それは反則だ!ファウルだ!
……まぁ、そんなの気にするなよ、戦場では誰もそんなことを気にしないって
訓練ルームに入ると、以前会ったふたりの指揮官がホログラフスクリーンの前で言い合いをしていた
壁にはまだ「バンジ休憩室」と貼られているがバンジはいない。先日の学校以来、会っていなかった。バンジの不在に安心していいのか、残念なのかがわからない
ホッとしながら訓練キャビンに掛けられた装備を取ろうとした時、背後から声が聞こえた
あ、グレイレイヴン指揮官
うん、基礎訓練をちょっとね
相手になろうか?
ちょっとちょっと、さっき訓練を頼んだら断ったのに。扱いが違いすぎるでしょ!
すぐそこにいた指揮官が恨みがましい声をあげた
そうだっけ……まあ、単にグレイレイヴン指揮官からのプレゼントのお返しとしてね
この前は一緒に寝てくれてありがとう、いい気分だったよ
?
?
君のプレゼントは、とても使いやすかった……
え?
本当のことを言っただけなのに。僕の睡眠ポッドは君の贈り物でぎゅうぎゅうだよ
???
油断していた……グレイレイヴン指揮官はやはり噂どおり罪深き人……
……あ、もしかして他の人にも渡すつもりだった?うぐっ……
あわててバンジの口を塞ぎ、他の指揮官たちの意味ありげな視線を痛いほど感じながら、作り笑いを浮かべつつバンジを部屋から引きずり出した
変って……?どこが変な話なんだ?
何も思っていなさそうなバンジの表情に、逆に自分が大げさすぎたのかと不安に思い始めた
今なら話していいの?
うん、あぁ、君の贈り物は、僕あてだよね
ふわぁ……じゃあ、一緒に訓練する?
前回話さなかったことも、今回は全部話すよ
今日は、全力で相手する
バンジが話しながら銃床を持ち上げると、鋭い音が響いた。その力の入れ具合から、彼が真剣なのがわかる。こんなに急に真剣になられると、少しひるんでしまう
君が望んだんだろ?真剣に相手にされたいって……
僕は「求められれば必ず応じる願望機」だよ
……子ども扱いっていうか……僕は子どものこと、好きだしさ
準備ができたら、始めよう
僕がマジになることはめったにないから
バンジの目に珍しく鋭い光が宿り、やがてそれはかつて見たことのない閃光のような輝きになった