Story Reader / Affection / ノクティス·撃砕·その6 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ノクティス·撃砕·その3

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昨晩の雨はすごかったな

えっ、そんな遅くまで働いてたの?

まだ日も沈まぬ内に、見慣れた顔がいそいそとカウンターへとやってきた

お決まりの天気の話から、会話はすぐに本題へと移る

で、シークスの件はどうなった?

その後だよ。店の外で待ち伏せされなかったか?

バーカ、そんなことしてみろよ、「流浪焼き」の原材料がなんなのか、身をもって知ることになるぜ

ノクティスが小窓から、粉とタネで汚れた顔を覗かせた

お前、その顔……

黙ってろ、こんな火を通しにくい料理は初めてだぜ

ちょっと顔を拭いてる間に、すぐコゲ炭になりやがる

右、右、髪のとこ……

ん……こうか?

おう、スッキリした。サンキュー、指揮官

もうちょっと頑張るぜ。後でお前らに試食してもらうからな

小窓が閉まると、厨房から、パチパチと油の弾ける音が聞こえてきた

人を何だと思ってんだ……[player name]、マーズ·エクスプロージョンを1杯もらえるか

バァン!

突然、ラタトゥイユの扉が力強く開かれた

お前、やめろよ!シークスの一味が来たのかと思っただろ

扉が変なんだよ、押してもなかなか開かなくてな。[player name]、蝶番に油をさした方がいいぜ

ビールがいいな

ねぇ!前は空中庭園のやつらを毛嫌いしてたのに、今は毎晩来てるじゃない!

こいつぁグレイレイヴン指揮官だ。議会のやつらとは違う。来ちゃ悪ぃかよ!?

離れた席で会話する常連客たちの声が、燃え盛る炉に降り注ぐ水滴のように、店内を活気づける

なんだ?また誰かがケンカでも売りに来たか?

ノクティスが小窓からにゅっと頭を出した

おう、相変わらず盛り上がってんな、指揮官

ノクティス!

あんだ?

このテーブルに、何かサプライズしてくれない?

サプライズ……って何だよ?指揮官

あぁ……なら前に作った土豆餅はどうだ?

え?してねえよ。ずっと忙しかったし。ちょうどいい毒見じゃ……

じぎがん、やめ……!ぐるじい……!

タオルでノクティスの顔を力いっぱい擦り、発言を全て拭い去った

へいへい、わかったよ

ノクティスは逃げるように厨房へと引っ込み、小窓を閉じた

一連のやりとりに、店内の高揚はクライマックスへと向かい、その一幕を祝うかのように、客たちは歓声を上げてグラスを掲げた

同じ話題でひとしきり笑うと、客はそれぞれ自由な会話に戻っていった

時に手を叩き、時に大笑いするこの瞬間、平和な日常が最高の調味料となる

そんな光景を見守りながら、思わずエプロンのラタトゥイユのロゴと、[player name]の名前に手を当てた……

バァン!

またかよ!その扉、どうなってんだよ!?

悪いな、人数が多いもんでな。邪魔するぜ

冷水のようなその言葉が、あっという間にラタトゥイユの熱気を奪っていく

シークスは、昨晩よりも多くの仲間を連れてきたようだ

それはそうだが、俺がここで食事することに問題でも?

流浪焼きとビール

素直にカウンターを離れ、厨房のノクティスのもとへ向かった

どした?指揮官。店がえらく静かになってるけど?

ノクティスは油に浮かぶ流浪焼きに神経を注いでおり、小窓から頭を出す暇がなかったようだ

はぁ?何だと?1週間後の約束だろ?

よし!

完成だ、時間もピッタリ。どうだ、指揮官。今回の仕上がり、悪くねえだろ?

確かに、油からすくい上げて簡単に盛りつけると、それなりに様になっている

いや、俺が行く。お前は俺の後ろにいろ

ホールに戻ったあと……

ほらよ

ずいぶん早いな?

誰かさんのお陰で、ひと晩中忙しくてね

シークスは流浪焼きを少しつまんだ

少しも焦がしてないのか?

すげえ慎重にやったからな。悪いが文句のつけようがねえぜ

香りもいい。材料は何を使った?

当然、保全エリアから仕入れてる。おっと、それ以上は企業秘密だぜ

シークスがまじまじと流浪焼きを眺める様子を見て、ほっと胸をなで下ろした

ノクティスが作った流浪焼きは美味しそうな香りを漂わせ、涎を垂らすとまではいかずとも、十分に食欲をそそるレベルに達していた

ところが……

だが、俺が食べたいのはこれじゃない

こんなもの、客を騙すゴミだ

シークスは流浪焼きを皿に戻すと、無造作に代金をテーブルに投げた

マスター、精算だ

こンの野郎!

