませんが

つまり……

建物に入ってからずっと聞こえていた微かな機械音――それは恐らくいくつかの小型浄化設備の音だったのだろう

それらを利用すれば、短時間でそれぞれの場所のパニシング濃度を下げることができる

逆に浄化設備を停止または中断させれば、パニシング濃度が上がる

なんでお前が俺より少ないんだよ

焦るなって、俺はお前より1段多いんだぞ?

私たちはパニシング濃度を制御できませんが、不公平な戦いの方がより楽しいものです

私はもうカードを決めました

機械のような音声がタイムリミットが迫っていることを告げると、場の雰囲気が少しクールダウンした

再び沈黙が訪れる――しばらくして、フォークナーもカードを選んだ

端末の画面には「グー」と「パー」のカードが表示されている

これって完全にランダムなんだよな?

例えば、グーが2枚、チョキが2枚、パーが1枚で……

2対2対1の場合、どのような判定になるのだろうか

ルールで明確に説明されていない状況を試したいと?

自分に続いて、残りのふたりも選択した

端末に表示された結果:

1番:グー 2番:チョキ 3番:パー 4番:グー 5番:チョキ

結果:3番の負け

自分に続いて、残りのふたりも選択した

端末に表示された結果:

1番:グー 2番:チョキ 3番:パー 4番:パー 5番:チョキ

結果:1番の負け

検証したかった状況になりましたね。運はあなたに味方しているようです

多数派なら勝利扱いってのは、このルールの優しいところだな

新たなラウンドのカウントダウンが始まった

ここに来る前に用意した血清は6本で、今使ったのが2本目だ。先が見えない状況では、慎重に使用せざるを得ない

リリスは全身鏡の前で立ち止まった

まさかこの私にも、懐かしむ機会が来るなんて……

かつての塗装に着替えた自分の姿をまじまじと見て、彼女は自嘲気味に言った

すると、隣に置かれた端末から声が聞こえてきた

「4番プレイヤー」

多分……

リリスは端末の方向を見た

このゲームは完全な運任せじゃない

へぇ?なぜ?

各ラウンドの間に1時間ある

各ラウンドを可能な限り引き分けに持ち込むことができたら、その1時間を利用して、他の脱出方法を見つけられるかもしれない

ベストなのは、5人全員が同じカードを選ぶこと

ただ、それができる確率はかなり低いですわね

その通り。だから……

さっきみたいな引き分けを目指すべきかと

ちょっと待て。つまり、誰かがラウンドごとにペナルティを引き受けるってことか?

ふざけてるのか、お前

天才的なアイデアです!

複雑な過程をルーレットに変え、カードの駆け引きを減らす……そうすることで、自由を取り戻すために使う時間を増やそうとしているのでしょう

その作戦に協力します。ですが、これは「囚人のジレンマ」……もし誰かが裏切れば、協力関係は破綻するでしょう

第1ラウンドは自分が負けるよ

だったらいっそ、お前にずっとペナルティを受けてもらうか

リスクを分担することに賛成です

命を賭けたゲームでwin-winを目指すなんて、なかなか面白いチャレンジですもの

私が第1ラウンドの負け担当でも構いませんよ

リリスは端末を口に近付けてしゃべった

そもそも、会ったこともないやつをどうやって信頼しろというんだ

俺は乗るぜ。ただ第3ラウンドでも進展がなかったら、自分の身を優先する

4対1……生存時間を延ばすためには、多数派に加わるしかありません。私は特殊な立場ですし、皆さんとの対立は避けなければ

通信チャンネルに30秒ほど沈黙が続いた。リリスはジュエリーボックスからパールのネックレスを取り出し、しなやかに身につけた

……お前ら、ちゃんと他の脱出方法を見つけろよ

再び沈黙が訪れた

すると、彼女はマイクをオフにした

パブリックチャンネルで全員にコンタクトを取らせる目的は、時間稼ぎだけではないはず……

あなたはこの時間で何をしようとしてるのでしょうね?

