Story Reader / Affection / イシュマエル·幻日·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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イシュマエル·幻日·その6

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イシュマエルはタイムワープ子機を使い、他のタイムトラベラーに連絡を取ろうと試みた

長い間待ち続け、ようやくひとりだけイシュマエルに応答した

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こちらスー、メッセージを受信

こちらイシュマエル、エンデュミオン星より応答。時空座標は……

相手は一瞬驚いたあと、低く笑った

タイムトラベラー·スー

イシュ……マエル?

生きてたのか?

はい

タイムトラベラー·スー

近くに誰かいるのか?

「グレイレイヴン」も一緒です

タイムトラベラー·スー

そうか……ゴホッ、ゴホッ!

少し違和感を覚えた

怪我をしているのですか?

タイムトラベラー·スー

心配ない

「モズ」を脱出する際に、タイムワープ機本体から資料を持ち出した。本体の初期開発データだ。これがあれば「モズ」を再建できるかもしれない

エンデュミオン星で合流しよう。資料を君たちに託す

合流地点を決めたあと、彼に疑問を投げかけた

タイムトラベラー·スー

タイムワープ機本体にいた時、トウから聞いたんだ

それ以上の疑問はひとまず胸にしまい、会った時に詳しく訊くことにした

エンデュミオン星

2日後

イシュマエルと森の奥へと進んでいく

この先が約束した合流地点です

生い茂った木々とツルをかき分けると、空き地が見えた

そこには宇宙船が静かに横たわっていた。木漏れ日がちらちらとその表面に降り注いでいる

宇宙船はツルに覆われ、苔が生えていた

コックピットのガラスの向こうに、ひとりのタイムトラベラーが座っているのが見えた――

彼はずいぶん前に亡くなっているようだった

イシュマエルと一緒に近付き、確認した

少なくとも1標準年は経っているようですね

スーの傍らにはメモリーと手紙が置かれ、手には1枚の写真が握られていた

イシュマエルは手紙を手に取り、目を通した。内容はとてもシンプルなものだった

1年後の俺から、君たちに関するメッセージを受け取った

悪いが、俺の旅はここで終わりだ

この資料が君たちの役に立つことを願っている

イシュマエル、あとは頼んだ

イシュマエルは手紙を読み終えると静かに折りたたみ、ポケットにしまった

あなたの魂が、四翼の白いカラスとともに飛び立ちますように……

彼女は永遠の眠りについたスーを静かに見つめていた

……彼を知っています

いつも、自分の子供がどれほど可愛いかを話してくれました

休暇の度に奥さんが手作りしたお菓子をお土産に持ってきて、皆に振る舞ってくれました

家族写真を見たこともあります。とても幸せそうな3人の親子が写っていました……

彼女は微笑んだ。そして、その声には確固たる決意が込められていた

慰めは不要です

行きましょう。この時間のトウを探しに

葉の間から差し込む光に包まれながら、スーはこの地で眠り続けている

彼の顔を見ていると、どうしても解けない疑問が浮かぶ

あの時、彼は本当にタイムワープ機本体の側にいたのだろうか?

一瞥しただけでは、タイムワープ機本体の側にいた全員を把握できなかった。そして今、その答えはスーの死とともに消えてしまった

エンデュミオン星

1週間後

1週間後、エンデュミオン星

ふたりで遠くの物陰に隠れ、若き日のトウ·3T型が部屋に入るのを見ていた

ええ、あれで情報は十分です。全て説明してあります

スーが残した資料は、とても完成度の高いものでした。あの短い時間でこれほど多くのデータを持ち出したなんて……

トウなら、私たちが残した情報に基づいて「モズ」を以前とは違う場所に設立するはずです

はい

その間、なんでもできますよ。まだ40年もあるんですから

時々、トウの様子を見に来ましょう

全てがそうというわけでもありませんが……私たちは「モズ」のありとあらゆるデータを基に、さまざまな手段を講じて「終結年」を阻止しようとしています

……まだわかりません

「40年間」の任務を遂行するのは初めてなので……これが、どれほど現実に影響を与えるのかさえわかりません

これからは……

イシュマエルの後半の言葉は聞き取れなかった。目の前の光景が一瞬歪み、元に戻った

ピ――ピ――

小さな信号音が鳴った

イシュマエルはタイムワープ子機を取り出し、興奮したような表情を浮かべた

成功です!

