Story Reader / Affection / 21号·XXI·その3 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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21号·XXI·その6

作戦に必要な装備……準備完了

グレイレイヴン指揮官休憩室の位置……確認

意識海でこの前学んだことを1回練習する

最後に、笑顔を忘れないこと

笑顔を、忘れないこと

鏡に向かって、笑顔を作ってみた

……

やはり醜悪だが、もうそこまで怖くはない

この程度なら、もう誰かを怒らせないはず

これで、準備完了といえるだろう

色々な意味で、今日は平凡な一日のはずだった

地上作戦の任務も、出席するべき会議もなく、午前中はずっと訓練室で過ごしていた

昼に世界政府芸術協会に行き、少し前にアイラに頼んで探してもらった資料を取りに行ってきた。その後、21号の様子を見に行くつもりだった

しかし、これからの展開が完全に自分の予想から外れるとは、思ってもみなかった

――たとえば今の自分だ。指揮官休憩室のドアの前に立ち、中の光景を一瞥して唖然とした

これまでにすでに見慣れた部屋が、ここまでの衝撃をもたらすとは――

先ほど指揮官の休憩室を通りかかって、ドアが開いたままだったので、気づいてしまいました……

……普段、お忙しいと思いますが、やはりあのう……部屋の清潔には注意を払うべきではないかと……

少なくとも荷物を整理した方がいいと思います。あんな風に地面に置きっぱなしはよくないです

それと……あの……

なぜかリーフは何かを言いたそうにして、やがて言葉を飲み込んだ

不吉な予感が心の中で広がっていき、急いで部屋の前へとたどり着いた。そして――

ドアが広く開いたままになっており、目に映ったのはとんでもない光景だった

たくさんの古いおもちゃ、勲章、ガラスボトル、そしてナット箱、機械パーツ、多種多様、雑多な物がそこら中の地面に散らばっている

地面はまさに足の踏み場もない。ひとりの白髪の構造体がこれらの物の真ん中に座っており、少し歪んだ補機を箱に詰め込もうとしている最中だった

あ、[player name]

ドアが開いたままだったから、入ってきたけど、誰もいなかった。だから21号、ここで待ってた

「お礼」

[player name]への

助けてくれたから、お礼すべき。まだお礼していない

お礼されて、またお礼を言うの?

……うん

21号は立ち上がるとこちらに背を向け、その肩は上下して、深呼吸をしているようだった。その後、彼女はくるりとこちらに身を翻した

[player name]、ありがとう

私の表情、怖い?

うん、練習がやっぱり役に立った

21号は再び頭を下げ、袖に覆われた手を上げて顔をこすった

じゃあ今は?

そう……じゃあ、まだ練習が必要

じゃあ……次

21号は体を少し動かすと、小さな獣のように地面にうつ伏せになり、上目遣いでこちらを見つめると、両手を前にして拳を作ってみせた

21号

……ニャニャ?

部屋のドアはいぜん開けっ放しになっており、後方から誰かの話し声が聞こえてきた

その瞬間、外のざわめきが更に大きくなった

21号、「感情」勉強用の装置が壊れたから

21号、どうやって「感謝」するのか、他の人に聞いてみた

これが「感謝を表す時の常識」

間違ってる?

21号は頭を下げると、いつも素っ気ない灰色の瞳は、少し混乱しているようだった

……21号、わからない

人は悲しみや喜び、共感など、自分の意志で物事を決める。心のない機械はそうはいかない。彼女は決して空っぽの機械ではない。そう、これらの感情は元来彼女のものだったはず

ずっと手で持っていた新しい視聴端末を、そっと21号の手に置いた

あの白い狼……21号、あの子が家に戻ったのを見た

……知ってる、あれは本当じゃない。きっとずっと彷徨っている

そう……

あなた、やっぱり隊長と似てて、ちょっと違う

[player name]の匂い、特別

21号は実験室で、こんな匂い、一度も嗅いだことない

……暖かくて、21号、とても好き

21号も、「人間の匂い」が欲しい

前から、指揮官の匂いが、素敵だと思う

自分の心の思いを、たどたどしい言葉で伝えている21号が、一歩ずつ自分に近づいてきていた

何よりも純粋な野獣のようだ。彼らは遠くから敵に歯を剥くこともあれば、信頼できる仲間に寄り添って小さくゴロゴロと喉を鳴らすこともある

[player name]に会うと、いつもちょっと違う気がする

でも21号、この感覚、嫌いじゃない

21号はそれから、話すのをやめた。黙ったまま、灰色の瞳でずっと見つめてくる

21号、ずっと見たい

これも、間違い……?

21号は少し頭を傾け、自分の言葉に間違いがあるのかと疑問に思ったようだ

その瞬間、少女の顔があまりにも愛しくて、無意識に彼女の頭をなでていた

手の平から柔らかい触感が伝わる。21号は頭を上げて、こちらが戻そうとした手にこすりつけると、更に柔らかい顔を掌に押しつけてきた

時間の経過に従い、窓の外の人工太陽光が徐々に角度を変えていく

投射してくる暖色の斑な光は、ガラスを通って中へと移動し、21号とふたり、暖かい光に包み込まれていた

その時、今日の太陽の光が、あの日と同じように暖かいことに気づいた

彼女とすれ違った人間は、彼女の手を握りしめた