Story Reader / Affection / 含英·檀心·その3 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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含英·檀心·その5

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深夜、山々に霧が立ち込めている

解熱剤の効果は素晴らしく、雅琳の熱はすぐに下がった

その時、ドアを軽くノックする音がした

含英はゆっくりと立ち上がり、部屋のドアを開ける

ひとりの機械体が丁寧に挨拶をしてきた

オ邪魔シマス

キャンプの援助が必要でしょうか?

そう言った含英の手はすでにドアの脇にかけられたマントを握っていた

2軒ノ小屋ガ洪水被害ヲ受ケマシタ。修復ノタメ、場所変更ノ必要ガアリマス

今ノトコロハアリマセン。物資ノ方ハ不明デスガ

安堵のため息とともに、含英の手は緩んだ

ボッチョーニが小包を差し出した。ここに来るまでの間、できるだけ濡れないように守っていたようだ

雅琳サンノ具合ハイカガデスカ?オフタリガ彼女ヲ抱イテ慌テテイタノデ

雅琳サンガコウナッタノハ、私ニモ責任ノ一端ガアリマス……

私ノ怠慢ガ、趣味仲間ヲ傷ツケテシマイマシタ

プログラムハコレヲ仕事上ノミスデハナイト結論ヅケマシタ。ソウダトシテモ私ハ、自分ニモ責任ガアルト思イマス

ボッチョーニはテーブルの上に薬の入った箱をいくつか置いた。いかにも九龍らしい、桑でできた薬包も一緒に置かれている

私ニモ、雅琳サンノ看病ヲサセテクダサイ

細カイ作業ヲスルタメニ、新シイ換装用ノ手ヲ作リマシタ……以前、医療用ノ機械体ヲ作ッタコトガアリマス

ボッチョーニは両腕を広げ、今にも経歴書を見せそうな必死さだった

ここに来ている人の中には、私が招待した人もいます

指揮官、キャンプまで一緒に見に行っていただけますか?

[player name]!含英さん!

大柱が使えなくなった物資を運び出すよう機械体に命じながら、こちらに手を振っていた

ボッチョーニのやつ、あんたらに会えたんだな!

あんなに自責の念に駆られる機械体を見たのは初めてだ。いい経験になったぜ

手伝えることはありますか?

含英と、大柱が見ているキャンプの方を向いた

なんてことだ、夢の中でショートしてしまうかと思った

通りすがりの機械体の独り言が聞こえた

ややゆがんだ板張りの部屋から、ふたりの男が機械体を運び出している

別の場所では、2体の機械体が子供に毛布をかけてあげようとあたふたしていた

垣の杭を補強している者がいる

火を焚き、食料やお湯を配る者もいる

大雨に見舞われたこの夜、大地から新芽が芽吹き、強靭な根を張っていた

それぞれ、やるべきことがあるんだ

ちょっとくらい俺たちに任せてくれてもいいんじゃないか?

あ、そうそう、ここから埠頭まで歩いていけば日の出が見られるそうだ

大柱は大声でそう言ってへへっと笑うと、こちらの肩を叩いてきた

気がつけば、もう夜明けだった

空は雲を押し分け、束の間の自由を知らせている

含英は黙って頷いた

ふたりは踏み固められたばかりの道を、元来た埠頭に向かって歩いた

雨で洗われた小道からは、土の中で成長する草の新鮮な香りがした

季節の変わり目を知らせている

道中ずっとふたりとも黙っていた。空は花が開くように、次第に白く明るくなっていく

そう遠くないところに、小さな信号所の屋根に登って修理をしているふたりの影が見えた

遠くに見える灯台の灯は消えている。だがもう少しすれば再び輝きを取り戻して、道行く人の目印になるはずだ

ふと、含英が自分の腕をとった

そのままふたりで堤防に沿って進んだ。空には早々と海鳥が旋回している

人の身にとって朝の風は骨の髄まで凍りそうに冷たかった。温もりを求めるかのように、無意識の内に含英に近付いていた

それで、自分自身の冷静さを保っていた

「家」……

含英は聞き慣れた言葉をつぶやいた

帰りを待っている人がいる場所こそが、「家」と呼ぶのにふさわしいですね

彼女はかつて自分自身に問いかけた質問を繰り返し、地平線を見た

決して小さくない一度の嵐が、ここにいる全ての人に影響を与えました

見守り合い、帰りを待ち続けていた頃の「家」と、再建され生まれ変わった「家」は、まるで違って見える

杞憂だとは思いますが……

きっとここは発展していきます。そして「家族」も徐々に増えていくのでしょう

ただ、その未来はより予測不可能なものになるはずです……家族が他人になることだってある

機械体であれ人間であれ、家を探す旅は険しいものなのね

始めはただ……もう少し簡単に作るつもりだったけれど

彼らの本当の「家」を作るには、どうしたらいいのでしょう?

始まり……

九龍の人たちがよく言っていた「自分のルーツを見つける」ことに似ていますね

含英が来るまで、この山林は廃墟と化した九龍の山荘があるだけだった

数千年以上前、人々はここで畑を耕し、家を建て、子供を育てた

自然災害、戦争、そして離別にも苦しんだことだろう

数千年後、子孫がその土地に戻ってきた。修理して再建して、先祖と同じ選択をする

ここは、出発点に戻ったのだ

太陽は留まることなく地平線を越えていく

始まりがなければ、何も生まれない

家は結果ではなく、始まり

迷える人々に家を与える必要はなく……

私は彼らを心の「故郷」へと導くべきだった、そうなのね

ようやく朝日が姿を見せた

次第に暖かさを感じたが、ふたりはますます距離を詰めて寄り添った