タイムワープ機本体が復活しました。つまり、未来で「モズ」が再建されたということです

その言葉を聞くと、イシュマエルは眉をひそめ、少し困惑した表情を見せた

確かに……少し早すぎる気もしますね

本来、歴史はそう簡単に変わるものではありません

数年かけて歴史に影響を与え続けて初めて、未来のタイムワープ機本体から信号を受け取れると思っていました

イシュマエルはしばらく考え、自分の推測を述べた

もしかすると「モズ」の再建は、もともと高確率で起こることだったのかもしれません

事態は解決したように見えるが、心の中の疑念は晴れなかった。あまりに簡単に、ことが進んでいるように思える

「モズ」は「時間から独立した存在」なんです

現実変革をより詳細に観察するため、「モズ」は設立されたその日から、特定の時間に「固定」されています

時間が無数の点からなる線で、それぞれの点が前進していると仮定するなら

「モズ」は静止し、ある場所に留まる「ひとつの点」です

「モズ」は現実時間に依存して存在しながら、現実の背後に隠れています

タイムトラベラーたちは任務を終えるとすぐに「モズ」に戻ります。それによって、歴史改変の影響を最小限に抑えているのです

引き起こされた現実変革の規模によります

記録で読んだことがあります。現実に大きな変革をもたらしたタイムトラベラーが「モズ」に戻れなかったケースがありました

現実変革が彼自身に影響を及ぼし、彼は過去の記憶を失ったんです

現実変革以前、彼は地理学者であり「モズ」に加入していたのですが……

現実が変わった結果、彼は画家になりました

不思議であり、同時に危険でもあります

イシュマエルが手を差し出す

私の手を掴んでください。戻りましょう

手をしっかりと握り合う。タイムワープ子機を起動すると、青い光が再びふたりを包み込んだ

「モズ」研究所

「モズ」研究所

この眩暈にも、もう慣れたものだ。眩暈が治まると、目の前の風景が変わっていた

足下にはアームが取り囲む六角形の白いエリアがあり、数台の操作台が並んでいる。遠くではスタッフがデータを記録していた

何も変わっていないように見えるが、長い年月がすぎ去ったように感じられた

遠くから足音が近付いてくる

さっきの任務データだけど……あら?イシュマエル?

トウ·3T型は手元の資料を見ながら歩いていたが、話の途中で顔を上げ、こちらに気がついた

もう「グレイレイヴン」の案内は終わったの?

イシュマエルはトウ·3T型を見つめ、駆け足で歩み寄ると彼女を強く抱きしめた

今、戻りました

トウ·3T型は驚いた顔でイシュマエルを見つめたが、何かに気付いたようだった

あなたたち……どこに行ってきたの?

なるほど……過去の資料はあなたたちが残したものだったのね

懲戒者が「モズ」を襲撃したと知り、トウ·3T型は複雑な表情を浮かべた

「モズ」の防御を強化するために対策を練らないと

あなたが無事に戻ってきてくれて、本当によかった

彼女はイシュマエルを見つめ、安堵の表情を浮かべた

生きていてくれて、よかった

「グレイレイヴン」、イシュマエルのためにしてくれた全てに感謝するわ

その後、勇者コンビはひとつ、またひとつと任務を重ねていった

世界の終末を目撃した

また惑星がひとつ滅びた……

恒星の誕生も目撃した

今回の任務はうまくいきましたね

幾度となく死線をくぐった

「グレイレイヴン」、後ろ!

