Story Reader / Affection / 21号·XXI·その3 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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21号·XXI·その5

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それからまた1カ月が経った

21号は定期的に戦闘シミュレーションへ参加して、自分は彼女の遠隔リンク指揮官を務め、戦闘中に彼女の意識海を安定させるのに協力していた

繰り返した調整により、21号との連携がますますうまく取れるようになり、21号が意識海の偏移によって暴走する頻度も少なくなりつつあった

徐々にリンクせずとも、21号が危険レベル高の任務を遂行するのも可能になってきた

いよいよ、戦闘シミュレーションの最終日を迎えた

戦闘シミュレーションは順調に進み、21号はよく頑張ってくれていて申し分ない状態だ

戦闘シミュレーション用の遠隔コネクトシステムから出ると、21号がハッチの前で待っているのが見えた

……意識海は安定しており、直近20回の戦闘シミュレーションでは、偏移問題は発生していません

これで、戦場復帰の再却下はほぼないでしょう

研究員は驚くほど長い任務報告をめくりながら、満足そうにうなずいている

私もやっと、残業から解放されそうだ……

では、私が戦闘シミュレーションの報告書を提出しておきますから、あなたたちは先に行ってくださって結構ですよ

終わった?

21号、これから任務を執行できそう?

うん

今は、何をすればいい?

わかった、[player name]は?

21号と別れて、まっすぐナイトホーク小隊の基地へ向かった

21号はもう通常の任務戦闘を行える。早く解決しなくてはいけない問題が、まだひとつ残っていた

ケルベロスの基地の外廊下で、ある構造体の兵士が基地に入ろうとした21号を止めた

あのう……21号さん、こんにちは

私はあの日の……ナイトホーク小隊の隊員で、あなたがルノーの認識票を持って帰ってくれた時の者です

……認識票

[player name]

「人それぞれ感情を表す方法が違うだけだよ」

「今度……また会った時にでも、事情を話して彼に謝ろう」

「21号なりの方法でいいから」

ごめん

私はあなたに……え?

21号、謝るべき

あの時、笑うべきじゃなかった、あの時笑うのは、間違い

構造体は21号から先に謝られるとは思っていなかったようで、しばらく呆然としていたが、すぐに反応してぶんぶんと首を振った

いいえ……謝るべきは俺なんです。あなたが持ってきた認識票は、俺にとって大切なものでした

でもその時は……悲しすぎて、あなたに失礼なことを言ってしまって、本当に申し訳ありませんでした

構造体は申し訳なさそうな顔で深くお辞儀をして、また顔を上げてうかがうように21号の表情を見た

21号はぱちぱちとまばたきをしていて、何が起こったのかまだわからないようだった

……あなたは俺をからかうつもりなんかじゃなかった、今はわかっています

グレイレイヴン指揮官が教えてくれた……あの時、あなたの表情管理モジュールにトラブルが起きていたと。俺を慰めようとしてくれたんでしょう?

表情をコントロールできないなんて、大変でしょう。日常の戦闘には影響しませんが、構造体の整備部門に対応してもらったほうが……

表情管理モジュール……?

21号は首をかしげていて、この言葉の意味を理解していないようだ

一方、構造体は21号の疑惑に気づかず、緊張した仕草で後ろの戦術リュックから何かを取り出した

つまらないものですが……受け取ってくれますか

構造体は手の中の丸くて白いぬいぐるみを21号に渡してきた

俺……あなたの好みがわからなくて、悩んだんですが……こういうのが好きかなって、広場のギフトショップで買ってきたんです

これ、見た目が似てませんか?あなたの……あれ、スレーブユニットですよね?

21号は体を強張らせながら目の前の渡されたぬいぐるみを見つめると、警戒しながら一歩足を下がらせた

これ……何?

えっと……ひとつの、プレゼントです。感謝の気持ちの……

チェック完了……脅威なし

私、今、何をすべき?

え?あ……?