彼女は独り言を言いながら、クローゼットを閉じた

テーブルの上を片付けた。ゲーム自体も他の参加者のことも、情報を整理する必要がある

隣の壁からフォークナーの重い打撃音が響いた。構造体の力強いパンチで壁は揺れたが、崩れる兆しは見られなかった

フォークナーは自身が構造体であることを隠そうとしなかった。彼の不安定な感情は危険な行動に出る可能性があるが、心理は読みやすい

ラビオは上手に本心を隠している。彼の言葉から真意を読み取るのは難しい。意見することを避けつつ、常に多数派に付いている

そして、エレノアは掴みどころのない態度が言葉に表れている

何か収穫はあったか?

ラビオの声が考えを中断した。1時間のタイムリミットまであと10分ほどしかない

俺の出力じゃ壁を壊せない

俺の場所から他のエリアに繋がる道は全て瓦礫で塞がれてる

そろそろ時間か?

チョキとパーです。私のところのパニシング濃度が一番低いので、私から始めましょう

結果:5番の負け

これでほぼ全員が同じスタートラインに立ったのですね?

次のラウンドでリスクを負うべきは、私だと?

そうだな。そうすれば、次の2時間は俺たちの安全が確保される

「ラビオ」はテーブルの上に椅子を置き、それに登って換気ダクトのカバーに手をかけた

彼はそのカバーを力強く引いた

照明の光が少し眩しい。彼は体を伸ばして換気ダクトの中に入り、暗闇の奥深くへと進み始めた

55分後――

チョキとパーを引きました

お互いのカードを確認したあと、それぞれが出すカードを決めた

結果:1番の負け

時間が経つにつれ、全員の口数が少なくなっていった

何か新しい発見はあったか?

あったけど、検証に時間がかかる

屋上への他の通路はない。もしあったとしても崩れた壁の中だろう。あそこは今パニシングが充満していて、他のエリアへ行けるかどうかの判断が難しい

それぞれのいるエリアの状況が違う……これはもともと公平なゲームではない

壁を隔てた向こうにいるフォークナー……短気な離反構造体は、力ずくでここを脱出することを諦めたようだ

そのお陰で再び静けさに包まれた。考えを整理するにはちょうどいい

ノートを閉じたその瞬間、鈍い音が聞こえてきた

それは決してノートを閉じた音ではない

何か音がしませんでした?

デカブツの構造体が勢い余って転んだか?

俺はなんともないぞ

検証はまた持ち越しになるのか。それとも、すぐに答えが出るのか

あ……今回、俺はチョキと……パーだ

同じく

偶然ですね、私もパーとグーです

チョキとパーです

グリースの声が少し弱くなっている

全員がパーを出せば、誰も負けずにすみますね

もう選んだぞ

アイコンの表示が順に変わっていく

1番:パー 2番:パー 3番:チョキ 4番:パー 5番:パー

結果:1番、2番、4番、5番の負け

予想外の結果が表示されたと同時に、端末画面が鮮やかな赤色に変わった

おい!フォークナーてめぇ!!どういうことだ!?

さっきの音は銃声だ

知っている銃声だった。あの銃を使うのは、あのクソったれ集団の一味だ

フォークナーが言っているのは黒野のことだ

おいデカブツ、俺らはちゃんと会話してるだろ?それに誰も怪我なんかしてないぜ

本当に銃声だったんなら、お前みたいな戦闘マシンの仕業じゃねぇのか?

話はもはや制御不能な方向に向かっている

フン、すぐにその口をきけなくしてやるよ

もうやめだ。協力なんかうんざりだ

それ以降、音声は聞こえなくなった

第3ラウンドでも解決策が見つからなかったし、俺も降りるとするか。悪いな、「お人好しさん」

ふたりは通信チャンネルをオフにした

結局、時間稼ぎにしかならなかったようですね

この通信はプライベートチャンネルからだった

ここからはお互いに獲物ということですね、「お人好しさん」?