何度も何度も、歴史を変えるための挑戦を続けた

未来は……きっとよくなります

文明全体が「懲戒者」と「0号物質」との壮絶な戦いを繰り広げていた

その戦争は、宇宙全体を巻き込むほど壮大でありながら、雨に消える涙のように小さなものだった

しかし、変えられないものもあった

――研究所のタイムトラベラーの数が次第に減っていく

懲戒者は何らかの方法で、単独任務を遂行する多くのタイムトラベラーを死に追いやった

「モズ」は次第に閑散としていき、以前は賑やかだった休憩室も、今はもう誰もいない

時折その件に触れる人もいたが、すぐに沈黙に包まれる。誰もがこの状況の厳しさを理解していた

イシュマエルは、亡くなった仲間の名前を呟きながら物陰で泣いている人を見たとも言っていた

それでも、時は前に進み続ける

ある日、「モズ」が再び破壊された

いつもと変わらない日のはずだった。全ては普段通りだった――トウがスーとともに慌てて駆けつけるまでは

もうすぐ懲戒者が「モズ」を攻撃してくるわ!イシュマエルはどこ!?

その後は、トウの言った通りになった。10分後、懲戒者が侵蝕体を率いて「モズ」に攻め込んできた

現在の「モズ」の防御力では、懲戒者を阻止することはできなかった

イシュマエルを見つけた時、彼女は大量の侵蝕体に囲まれていた

あと少し遅かったら、イシュマエルの命も危なかっただろう

トウは負傷したイシュマエルを抱きしめながら「間に合ってよかった」と何度も呟いた

トウがこんなにも強い感情を露わにするのは珍しかった

トウとスーの助けを借りてイシュマエルと再び過去に戻り、「モズ」の座標を変更した

「モズ」が再建され、物事は秩序を取り戻した

タイムトラベラーにとって、時間はもはや意味を持たないように見えるが、「モズ」のスタッフはタイムトラベラーの主観的な時間の外で時間を記録する新たな基準を編み出した

6標準月後――

イシュマエルは休憩室で、ずっと探していた人を見つけた

「グレイレイヴン」はゆったりと椅子に座っていた。その傍らには、食べ終わった皿が置かれている

皿の上にはホログラムのスクリーンがあり、ニュースが流れていた

聞こえてくる音声から、それが過去のニュースであることがわかる

しかし「グレイレイヴン」の注意はニュースには向けられておらず、<M>彼</M><W>彼女</W>は真剣に何かを彫っていた

「グレイレイヴン」

私を避けてます?ずっと探してたんですよ

明日、お時間ありますか?

散歩にでも行きませんか?

あなたって、本当に……

イシュマエルは微笑みながら踵を返した

休憩室を出る前、彼女は振り返った。最近「グレイレイヴン」が何かを隠している気がしてならない

「グレイレイヴン」の姿は影の中に隠れている。考え事をしているようだ

スクリーンは依然として過去のニュースを再生している。その音声がひっそりとした部屋に響いていた

ニュース音声

スーパーAIコンピュータ「サイレント」が本日正式にお披露目されました。その発明者であるブレイク氏は会見で……

またしても侵蝕体に襲われた惑星が……

ニュース音声

ようこそ、フロントエンドインタビューへ。本日のゲストは……汎心論が再び注目されています……

人々は予想外の出来事を偶然と捉える傾向にありますが、歴史をマクロな視点で振り返ると、偶然など存在しないのです……

つまり、宿命論に賛成ということでしょうか?

いや、そういう意味では……

ピッ――

音声がミュートに切り替えられた

トウ·3T型は作業の手を一瞬止めたが、すぐに再開した。顔を上げることなく長々とした報告書に目を通し、旧式のキーボードで複雑なリズムを刻んでいた

これは昔、友人がくれたプレゼントなの

その友人は……イシュマエルの昔の「師匠」だった

イシュマエルを探しに行かないの?ここへは何をしに?

彼女は仕事を邪魔されたくないという雰囲気を醸し出しながら、早急に話を済ませたいように見えた

その様子を見て、本題を切り出すことにした

キーボードの音が止まり、彼女の背筋がすっと伸びた

トウ·3T型は特に驚く様子もなく、まるで自分の質問を予想していたかのようだった

その質問は、もう少し時間が経ってからされるものだと思ってたわ

いつから疑い始めたの?