うーん、受け取ってくれたら、嬉しいです

……

21号は黙って手を伸ばすと、そのぬいぐるみをもらった

ぬいぐるみのサイズは21号にとっては少し大きく、それを受け取った21号の頭はぬいぐるみに半分以上隠れてしまい、まばたきする目しか見えていない

あの日の非礼を許してください……

それから、本当にありがとう……

認識票だけでも……彼が生きて、戦った大切な証しなんです

あなたは彼の認識票を持って帰って、彼の名前を荒野に……埋もれないようにしてくれました

俺たちに……彼のことを忘れないですむようにしてくれました

もう一回お礼を言ってから、構造体は別れを告げると離れていった

21号はじっとぬいぐるみを見つめて、そしてぐっと顔を寄せて匂いを嗅いでから、「あむっ」とひと口噛んでみた

むぐむぐ……

相変わらず無表情だが、彼女はとても機嫌がいいようだった

ずっと宙ぶらりんになっていた心がようやく落ち着いた。ほっとして、身を翻して離れようとした時だった

21号

なぜ柱の後ろに隠れていたの?

[player name]の匂いを嗅いだ、なぜここにいるの?

違う、ずっとここにいた。21号、間違えたりしない

21号は落ち着いた口ぶりで言った

曲がり角に隠れて状況をうかがっていたが、ばっちりバレていたわけだ。少し気まずく感じていると、21号はそれを気にもとめていないようだ

彼女はただぬいぐるみを自慢したいというように、目の前に持ち上げて見せてくれた

うん、これ、[player name]に似てる

うん、ちびっこにも似てる

21号はぬいぐるみの後ろから頭を出した

これを見ると、心があったかい。[player name]を見る時の感覚と、同じ

だから、似てる

この感覚が、「幸せ」、なの?

いつも通り無表情のままで、21号がぬいぐるみを強く抱きしめている様子を見ると、彼女がこのプレゼントをとても気に入っているのがよくわかる

前回と同じように、21号に今の心に芽生えている感情の呼び名を教えてあげた

喜び……

21号はこの言い慣れないが聞き覚えのある言葉を反芻すると、手を上げてぬいぐるみをこちらの胸にぎゅっと押しつけてきた

あげる

私にはちびっこがいるから

でも、あなたにはいない

そして、あなたにも「お礼」を言いたかった

21号、知ってる。[player name]のお陰で、このぬいぐるみをもらった

もしかして彼女が知り合いでない者からの善意を受けたのは、これが初めてなのかもしれない

彼女はこの「喜び」を、自分にシェアしたいのだろうか?

うん……

じゃあ[player name]は、どんな「お礼」なら、欲しい?

隊長!

話の途中だったが、突然21号が仔犬のように自分の後方に猛ダッシュしていった

どうやらその様子じゃ、問題解決のようね

ヴィラが胸で手を組んで歩いてくる。彼女の後ろには癪に障る笑顔を浮かべたノクティスがいた

ハハハハハッ、変なの持ってるな?ったくお子ちゃまだぜ、お前よりも大きいんじゃねぇのか……

ヴィラはそれを聞くやいなや刀の柄を回してノクティスの肋骨を強くど突き、いつものようにニヤリと笑って見せた

さすがグレイレイヴン指揮官、私を失望させなかったようね

さ、感動の時間はおしまいよ、21号、任務よ

こんな長い休暇を与えたんだから、しっかりと働いてもらわないとね

21号、スタンバイ

けっ、最近の任務にお前がいなかったから、ずーっと俺ひとりが怒られてたんだぜ

まったくつまらん

でも、今までも、怒られるのノクティスだけ

ああん!?

もうちょっとランクアップしてあげてもいいわよ。殴られるのもひとりだけ、とか?

ヴィラとノクティスの掛け合いが続く中、21号はそのふたりの間に立って、なんともリラックスした表情を見せていた

それは彼女自身さえ気づいていない、普通の女の子と同じような笑顔だった

戦闘中の意識海が不安定という問題を解決し、構造体兵士の誤解を解いて、21号は自分の居場所に戻れたのだ

これで……21号との短い連携期間も終了だ。これからヴィラが、彼女の面倒をしっかりと見てくれる

やっと落ち着いて、離れようとした

……

21号は振り向き、遠ざかるその姿に、なんだか妙な感覚が湧くのを感じていた

落ち込むような、寂しい感じ――彼女は一瞬、追いかけたい衝動にかられた

……まだ話したいこと、ある