Story Reader / Affection / イシュマエル·幻日·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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イシュマエル·幻日·その6

前方の道も、隣の人の声も奪ってしまうほどの激しい吹雪の中――

青い光が瞬き、白い世界にふたりの影が現れた

うっ……ここは……

吹雪に言葉を遮られながら、彼女は反射的に隣を見た。長い月日の間に、その存在がいつも彼女の側にいることに慣れていた

一面が白い世界に覆われ、何も見えない。彼女はこの世界に自分だけが取り残されたように感じた

突然、胸に不安が突き上げてくる。ワープにトラブルがあったのかもしれない

「グレイレイヴン」?

聞き覚えのある声を耳にして、イシュマエルの緊張が解けた。彼女の心の動きに呼応するように、周囲の吹雪も穏やかになったように感じた

――いいや、気のせいじゃない

吹雪は確かに穏やかになっている

赤い何かが指先を掠めた。イシュマエルは少しずつ開けていく視界の中で、その緋色が雪に混じりながら静かに広がっていくのを見た

「0号物質濃度の上昇を検知しました」

タイムワープ子機が警報を発した

パキッ――

まるで鏡が割れるように、周囲の空間に亀裂が走った

「グレイレイヴン」、手を出して!

記憶の中のあの日の光景が、再びイシュマエルの目の前に蘇る

悲鳴、爆発音……血しぶきが壁に飛び散り、仲間の瞳から生気が失われていく

すぐに戻らないと!

イシュマエルの顔には、はっきりと焦りの色が浮かんでいた

だが、この時――人間は冷静さを取り戻した

身勝手かもしれないけど……

イシュマエルを……助けてくれる?

緋色がどんどんと広がり続けている。懲戒者の存在に比べれば、ここにあるもの全ては無に等しい

人間は決意を固めた

まさか、食い止めるつもりですか?

ふたりの中で、過去のさまざまな光景が走馬灯のように駆け巡った

なら、私が残ります。あなたが戻ってください

彼女は微かに震える手を伸ばし、「グレイレイヴン」の指先を掴んだ

その激しい声にイシュマエルは身を竦ませた。「グレイレイヴン」のこんな厳しい声色を聞いたのは初めてだった

しかし、その声は不思議なほどに優しい響きを含んでいた

「グレイレイヴン」が手に何かを押し込んできたが、イシュマエルにそれを確かめる余裕はなかった

……これは、別れの言葉ですか?

別れの言葉もなく流れ去った時間を……仲間を、私はたくさん見てきました

あなたまでそんな風にいなくなるなんて……耐えられません

……

また会えますか?

……待っています

空間の亀裂がどんどん広がっていく。懲戒者が両手を差し込み、裂け目を広げているのが微かに見えた

雪原に僅かな青い光が走る

懲戒者が雪原に足を踏み入れた時、その視界に入ったのはひとりの人間と、タイムワープ子機から発せられる赤い光だけだった

これで、この空間の痕跡は混沌とし、懲戒者が「雪原の足跡」を見つけることはできないだろう

大きな爆発とともに、空間が砕け始めた

破片はガラスとなり、そして本のページへと姿を変えた

本のページから緋色の光点が舞い上がり、空中を漂いながら、通りすぎた軌跡が細い糸となる

緋色の糸を手繰り寄せると、意識の欠片が寄せ集められた

「モズ」研究所

「モズ」研究所

イシュマエルは手のひらを見つめていた。そこには木製の20面サイコロが静かに乗っている

もう、ここを吹雪が襲うことはない