つまり「モズ」に来た初日ね。あなた、鋭いのね

もう少し詳しく聞かせてくれる?

スーが残した資料は、とても完成度の高いものでした。あの短い時間でこれほど多くのデータを持ち出したなんて……

タイムワープ機本体にいた時、トウから聞いたんだ

本体に向かう途中で、スーに連絡したのよ

確かに……少し早すぎる気もしますね

本来、歴史はそう簡単に変わるものではありません

数年かけて歴史に影響を与え続けて初めて、未来のタイムワープ機本体から信号を受け取れると思っていました

イシュマエルはしばらく考え、自分の推測を述べた

もしかすると「モズ」の再建は、もともと高確率で起こることだったのかもしれません

……なるほど

もう「グレイレイヴン」の案内は終わったの?

もうすぐ懲戒者が「モズ」を攻撃してくるわ!イシュマエルはどこ!?

トウ·3T型は言葉を失った

……そうね

その答えも推測してあるんでしょ?聞かせてくれる?

やっぱり気付いてたのね

タイムワープ機本体は「サイレント」によるサポートで動いているわ。時間というものは、本当に不思議でね

トウ·3T型は肯定も否定もしなかった

保険として、もしタイムワープ機本体が破壊されたら「サイレント」が過去に情報を送るようにプログラムしてあるの

ただ「サイレント」が過去に遡って情報を送れる時間がどんどん短くなってるわ

初めのうちは1日前まで送れたけど、最近では10分前くらいが限界ね

つまり、懲戒者の動きがますます速くなっているということよ

真相を知って、それでもまだ「モズ」にいたいと思う?

トウも、こちらの出方をある程度予想していたようだ

……イシュマエルのため?

そこまでわかってるなんて……

彼女は椅子の背にゆっくりともたれた。発される声はとても弱々しかった

…………

彼女は、いつも生き延びられないの

タイムワープ機本体が破壊される度に、彼女はさまざまな出来事に巻き込まれて命を落としてきた

理由はわからないけど……彼女の師匠と関係してるのかもしれないわね

私には彼女を救えない……これは出口のないループよ

「歴史をマクロな視点で振り返ると、偶然など存在しないのです……」

この部屋に入った時に聞いたニュース番組が蘇ってきた。大きな虚無感が全身を襲う

私は「宿命」なんて信じないわ

私は何度も挑戦してきた

ええ。あれは数少ない成功例だった

イシュマエルが「終結年」へ向かった任務もひとつの挑戦だった

彼女はあなたに出会い、任務を途中で切り上げた

本来なら、彼女が「終結年」へ向かった時に「モズ」は襲撃され、彼女は「終結年」に閉じ込められて戻れなくなるはずだった

これは、廊下にいた時に「サイレント」から送られてきた情報よ

初めて「モズ」に来た時、イシュマエルとの会話の際に感じた、世界全体が歪んで元に戻る現象を思い出した

その後、「モズ」が再建された時にも同じ感覚を味わった。それが現実変革という感覚なのかもしれない

トウはレポートの山を指差した

以前の2回のデータを調査した結果、あなたこそがイシュマエルの生存理由であると結論づけたの

あなたの経歴を調べたわ。結果を知りたい?

情報は何も出なかったわ。まるでこの世界に突然現れたかのように

あなたの正体はわからないけど、あなたにはいわゆる「宿命」を打ち破る力があるんじゃないかしら

あなたも気付いてると思うけど、懲戒者は最近行動パターンを変えた。単独行動のタイムトラベラーを狙い撃ちにしてるわ

このままではいずれ「モズ」の再建も失敗する日が来る

その前に、私はもう一度挑戦したいの

私はタイムワープの方法を改良し続けてる

イシュマエルが「モズ」に頼らず、タイムワープができるようにしたいの

イシュマエル専用の小型タイムワープ機本体を構築していると理解してくれていいわ

この装置がどこにあるかは、誰も知らない

イシュマエルを「モズ」から切り離せば、彼女が自由を手に入れられる可能性が生まれるのよ

身勝手かもしれないけど……

お願いがあるの……