シークスは詰め寄るノクティスにも動じないばかりか、ノクティスに向かおうとする仲間を制した

グレイレイヴン指揮官、お前の構造体だろうが。しっかり管理しろ。清浄地で構造体が理由もなく怒鳴っていい規則なんてないよな?

サッとノクティスに近付いて耳打ちをした

チッ……

制止されたノクティスを見て、シークスは少し乱れた服を整えた

そして大きく手を振って合図し、仲間を引き連れてラタトゥイユを出ていった

……

あいつは人に飯も食わせねえつもりか?

深夜、一日中姿を見せなかったマスターが、ラタトゥイユに戻ってきた

その表情は、眼の前の帳簿を見つめて、眉間にシワを寄せたままだ

昨日よりはずっとマシだ……だが肝心の店の雰囲気がな

何度も騒ぎを起こされたら、客が逃げちまう

心配しなくていい。あいつらがしょっちゅう顔を出せないように、一日中走り回ったんだ

見てな。シークスのやつ、数日は店に来れねえ

それより……こんな時間までノクティスのやつ、厨房か?

あいつも災難だな、まさかシークスに目をつけられるなんて……

オッサン!

あぁん!?

オッサンが持ってきた魚、使っていいのか!?

使いたいなら使え。材料のことは気にせずやれ!

……

マジか!指揮官!今日の晩メシ、マグロだぜ!

流浪焼きに使うんじゃねえのかよ……前言撤回だ!

ノクティス

もう油に入れちまった。たまんねえ匂いだぜ、おい!

この【規制音】!!!

チッ、心配しても意味ねえな。一番気にかけてくれるやつが目の前にいるってのに、見向きもしねえとは……

あーあ、俺は先に帰るぞ。あんまり根詰めるなよ。また明日な

戸締まりを忘れるな。それと……魚は残さず食えよ。やっとの思いで手に入れたミナミマグロが……チッ……大損だ……

悲痛な声は次第に遠ざかり、夜の闇へと消えていった

ほどなくして、ノクティスがやってきた。そして、自慢げに魚を乗せた皿をテーブルに置いた

なんだよ?指揮官。少し冷ましてあるから、もう食べごろだぜ

おいおい、どういう風の吹き回しだ?マスターみてえに、お節介になっちまって

あいつが満足する流浪焼きを作るだけだろ。俺はそれなりに楽しいぜ

毎日定番メニューばっか作るのも退屈だったしな

それをいうなら指揮官こそ、無理してねえか?

毎日カウンターに立って、ニコニコ皆の相手しなきゃなんねえし……

大変だろ……交代するか?俺もカウンターに立ってみたかったんだよ

あん?

ノクティスは戸惑った表情を見せたが、こちらの要求に応じて、無理やり笑顔を作った

なんとなく……ホホジロザメと目が合ったような感覚がこみ上げた

あん?それはそれで面白いんじゃねえか?

てかよ、指揮官、アンタなんか今日変だぜ?

ノクティスはグラスをひったくると、中身を口に含んだ。飲んでいたのは、この間調整したドリンクの改良版だ

この味……指揮官、これ、何を入れたんだ

α40エキス?それってアルコールに似た……よし、明日その天才的アイデアをくれたやつに詳しく話を訊こうじゃねえか

指揮官、早く俺の土豆餅食えよ

あ、ほとんどしてねえ、2日ほど流浪焼きでバタバタしてたし

だから味は、この前のとたいして……

しまっ……

大丈夫か指揮官、吐いたら楽になったか?

俺ならここに……おい、待て、その椅子で何する気だ?指揮官

ストップストップ!カウンターがあるぞ!指揮官、キャラを思い出せよ!?

一体誰が指揮官にα40エキスなんて教えたんだよ

ちょ、おいおい、指揮官、マジか!?

鍵、鍵……

深夜にもかかわらず、疲れ知らずのラタトゥイユでは、楽しいドタバタ劇が繰り広げられた

しばらく経ってからあの夜のことを訊こうとしたが、ノクティスはわざとらしく誤魔化してしまった

彼が言わないのなら、きっとそうたいしたことはなかったのだろう。素直にそう思うことにした

そうやって、今日も平和な一日が終わろうとしていた

別にィ……